桜日和
修行中故名無し
桜日和
雪が降っている。
昨日までの春とは違い、とても寒い春だ。
桜の名所として有名なこの公園だが、人の気配がない。
私は、座れそうなベンチをみつけ、ゆっくり腰掛けた。
毎年、この公園で桜を見てきたが、初めての風景だ。
いつもなら、青いキャンバスに映える桜を楽しみながら、春の陽気とビールに酔うことができた。
そして、隣にはあの人がいたはずだ。
あの人の家からほど近いこの公園には、沢山の思い出が詰まっている。
出会いも、ケンカも、クリスマスもここだ。
別れも。
昨日ここで私は振られた。
皮肉なことに、昨日の私もここに座っていた。
話があると呼び出され、別れる、と一言のみを告げられた。
そこから連絡が取れない。
あの人の家に行こうか悩んでいるが、別れを告げたときの冷淡な表情が頭から離れず、思い切りがつかない。
なにより、理由を知るのが、怖い。
なんで。
別れの原因がわからない。
あの人のためにできることは何でもしてきた。
あの人も、いつも私を喜ばせようとしてくれた。
なにがダメだったんだろう。
雪の結晶のように、私は真実を掴めない。
降る雪も、先程より強くなっている。
無気力のまま、身を震わせる。
そっと目を閉じると、去年の春の光景が浮かんでくる。
舞い落ちる桜を髪に絡ませて、陽気に話す、あの人。
来年も来ような。
そして抱きしめる。
春の暖かさを感じている、私。
目を開けると、桃色が白色に支配されている現実しか見えない。
何も見えず、掴めない私は、もう一度目を閉じる。
今度は、暗闇しか見えない。
暗闇の中、私はふと立ち上がる。
もういいかな。
私は暗闇を突き進み、目を開けることは、もう無かった。
桜日和 修行中故名無し @uukk9612
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