第28話 第八章 大ミミズ(3/4)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、宝を探すことになる。宝の匂いをたどって、火山、川を経て、平地の果てにあった岩壁に来た。匂いは、粘液で輝く大ミミズが詰まった岩壁のへこみに開いた横穴からするので、大ミミズをかき分けて中に入りたい。でも、パイとナイは、鷹大のいやらしい目であるハズ目に、後ろから見られたくないので、先に鷹大を横穴に入れようとしていた】



 横穴へ入るため、大ミミズに近づくと、鷹大が気付いた。

「あれ? ちょっと変だよ! この大ミミズ。ミミズじゃないかも!」


「何だ! 早く入れ!」

 パイはく。


「ちょっと、待って! 近くで見ると、この大ミミズって、壁から生えてんだよ! スゲー変だよ!」


 横穴の外に転がっていた3匹の大ミミズの内、1匹の胴体をたどっていくと、横穴の内壁から生えていたのだ。その内壁もミミズと同じ薄いピンク色をしていて、生えていても違和感がない。


 しかし、パイには取るに足らないことである。

「大ミミズが壁に生えていようが、いまいが、どうでもいいのだ! そんな小さいことより、早く入るのだ、鷹大!」

 ポンと背中を押す。


 考えてみると、大ミミズというだけでも、かなり特異である。壁から生えているなんて、パイが言うように小さいことかも知れなかった。

「わ、分ったよ」


 鷹大は大ミミズをかき分けようと、両手を横穴へ伸ばした。すると、大ミミズが勝手につぶれて、ポッカリと横穴が開いた。


 大ミミズが、きし麺のように平たくなって横穴の内側面ないそくめんにへばりつき、鷹大が歩ける大きさの空間を作ったのだ。


 ブーメラン男とも、パイとナイとも異なる大ミミズの反応に、鷹大も不思議な顔。

「歓迎されてるのかな?」


「いいことですわ! さあ、入るのですわ! 鷹大!」

 ナイにも促された。


 鷹大は横穴の中へ入る。


 きし麺になっているのは入口だけ、奥にいる大ミミズは丸いままで、ニョロニョロとうごめいている。


「穴の内壁面から大ミミズが生えて見えたけど、床と天井には生えてないや。それに入口よりも奥の方が、心持ち穴の幅が広くなっているみたいだよ」

 鷹大は中の様子を2人に伝えようと思った。


 だが、パイには不要だった。

「感想なんぞ、いちいちいらないのだ! さっさと、奥へ進め! 鷹大!」

「うん、分かった」


 鷹大が前へ進むと、奥にいる大ミミズが次々に平たくなって道を作った。

 体の回りに空気のバリアがあって、大ミミズを押し潰しているようにも見えるが、大ミミズが鷹大の接近に気付くと、自分から潰れているようだった。


 それに、横穴の中は暗くない。

 進むにつれて、大ミミズが平たくなる様子が普通に見える。大ミミズが特に光っている訳でもない。

 不思議ではあるが、目の感度が極度に上がったかのようだった。


「それなら、後ろはどうなっているのかな?」

 見えるのなら、2人の様子も気になる。

 鷹大は歩きながら振り返った。


「鷹大だけズルイですわ! 楽に入りましたのに! 私はあの女と同じですわ!」

 ナイが1メートルよりも少し遠いくらいにいた。いたのであるが、大ミミズは元の太さに戻っている。ストライプの子と同じようだ。


 グチョッ ジュボボ グヂュヂュ……


 その大ミミズがナイの体に絡みついて、ヌルヌルと動いているのだ。

 鷹大には、パラダイスのような光景だった。


 不謹慎にも有害図書を思い出してしまう。


「危ない漫画状態だよ!」

 またまた、声に出てしまった。どうやら触手が好みのようだ。


 ナイにはその意味が分からない。

「危ないことは、なさそうですわ! でも、幅がきついですわ! 鷹大だけ大ミミズが平たくつぶれてズルイですわ!」


 大ミミズたちは意思を持って、ナイの体を触りたがっているように見えた。なので、ナイは懸命に足を前に出さないと進めない。


 粘液でテカテカしたスレンダーでセクシーな太腿を、左右交互に大ミミズから抜き出すようにして歩いてくる。


 それに大ミミズが脇の下を通る時、ナイの顔がいつもよりもかわいく見えた。


 ナイの艶姿あですがたを見逃すなんてもったいない。

 転んでもいい、鷹大は後ろ向きで歩くことにした。


「ナイ! 先に行くな! ズルイぞ!」

 パイの声がした。

 こもったような声。すぐ後ろにいて、大ミミズに囲まれているらしい。


「早い者勝ちですわ!」

「これからは、オリが先だ!」


 パイの顔がナイの隣に見えた。

 片目をつぶり、狭い横穴に耐えるような、気持ちいい感覚に耐えるような表情だ。


 2人並んでHな顔つき、鷹大にはゴージャスでたまらない。

 でも、2人は必死。


「パ、パイ! 苦しいですわ! き、きついですわ! 後ろへ下がるのですわ!」

「オリだって前に出たい!」


 しばらくせめぎ合った末、ニュルっとパイの体が前に出た。


 ナイの体は見えなくなってしまう。

「抜きましたわね! パイ! 悔しいですわ!」

 今度はナイの声がこもって聞こえる。大ミミズの間に没したようだ。


「やった! オリが前だ!」


 ジュプ ビュチュチュ~ シュプン プルルッ プルンッ プルプルンッ!


 ナイのように、足にからむ大ミミズを引き抜きながら、パイも健気に歩いてくる。


 巨乳にもヌルヌルと大ミミズが絡みついて、歩行とは異なるリズムで揺さぶって、鷹大の助平心も揺さぶる。


 腹や太腿にも絡みついて、大ミミズがうねるたびにパイの顔が甘く乱れる。どうやら、ナイよりも感度が高そうだ。


「あう! 鷹大! オリは変な気持ちになりそうだ! あーん、オリは女に目覚めそうだ! 少しは女らしくなれるかな? ううーん」

 初めての感覚に流されそうなのに、懸命にこらえる悩ましいパイの顔である。


 鷹大には、同感を通り過ぎている。

「女らしいってもんじゃないよ! 色っぽいよ!」

「ああん、た、鷹大にはオリが見えるのか? は~ん、穴が暗いから、オリには、よく見えん……ぞ! うはーん」

 見え方が違うようだ。


「そうなの? 俺にはパイが普通に見えるよ」

 粘液でテカテカの肉体が、手に取るようだ。


「はうん、鷹大は夜目がくのだな。はあん」

「そうなのかな? そんなこと思ったこともないよ」


 ジュジュッ! プフーッ!

 粘液音に混じって、空気が漏れるような音がした。


「ハズ目だぞ! 鷹大がハズ目になってるぞ!」

 いきなり、パイが声を荒げた!


「あれ? 見えないって、言っていたけど、分かるの?」

「外に出て明るくなったのだ!」

 鷹大は後退りをめ、辺りに目を向けた。


 横穴の外に出ていた。

 パイに見とれて気付かなかった。


 狭い横穴を抜け出てたのだが、そこも洞窟だった。穴のサイズが急に大きくなった感じだ。


 穴の断面形状は縦長からカマボコの形に変わっており、その大きさは、乗用車ならすれ違えるくらいの幅があるけど、大型バスは通れない高さである。


 洞窟の高さと言っても、実は天井そのものは見えない。

 狭い横穴と同じ種類のような大ミミズが、天井から隙間がないくらいに、垂れ下がっているのである。でも、ピクリとも動かないので、ぎっしりと並んだ鍾乳石のように見えた。


 その大ミミズの先端が、曲面的にそろっているので、擬似的な天井に見えて、カマボコ型と表現できたのだった。


 壁にも大ミミズが生えているのだが、天井と同じくらいにぎっしりなので、折り重なっていた。


 ただ、ここの大ミミズの表面は、テカテカしておらず、粘液感はない。

 色や形、大きさから同じ種類に見えたが、違う種類かも知れなかった。


 地面はほぼ平らで、大ミミズは生えていない。でも、同じ白ピンク色で柔らかいので、肉っぽく感じた。

 巨大な動物に飲み込まれて、腹の中にいるみたいだ。


 これまでは岩と湿った砂のイメージだったが、岩らしさは欠片もなく、有機的な世界となっていた。


 ただ、洞窟なのに明るい。横穴に入る前と同じくらいに明るかった。空が見えないし、明かりもないので、鷹大には不思議な感覚だった。

 パイもハズ目に気付いたし、明るくなったと言ったので、鷹大と同じくらいに見えているらしかった。


 一通り洞窟を見渡したので、鷹大の視線がパイへと戻る。


 パイには、ヌルヌルな粘液だらけの大ミミズが、まだ何匹も絡みついている。

 手に、脚に、胴体に絡んで全身をしばり、横穴の出口から出したくないみたいだ。


 やはり、天井の大ミミズとは種類が違うようだ。


 そして、縛りながらパイの肌を撫でるように、あやしくうごめいていた。



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