第41話 第十一章 娘の種(?)明かし(3/4)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、手に入れれば生き延びられるという宝を探すことになる。火山、川、平地、横穴を経て、洞窟で見つけた宝は弓音ゆみねの姿だった。すると、鷹大の意識は何かに吸い取られてしまう。脳細胞の奥の奥で目覚めると、鷹大の娘と称する小学生がいた。鷹大は死んでおらず、生死の境目におり、娘は未来から助けに来た言う。そして、パイとナイの正体は鷹大の精子であり、どちらかは死んだと告げたのだった】




 想像してみる。

 扁平した卵形に、蛇のような尻尾が生えた生き物を、である。

 大きなその生き物が何匹もいて、その1匹1匹に、パイやナイたちが、それぞれ馬乗りになって、ニョロニョロと、火山や川や平地や洞窟を動き回る。


 ニョロニョロと不安定なのに、パイは見てる俺に手を振って、転げ落ちたりして!


 クククッ!

「なんか、笑える! ……って、


 おい! ちょと待てよ!

 パイかナイのどっちかって、言ってたよな!

 なら、もう片方は、どうなったんだよ!」


 不安が大きな波に乗って、鷹大に押し寄せてきた!


「片方は、……死んだのじゃ……」

 娘は目を伏せる。


 唖然! 信じられない鷹大!

「パイとナイのどっちかは、死んじゃったの?」


「……そうなのじゃ、し、死んでしまったのじゃ、父様……」


 ヅガンッ! ヅガンッ! ヅガンッ! ヅガンッ! ヅガンッ! ヅガンッ!

 ヅガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!


 頭を何回もぶん殴られた!

 いや、それ以上の衝撃!

 隠せないほどの衝撃が鷹大を襲う!


 2人の思い出が脳裏にどんどんと湧いて出る。


 表情、仕草、かわいい声、Hなビキニ姿、そして、仲間……。


「ずっと、ずっと3人一緒だったのに!

 そのパイ、ナイのどっちかがいない! 死んだ! 死んだなんて!」



 鷹大の感情が裏返る!



「……うえっ、うえっ……」

 情けない声を上げて泣いた。


 ついさっきまで一緒だったんだ!


 弓音の時、俺の背中を押してくれたんだ。小さな手形だって感じたんだ。


 それに、胸だって触っている!

 胸の柔らかさ! ナイの薄い層、パイの底無し沼だって、知っているんだ!


 そうだ! 体温もこの手に感じたんだ!

 柔らかさと暖かさが鷹大の身を包んでいく。


 そして、


 トクン トクン  トクッ トクッ


「心臓の鼓動だって、2人から教えてもらったんだ!

 今も、この手に憶えている!


 なのに…………、なのに、もう、その心臓は動いて…………ない!」


 胸の感触なんて、すっ飛んでいた! 手には、生きていた証しの鼓動しか残っていない。

 元気だった2人の鼓動が、けたたましい音の塊となって、鷹大の魂を揺さぶってくる!


「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああんんんん!!!」


 声が、心が、あふれて止まらない!



 泣いた、泣いた、そして、泣いた。





 ………… ………… ………… …………


 鷹大のうめき声が、少し柔らかくなった頃。


 娘が優しく声をかける。

「父様、……。でも、ワシはどちらかなのじゃ。パイかナイのどちらかを受け継いでおるのじゃ! 生きておるのじゃ!」

 娘はすまなそうな、困ったような顔をしてる。



「う、う、……。君がパイかナイなんだね」


「そ、そうじゃ、1人はワ、ワシの一部なのじゃ。こうして生まれておるのじゃ。は、半分は喜ぶのじゃ」


 ズズズッ! フキフキ

 鼻をすすり、涙を手でぬぐう。


「そ、そうだね。無事五体満足に生まれているもんね。嬉しいよ」

 1人でも生きているんだ。感謝しよう。


「そうなのじゃ。か、片方はワシなのじゃ。生まれればいつでも会えるのじゃぞ!」


 娘はパイかナイかのどっちかと言っていた。

 でも、どっちだ?


 パイなのか? ナイなのか?

「どっちか気になるよ! どっちか教えてくれないの?」


 娘は困った顔。

「み、み、未来のことなのじゃ。未来のことは秘密なのじゃ。本来は未来を教えてはならんのじゃ。それで、どちらなのか秘密にするために、ワシはどちらとも違う、年寄りのしゃべり方なのじゃ」


 そんな理由があったのか。だから顔の形も、いじっていたのか……。


 鷹大は納得した。

「すると、生まれてくる俺の子供は女の子で、パイかナイの口調を受け継いでいるんだね」


「そうなのじゃ。そこまでは教えても良いと、神様がおおせなのじゃ。それにワシの姿が小学生と言うのも、大きくなると容易にどちらか推測できるためなのじゃ」


「容易に推測?」

「胸じゃ!」


 娘はまだペッタンコな胸を張る!


「そうか! 胸の大きさで、パイかナイか分かるってことか!」

「じゃから、胸が大きくなっておらん子供の体をしたワシの姿を神様が選んだのじゃ」


 よくよく考えた上で、娘の情報を隠してるようだ。鷹大は娘が言う内容に信憑性を感じてきた。


「と言うことは、俺は本トに地獄に落ちていないの?」

「死んでおらんのじゃ! 父様は未来を体験したのじゃ! さっき遺伝子の話しをしたじゃろう。ワシができるまでの未来を父様が体験したのじゃ」


「君って、俺の娘だよね」

「そうじゃ」

 娘は、また胸を張る。


「パイとナイは俺の遺伝子で、その半分? 精、……あっ、言っちゃいけなかったか。遺伝子の半分、ハーフ遺伝子ってところかな。そうすると、……えーと、……その……何で火山なの?」


 世界観の概要が分かってきたが、疑問点が盛りだくさんである。


「なんとなく、分かったようじゃな」

「分かったよ! 君の母親が弓音と言うなら、俺が走っていた所は弓音のお腹の中ってことだろう」


 火山の裾野、川、平地、横穴、洞窟の中を鷹大は走った! 川と横穴は歩いたが……、でも、その全部は、弓音の体内(胎内?)ってことだ。


「そして、パイとナイが言っていた宝って、子宝ってことなの?」


「半分じゃが、ワシの素じゃから子宝と言ってもよいのじゃ」

 嬉しそうに胸を張る。


 白騎士から出てきた弓音は、彼女の卵子を擬人化した姿だったようだ。それで、娘が弓音からもらった体と言っていたのだ。


 そう分かったところで、鷹大は、とてつもないことに気が付いた!

 将来の伴侶を知ってしまったのである。


 さっきは夢があると思ったのだが、逆に知ってしまうことで、夢が無くなってしまったのではないのか? と、思えてきたのだ。

 将来の自由を奪われた気分となり、閉塞的な息苦しさを感じてくる。


「俺は弓音から逃れられないのか。未来が分かるって、けっこう怖いんだな」

 鷹大は弓音が好きなのであるが、結婚と言うには心構えが追着いていなかった。

 高校1年生なのだ、仕方がないことである。


 娘は余裕な笑み。

「観念するのじゃな! まあ、それに未来は1つではないのじゃ。絶対ではないと、神様は仰せじゃ。もし母様が違っていたら、ワシは悲しいのじゃ。……いや、存在自体がなくなるから、悲しむことすらできんのじゃ……」

 拾ってもらえない、みすぼらしい子犬の顔に変わった。


「そうか、絶対じゃないのか」

 娘には悪いが、鷹大は少し楽になった。


「じゃが、1番可能性が高い未来じゃぞ!」

 嬉しそうな鷹大を見た娘は釘を刺した。


「そうかも知れないな。弓音の方から告白してきたし、弓音は俺のことをよく考えてくれているし、……でもちょっと嫉妬深いかな」

 なぜか、鷹大は娘から目をらしてしまう。


「いい母様なのじゃ! 父様も浮気なんてしておらんのじゃ! いい夫婦なのじゃ! 心配は無用なのじゃ!」

 娘は全身に力を込めて精一杯の気持ちを表す。


「分かった、分かった」

 これ以上は息が詰まりそうだったので、弓音と結婚する話は終わりにした。



 鷹大は体験した地獄を簡単にまとめてみた。

「俺が地獄と思っていた所は、実は弓音のお腹の中で、俺は自分のハーフ遺伝子(精子)たちと一緒に子供ができるまでを、神様が造った擬人化された世界で体験をしたのか」


「そういうことなのじゃ。けど、『ハーフ遺伝子』って、名前が長いから、『ハーフちゃん』と呼ぶのじゃ」


 外国人とのハーフと同じになると、鷹大が指摘したが、『ハーフちゃんって呼び名がかわいいのじゃ、もう決めたのじゃ』と娘に押し切られた。


「にしても、俺のハーフちゃんと言っても、どの顔も俺に似てなかったような?」

 鷹大本人とも自身の両親とも似てなかったように思える。


「それはバレんようにするためじゃ。父様の記憶や、古い写真から分からんように、5代以上も前のご先祖様が、人型ひとがたのモデルになっておったのじゃ」


 1代前が父母、2代前が祖父母、3代前が曾祖父母、4代前が曾々祖父母、そして、5代前が曾々々祖父母である。

 なるほど、写真なんて見たことがないし、写真の存在すら怪しい。


 娘によると、5代以上前のご先祖様の中でも、ハーフちゃんと1番濃い遺伝子の特徴を持ったご先祖様が、モデルになっており、年齢も鷹大が親しめるように同年齢に、神様が設定したらしい。


 そして、分かりにくくするために、ワザと日本人らしくない名前を付けたようだ。


 ナイが同郷の人がいると言っていた理由を聞くと、鷹大の中で生まれたという意味らしい。

 鷹大はすぐに分かった。


「同郷って、左右あるから、同じ玉で生まれたって……」

「Hな単語は禁止なのじゃ!」

 娘は声を張り上げて、両腕で大きな×マーク! 鷹大の声を吹き飛ばした。


 『玉』は睾丸こうがんよりもHな単語じゃないと鷹大が反論したが、反論する姿勢も含めて拒絶された。娘には、生々しかったようだった。


 また、地獄に来る前の記憶があるように感じていたことを聞くと、モデル本人の記憶と、故郷(玉)にいた時の記憶が混ざったらしいと、神様は言っていたようだ。


 その神様によれば、パイとナイは10代以上前のご先祖様らしい。昔は結婚が早いから、1代を20歳で見積もっても、200年以上も昔である。


 鷹大は和服姿のパイとナイを思い浮かべようとしたが無理だった。ビキニしか見てないのだから仕方がない。


 なぜ、全員水着だったのかも聞いた。


 鷹大は神様の趣味と思った。

「違うのじゃ! 先ずは、川を泳ぐからなのじゃ。じゃが、肉体を常に意識させて、せいを強調する効果を狙ったのじゃ」

 せいと肉体は、近しい関係にあるようだ。鷹大もそんな気がした。


 鷹大の質問は、行程を順にたどることになった。


 最初の場所は火山である。






【次回の公開は、ラストや■あとがき■まで一挙公開の予定です。一気に『後日談』まで読んでいただきたいのです。また、月曜日は休日ですが、朝7時7分の公開を予定しています。これまでの公開よりも、ずっとボリュームが大きいためです。なので、読む時間・心構えなど、ご注意願います】





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