第38話 第十章 宝 (4/4)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、手に入れれば生き延びられると言う宝を探すことなる。火山、川、平地、横穴を経て、洞窟にやってきて、ジュビとマラカと知り合う。宝は直径5メートルくらいもある球体の入れ物に入っており、ここの人たちは、頭に数本生えた青紐を引き、爆破により宝を出そうとしていた。しかし、ジュビは青紐がなくなり、死んでしまう。見ていた鷹大はパイとナイを腕と胴体に挟んで引き止めていたが、『生きたい』と言う2人の言葉に力が緩み行かせてしまう。入れ物から白騎士が出てきたが、入れ物は二重なので、白騎士も入れ物である。今度は赤紐を引いての爆破が始まる。鷹大は白騎士の手首を押さえて協力し、白騎士の甲冑かっちゅうや鉄仮面にヒビが入っていく。数本ある赤紐が無くなれば、ここの人は死んでしまうので、鷹大はパイとナイとマラカを白騎士に近づけないように考えてた。そこに、見覚えのある赤ビキニを見つけたのだった】




 そんな中、鷹大は赤色のビキニを見つけた。遠巻きになっている人たちの中だ。

 足を引きずりながら体勢を低くして、白騎士へタックルするタイミングを狙っていた。


「マラカだ! 鮮やかな赤いビキニに、引き締まった筋肉! マラカに間違いない! 足を痛めたのか!」

 コツをつかめば、速くなるハズの足を引きずっている。鷹大の胸は痛んだ。


 その上、目と口以外は顔も頭も真っ黒だった。

 撫でてやった金髪も黒くススけており、ツルンとした石鹸水のような手触りは、もう存在しない。

 寂しく思ったが、そんなことよりも、何よりも、鷹大はマラカに死んで欲しくなかった。


「赤紐は? マラカの赤紐は、あと何本だ?」


 低い体勢のマラカに目をらす。

 青は頭に何本かあるが、赤はもう1本しか見てとれない!


「やべっ!」

 マラカを遠くへ蹴り飛ばそうと、鷹大は白騎士の手首をつかみながら、回り込んで足を繰り出す! 


 同時にマラカが白騎士にタックル!

 鷹大の足はくうを斬った!


 マラカが、甲冑の背中に頭をつける!


「やめろ! 紐を引くな!」

 鷹大の声もむなしく、マラカは赤紐を引く!


 バァンッ!


 見ている前で爆発、爆風を食らった!

 だからって、鷹大は目を閉じない!


 吹き飛ばされるマラカ!


 ゴロゴロ


 地面を転がり、ススで真っ黒になった顔が、鷹大に向いて止まった。

 ススから逃れている口が、やけに鮮明に見えている。


 口には、満足そうな笑み?


 と、その瞬間! マラカは水となった。


「マラカーーーーーーッ!」


 鮮やかな赤いビキニを残して、マラカの体は消えて水となり、白ピンク色の地面に染みていく。


 体が消えた直後、ほんのコンマ何秒か、マラカのビキニは輪っかの形を保った。


 あたかも消えたあるじの体が入っているかのように、ビキニは輪となり地面にあった。

 ビキニの内面には、隠されていた肉体形状を写し取った凹凸おうとつが残っていた。


 でもそれは、コンマ何秒!

 鮮やかな赤いビキニは、ペタンとつぶれてしまった。


 内面に見えたのは、Hな凹凸面のはずなのに、鷹大はハズ目なんて、できるはずもない。

 マラカの死が心に食らいついた。


「あーーーー、マラカ! ……。

 俺を見つけて、会いに来てくれたマラカ……、

 俺は『生きたいんだ』と教えてくれたマラカ……、

 いい筋肉を持っていたのに……、

 鍛えたら、いい陸上選手になれたのに……、

 う、う、うえっ、

 ……マラカ……

 一緒に、走りたかったよーーっ! ……うああぁぁぁぁ……」


 情けない泣き声とともに、目から涙があふれ出す。


 マラカは、もういない、もういないんだ!

 鷹大は悲しくて、悔しくて、たまらなかった。



 マラカもジュビも、水のように消えてしまった。

「なんてこと、なんてこと、なんてことだよーーーーっ!


 パイ! ナイ! ……」

 もう2人しかいない!


 探そうとするが、涙で見えない! 見つけられない! 鷹大の両手は白騎士の手首を封じたままだ。涙を拭けないでいた。


 バン! バン! ババンッ! バァンッ!


 爆発音は続くし、パイとナイを探せない。

「パイーーーーッ! ナイーーーーッ! どこだようぉ!」

 声を上げるしかできなかった。


「鷹大! ここだ!」

「パイの声だ!」

「こっちですわ! 鷹大!」

「ナイの声だ!」


 生きてる!


 2人は生きている。

 しかも近い! すぐ近くだ!


 見えないけど、見えなくたっていい!


「よかったーーーーーーっ! 2人とも、無事だったんだね! でも、よく見えないんだ」

 やっぱ、2人を見たかった。


「鷹大は泣き虫だなぁ」

 パイの声だ。


 着てるTシャツの裾が、引っ張られる感覚?

 パイは鷹大のすぐ前にいて、白騎士を押さえている両腕の内側にいるようだ。


 うりうり

 顔をかれる。


 鷹大は顔を下に向け、背の低いパイが拭き易いようにした。

「よし、終わったぞ」


 見えた! 目の前!

 背伸びを終えた黒い顔、巨乳のピンクビキニ!


 パイだ!


「少しは、きれいになりましたわね」

 貧乳青ビキニ!


 ナイだ!


 右腕のすぐ外側にいた。


 2人ともマラカのように、顔も頭も真っ黒だ。

 痛々しくてたまらないが、声は元気だった。


 パイは白騎士の甲冑に手をやる。

「もうすぐだ! 宝はここだぞ! 鷹大!」


 甲冑と鉄仮面の金属面には、亀裂が何本も走っている。白かった白騎士も、爆破を食らい続け、多くが黒くススけていた。


「そうですわ!」

 ナイが鷹大の右腕をくぐって、両腕の内側に入って来ると、鷹大の前に黒い顔をチョンと出した。

「鷹大が1番になるのですわ!」


「何を言ってるんだよ! 君たちが1番になるんだよ! 俺にそんな資格なんかない! 2人とも1番になって生きたいんだろう。2人の生きたいは、もう俺の生きたいなんだ!」


 パイもナイも、黒くて表情は不明だが、安心した雰囲気。

「大丈夫だ! オリたちは後から続くぞ! 仲間全員で1番になるのだ!」

「3人で1番ですわ! さあ、行きますわよ!」


 頃合いを見計みはからったように、2人が顔を見合わせると、

 パイは、白騎士の腕によじ登り、頭を鉄仮面につけた!

 ナイは、頭を甲冑の胴につけた!


「やめて! 紐はあるの? 何本、残っているの?」

 近くにいるのに、鷹大の声は、もう届いていない。


 2人ともススで頭が黒過ぎる。

 赤紐がよく見えない。


「せーの「さん」」

 さんって、本数? でも2人同時?

 それに、小さく『せーの』?


「「にー」」


 本数じゃない! 秒読みだ!


「「いち!」」


 紐に気を取られて、蹴るタイミングもいっしてしまった!


 バァァァァァァァーーーーーーンッッッッ! ×2


 同時爆破! 今までにない大音響!

 至近! 最強の爆風!


 鷹大はよろけて、不覚ふかくにも目をつぶってしまった。

 2人が心配!


「パイ! ナイ! どこ?」

 一瞬にして、目を開ける!













弓音ゆみね!」





 薄まっていく黒煙の中、割れた白い鉄仮面の奥にのぞき見えた顔は、鷹大が初デートした相手、弓音だった。

 眠っているのか、夢を見ているのか、目をつぶって、微笑んでいる。


 パリンッ! パリンッ! バラ バラバラ……


 鉄仮面と甲冑が、同時に砕け落ちていく!

 鎧腕よろいうでも粉々となり、鷹大は生身の細い手首をつかんでいた。


 甲冑が無い、弓音の体!

 何も着てないじゃないか! (全裸である)


 その瞬間!


 ポンッ! ×2

 鷹大の背中が、2箇所同時に押された。


「ホレ!」

「さあ!」

 押したのは、パイとナイの小さな手であった。


「えっ?」


 押されて前に出た鷹大は、反射的に崩れ落ちようとする弓音の肉体を抱きとめる。


 柔らかい体!

 目の前に顔! 眠ったままの優しい笑みが、メッチャまぶしい!


「ここに来て、弓音? なんで君が、ここに??」

 ハズ目なんて忘れて、弓音の体温に戸惑う鷹大。


「宝って……」

 と言いかけると、鷹大の意識は何かに吸い取られていった。


 その背中には、小さな手形の温もりが2つ、パイとナイの余韻となって貼り付いていた……。









【次回は、『第十一章 娘の種(?)明かし』です。

 残酷シーンはありません。お楽しみに】





【申し訳ありません。身内に不幸がありまして、次回の公開予定が決まっておりません。弓音の登場と言う、すごいところで終わっているので、心苦しいです。突然の再開となるかも知れませんが、ご了承願います。(この回は予約公開です)】

【上記は公開当時のお知らせです。現在はラストまで公開しております。ご安心ください。連載っぽい雰囲気を感じるので、上記のお知らせを残しておりますが、良くないなどのご意見がございましたら、コメントください】





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る