第27話 第八章 大ミミズ(2/4)
【地獄(?)に落ちた
そこへブーメラン男が走って来た!
2人の間をすり抜けて大ミミズの横穴へと突進!
「まずい! 先を越されたぞ!」
パイも、ナイも慌てた!
ベチッ! ゴロゴロ……
「うおっ! ぶっ飛ばしたぞ! 大ミミズが邪魔したぞ! でも、鷹大が言うような、絞め殺すってほどじゃないな」
パイが言う通り、地面にいた大ミミズの1匹が、ブーメラン男を叩いて転がしたのだ。
やはり、大ミミズは死んでなかった。
ここの人間たちは体が小さいし軽い。プーメラン男も例外ではないはずだ。とは言え、人間を叩き飛ばすなんて、ミミズのくせに力は強そうだ! 直径が5センチくらいと、太いだけのことはあった。
「わーーーーーーっ!」
ブーメラン男は立ち上がり、叫びながら再び横穴へ突進! プールのように、頭から飛び込もうとする。
ベチン! バチン! ゴロゴロ ……
第1撃で叩き倒され、転んだ所に第2撃で遠くへ転がされた。
パイが言ったように、横穴に近づくのを邪魔してるみたいだ。
その後、ブーメラン男は何度も横穴に入ろうと試みるが、同様に大ミミズに阻まれた。
「また弾かれたぞ! 羽を持ってないと、こうなるのだな」
「そのようですわね」
パイとナイには、このブーメラン男は横穴には入れない、という安心感が漂ってきていた。
鷹大には、大ミミズが白っぽい動物たちと同類との考えもあったが、異なる存在かも知れないとの不安もあった。その場合、羽の効力は疑問である。
パイとナイが、このブーメラン男のように、先に進めないこともあるのだ。情報が欲しい。鷹大は、ブーメラン男が見ていた看板が気になってくる。
「2人とも! あいつが見ていた看板を見てみようよ! ここに来るまで看板なんて、1つも無かったんだ。重要かも知れないよ!」
「看板って、何ですの?」
匂いしか信じていないのか、ナイは気付いてなかったようだ。
「あれだよ!」
鷹大は、横穴から5メートルくらい離れた所に立っている看板を指差した。
トクトク トトト……
ナイが近寄って看板を見る。
「字が書いてありますわ。なになに『資格がある者のみ、先へ進める。資格がない者は進めない』と、ありますわ」
「ああ、それだけしか書いていないぞ!」
ナイに続いて、パイも読んだみたいだ。
2人とも字が読めた! 地獄にも文字文化があったのだ。
でも、驚くのは、そこではない!
「日本語だ!」
漢字を含めた縦書きの日本語だった。
ここは日本人専門の地獄のようだ。
「2人とも日本語が読めるんだね」
パイがさらりと答える。
「これが日本語かどうかは分からんが、この字は読めるぞ!」
「ええ、読めますわ! 読めますけど、大したことは書いてございませんわね」
ナイは気付いていない。
「そうでもないよ! 資格があれば先へ進めるってことは、資格がある者は大ミミズには安全ってことだよ! 羽の有無は関係ないみたいだね」
鷹大はそう解釈した。
「そ、そういうことになりますわね。でも、その資格って何ですの?」
「オリも知らんぞ!」
2人は顔を見合わせている。資格については知らないようだ。
「くっそーーーーーーーーっ!」
ダダダダッ!
ブーメラン男が平地へと走り去った!
どうやら諦めたようだ。悔しそうな顔が
あいつは、もう宝を手にできないのだ。
ナイは冷ややかな目。
「きっと、あの男には資格がなかったのですわ。ライバルが1人減りましたわ」
「ざま見ろだぜ」
宝探し競争の真っ只中だ。こういう2人の反応は、仕方なかった。
近くをうろついていた目つきの悪い人たちは、ブーメラン男みたいに資格がなかった人かも知れない。鷹大の疑問は解消した。
タタタタッ タッ!
後ろから、軽く速い足音だ!
「あーっ! 他の女が行きますわ!」
突然現れた知らない女の子が、あっという間に、鷹大たちの間を通り抜けた!
薄い
「先を越されるぞ!」
パイの声は間に合わない。ストライプの子は大ミミズに叩かれることなく、横穴に取り付いた。
負けていられない! パイもナイも続く! 大ミミズの横穴に突進する!
2人とも大ミミズに叩かれなかった。資格はあるようだ。
ストライプの子を挟むように左右から横穴に取り付いた。
でも、パイもナイも、ストライプの子を引きずり出そうとしない。
3人のビキニが一緒になって、大ミミズのつまった横穴に入ろうと押し合った。
グチュッ! ジュブジュブ……ニュルニュル……
大ミミズは3人に押され、苦しそうに横穴の中で
やはり、最初に取り付き、真ん中から攻めるストライプの子が有利だ。
その子は左肩を大ミミズに押し付け、横向きとなって、グイグイと地面を蹴って無理やり入り込もうとする。すると、左右に大ミミズが盛り上がって、パイとナイが入りにくくなっていく。
その盛り上がった大ミミズの何匹かが、横穴から出てきて、パイとナイを押し出してしまった。
そして、出てきた大ミミズはストライプの子の体を這い回っている。
パイもナイも、入る余地が無くなってしまった。
「くそっ! もう入れんぞ!」
「一度には1人しか入れないようですわね」
2人は諦めたようで、大ミミズの横穴から離れてしまった。
鷹大は心配になる。
「2人とも! 先に行かれても、いいの?」
1番1番と言っていた割には、やけに諦めがいい。
「仕方ありませんわ。次に入って、あの女を追い抜くのですわ!」
ナイの言葉に、鷹大は言わずにはいられない。
「今、あの子を、引きずり出せばいいじゃん!」
パイが真面目な顔を向ける。
「鷹大! オリたちは競走をしているのだ。足の引っ張り合いをしているわけではない!」
「そうですわ! 他人の邪魔をしてはならないのですわ!」
競走ではあるが、紳士協定でも結んでるような、案外とフェアな精神を持っているようだ。
「それでいいの?」
でも、鷹大は納得がいかない。
「構わん! すぐに大ミミズの中へ飛び込まなかったオリのミスだ」
「そういうことですわ。まだ抜く余地があるかも知れませんわ。そこで抜くのですわ!」
ナイは諦めてないようだ。
「2人が、そう言うんなら仕方ないか……」
2人が1番に横穴へ入れなかったのが、ちょっと悔しいが、鷹大は2人の意思を尊重することにした。
なのでストライプの子が、大ミミズの横穴に1人で挑戦することとなった。
横穴から出てきた大ミミズと地面にいた3匹が、ストライプの子の体をヌルヌルと這い回っている。
その子の体が粘液でテカテカしてくるし、大ミミズに這われて気持ちよさそうな顔を、一瞬見せたりする。
パイとナイが先を越されたというのに、鷹大には良からぬ想像がよぎった。
粘液にまみれた大ミミズが、Hな触手に見えてきたのだ。
鷹大は、思わず声にしてしまう。
「まるで、危ない漫画だ」
「何が危ないんですの?」
ナイが即座に反応、素朴な疑問が痛い。
「あっ、いや、何でもないよ。この大ミミズが危ないんじゃなくて、こんな漫画が危ないと言うか、でも、俺は読んだことないよ! 聞いただけだって! そんな本は、有害図書と言われてるし、……」
何も知らないナイを相手に、変に言い訳をしてしまう。
「何だと! この大ミミズは有害だったのか?」
パイまで乗り出してきた。
真っ赤な顔をして慌てる鷹大。
「だから、この大ミミズのことじゃないよ。本の話だよ」
「何でここで本が出てくるのだ! 鷹大はいったい何を考えているのだ!」
「ごめん、ごめん、変なことを考えていたよ」
謝って、何とか収めた。
再び、鷹大の目がストライプの子へと向かう。触手が絡むほどにHっぽい姿は、見逃しちゃいけない。むふふと見つめていた。
パイが気付いた。
「あっ! 鷹大がハズ目になってるぞ! いや、ちらちらと、ハズ目になりかけてるぞ!」
「鷹大が、あの女を見て、ハズ目になりかけているんですの?」
ナイもハズ目を確認し、2人は鷹大から距離をとった。
柔肌を触手のように這い回る大ミミズ! 粘液でテカテカする健康的な肉体!
鷹大のハズ目は必然であった。
ジュジュンッ!
ハズ目なんて言ってる間に、ストライプの子は横穴の中へ入ってしまった。
大ミミズたちを押し
もう姿は見えない。
「さあ! オリたちも続くのだ!」
パイは
「そ、そうなのですけど、鷹大のハズ目……あっ! ハズ目が治りましたわ! やっぱり、あの女のせいだったのですわ! あの女を見て鷹大がハズ目になったのですわ! 私は心配ですわ! 横穴に取り付いたら、後ろから私もハズ目で見られてしまいますわ!」
ナイは腕組みをして、鷹大から、さらに距離をとる。
ナイが言った通りとなるのは、明らかだった。鷹大からは言葉も出ない。
「オリもハズ目は嫌いなのだ! そうだ! 鷹大が先に入れ!」
パイが横穴に向かって鷹大を押した。
「えっ! 俺? 俺が前でいいの? 君たちが、1番に宝を手に入れるんじゃないの?」
なんか意外だ。
「それはそうだが、すでに女が先に入ってしまったのだ。オリは後ろからハズ目で見られたくないのだ! 鷹大はオリが着くまで宝に触るでないぞ! 宝らしいものを見つけたら、そこで待っているのだ! いいな!」
ストライプの子に先に行かれたから、宝よりもハズ目対策を重視しているようだ。
ナイも、うなづいている。
「鷹大の後でも大差は、ございませんわ」
「よし! オリたちは後から続く。先に入れ! 鷹大!」
グイッ!
横穴に向かって、パイが鷹大を押した。
2人が横穴に取り付いた時、大ミミズには叩かれていない。つまり、資格があるってことだ。
でも、鷹大に資格があるかどうかは分からない。ブーメラン男のように、大ミミズに叩かれるかも知れなかった。
「叩かれたら痛そうだな」
鷹大は、恐る恐る横穴に近づく。
穴の中にいる大ミミズが、ニョロニョロと反応するだけ! 地面の3匹からも攻撃はない。
ポン
パイが鷹大の尻を叩いた。
「鷹大! 入れ!」
横穴へ入るため、大ミミズに近づくと、鷹大が気付いた。
「あれ? ちょっと変だよ! この大ミミズ。ミミズじゃないかも!」
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