第38話 第十章 宝 (4/4)
【地獄(?)に落ちた
そんな中、鷹大は赤色のビキニを見つけた。遠巻きになっている人たちの中だ。
足を引きずりながら体勢を低くして、白騎士へタックルするタイミングを狙っていた。
「マラカだ! 鮮やかな赤いビキニに、引き締まった筋肉! マラカに間違いない! 足を痛めたのか!」
コツをつかめば、速くなるハズの足を引きずっている。鷹大の胸は痛んだ。
その上、目と口以外は顔も頭も真っ黒だった。
撫でてやった金髪も黒くススけており、ツルンとした石鹸水のような手触りは、もう存在しない。
寂しく思ったが、そんなことよりも、何よりも、鷹大はマラカに死んで欲しくなかった。
「赤紐は? マラカの赤紐は、あと何本だ?」
低い体勢のマラカに目を
青は頭に何本かあるが、赤はもう1本しか見てとれない!
「やべっ!」
マラカを遠くへ蹴り飛ばそうと、鷹大は白騎士の手首をつかみながら、回り込んで足を繰り出す!
同時にマラカが白騎士にタックル!
鷹大の足は
マラカが、甲冑の背中に頭をつける!
「やめろ! 紐を引くな!」
鷹大の声も
バァンッ!
見ている前で爆発、爆風を食らった!
だからって、鷹大は目を閉じない!
吹き飛ばされるマラカ!
ゴロゴロ
地面を転がり、ススで真っ黒になった顔が、鷹大に向いて止まった。
ススから逃れている口が、やけに鮮明に見えている。
口には、満足そうな笑み?
と、その瞬間! マラカは水となった。
「マラカーーーーーーッ!」
鮮やかな赤いビキニを残して、マラカの体は消えて水となり、白ピンク色の地面に染みていく。
体が消えた直後、ほんのコンマ何秒か、マラカのビキニは輪っかの形を保った。
あたかも消えた
ビキニの内面には、隠されていた肉体形状を写し取った
でもそれは、コンマ何秒!
鮮やかな赤いビキニは、ペタンとつぶれてしまった。
内面に見えたのは、Hな凹凸面のはずなのに、鷹大はハズ目なんて、できるはずもない。
マラカの死が心に食らいついた。
「あーーーー、マラカ! ……。
俺を見つけて、会いに来てくれたマラカ……、
俺は『生きたいんだ』と教えてくれたマラカ……、
いい筋肉を持っていたのに……、
鍛えたら、いい陸上選手になれたのに……、
う、う、うえっ、
……マラカ……
一緒に、走りたかったよーーっ! ……うああぁぁぁぁ……」
情けない泣き声とともに、目から涙が
マラカは、もういない、もういないんだ!
鷹大は悲しくて、悔しくて、たまらなかった。
マラカもジュビも、水のように消えてしまった。
「なんてこと、なんてこと、なんてことだよーーーーっ!
パイ! ナイ! ……」
もう2人しかいない!
探そうとするが、涙で見えない! 見つけられない! 鷹大の両手は白騎士の手首を封じたままだ。涙を拭けないでいた。
バン! バン! ババンッ! バァンッ!
爆発音は続くし、パイとナイを探せない。
「パイーーーーッ! ナイーーーーッ! どこだようぉ!」
声を上げるしかできなかった。
「鷹大! ここだ!」
「パイの声だ!」
「こっちですわ! 鷹大!」
「ナイの声だ!」
生きてる!
2人は生きている。
しかも近い! すぐ近くだ!
見えないけど、見えなくたっていい!
「よかったーーーーーーっ! 2人とも、無事だったんだね! でも、よく見えないんだ」
やっぱ、2人を見たかった。
「鷹大は泣き虫だなぁ」
パイの声だ。
着てるTシャツの裾が、引っ張られる感覚?
パイは鷹大のすぐ前にいて、白騎士を押さえている両腕の内側にいるようだ。
うりうり
顔を
鷹大は顔を下に向け、背の低いパイが拭き易いようにした。
「よし、終わったぞ」
見えた! 目の前!
背伸びを終えた黒い顔、巨乳のピンクビキニ!
パイだ!
「少しは、きれいになりましたわね」
貧乳青ビキニ!
ナイだ!
右腕のすぐ外側にいた。
2人ともマラカのように、顔も頭も真っ黒だ。
痛々しくてたまらないが、声は元気だった。
パイは白騎士の甲冑に手をやる。
「もうすぐだ! 宝はここだぞ! 鷹大!」
甲冑と鉄仮面の金属面には、亀裂が何本も走っている。白かった白騎士も、爆破を食らい続け、多くが黒くススけていた。
「そうですわ!」
ナイが鷹大の右腕をくぐって、両腕の内側に入って来ると、鷹大の前に黒い顔をチョンと出した。
「鷹大が1番になるのですわ!」
「何を言ってるんだよ! 君たちが1番になるんだよ! 俺にそんな資格なんかない! 2人とも1番になって生きたいんだろう。2人の生きたいは、もう俺の生きたいなんだ!」
パイもナイも、黒くて表情は不明だが、安心した雰囲気。
「大丈夫だ! オリたちは後から続くぞ! 仲間全員で1番になるのだ!」
「3人で1番ですわ! さあ、行きますわよ!」
頃合いを
パイは、白騎士の腕によじ登り、頭を鉄仮面につけた!
ナイは、頭を甲冑の胴につけた!
「やめて! 紐はあるの? 何本、残っているの?」
近くにいるのに、鷹大の声は、もう届いていない。
2人ともススで頭が黒過ぎる。
赤紐がよく見えない。
「せーの「さん」」
さんって、本数? でも2人同時?
それに、小さく『せーの』?
「「にー」」
本数じゃない! 秒読みだ!
「「いち!」」
紐に気を取られて、蹴るタイミングも
バァァァァァァァーーーーーーンッッッッ! ×2
同時爆破! 今までにない大音響!
至近! 最強の爆風!
鷹大はよろけて、
2人が心配!
「パイ! ナイ! どこ?」
一瞬にして、目を開ける!
「
薄まっていく黒煙の中、割れた白い鉄仮面の奥に
眠っているのか、夢を見ているのか、目をつぶって、微笑んでいる。
パリンッ! パリンッ! バラ バラバラ……
鉄仮面と甲冑が、同時に砕け落ちていく!
甲冑が無い、弓音の体!
何も着てないじゃないか! (全裸である)
その瞬間!
ポンッ! ×2
鷹大の背中が、2箇所同時に押された。
「ホレ!」
「さあ!」
押したのは、パイとナイの小さな手であった。
「えっ?」
押されて前に出た鷹大は、反射的に崩れ落ちようとする弓音の肉体を抱きとめる。
柔らかい体!
目の前に顔! 眠ったままの優しい笑みが、メッチャ
「ここに来て、弓音? なんで君が、ここに??」
ハズ目なんて忘れて、弓音の体温に戸惑う鷹大。
「宝って……」
と言いかけると、鷹大の意識は何かに吸い取られていった。
その背中には、小さな手形の温もりが2つ、パイとナイの余韻となって貼り付いていた……。
【次回は、『第十一章 娘の種(?)明かし』です。
残酷シーンはありません。お楽しみに】
【申し訳ありません。身内に不幸がありまして、次回の公開予定が決まっておりません。弓音の登場と言う、すごいところで終わっているので、心苦しいです。突然の再開となるかも知れませんが、ご了承願います。(この回は予約公開です)】
【上記は公開当時のお知らせです。現在はラストまで公開しております。ご安心ください。連載っぽい雰囲気を感じるので、上記のお知らせを残しておりますが、良くないなどのご意見がございましたら、コメントください】
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