第24話 第七章 怖い動物たち(7/8)
【地獄(?)に落ちた
パイには、もどかしい。
「ナイ! 自分でやると言ったのだ! 鷹大も羽を持っているから襲われないのだぞ! 早くするのだ!」
「それよ! それですわ!」
ナイが放っていたマイナスの気が、プラスに反転した瞬間だった。
「何だ? いきなり、どうしたのだ?」
パイはナイの変化についていけない。
「鷹大も羽を持っているのですわ!」
「だから、襲われないのだぞ!」
「違う! 違いますわ! 鷹大の羽を私が持って、今パイが持っている羽を鷹大が持てばよろしいのですわ!」
ナイは妙案とばかりに披露した。
鷹大が履く短ズボンには、太腿の外側に蓋が付いた大きめのポケットがある。そこに鷹大の羽が入っているのだ。
「そして、この羽を鷹大にか、まあ、それもアリだな!」
パイは即理解できた。
「えっ? 俺がパイのあの毛がついていた羽を持つの?」
降って湧いたような幸運! 鷹大の想像力が膨らんでいく!
「おいおい! 鷹大がハズ目になったぞ! 今度はナイのせいだぞ!」
またまた、パイが
「私のせいでも、なんでも、構いませんわ! 鷹大! 持っている羽を渡すのですわ!」
ナイは鷹大に近寄りたいが近寄れない。ナイも鷹大のハズ目が嫌いなのだ。
「お、俺がパイの毛を……」
鷹大は
助平な想像力が頭を
「もう! 鷹大ったら、ハズ目になって
ナイはハズ目から目を逸らし、怖いのを我慢して鷹大に近づき、短ズボンのポケットから羽を取り出した。
さっと離れる。
「私がこれを持てば、解決ですわ!」
その羽を自分のボトムビキニに入れた!
「やりましたわ!」
ナイは勝者の笑みをパイに見せつける。
パイには何てことはない、普通どおり。
「すると、この羽は鷹大が持つしかないぞ!」
羽を鷹大へと差し出した。でも、ハズ目が怖くて近づけない。
「こ、これが、パイの中に、中の毛がついていた羽……」
鷹大は、興奮のあまり指が震えている。
「鷹大! ハズ目がスゴイぞ!」
ハズ目のいやらしさは最高潮である。
パイは近づくどころか、羽を持ったまま後退りだ。
2人のこう着状態に、羽を手に入れて気分のいいナイが指示を出す。
「鷹大がパイの羽に触ったら、もっとハズ目になりますわ! パイが鷹大の服にその羽を入れるのですわ! それまで、鷹大はじっと立っているのですわ!」
パイはびびった。
「オリが鷹大の服に入れるのか? ハズ目に近づくのは怖いのだ!」
「我慢するのですわ! 私だって羽を出せましたわ! パイだって羽を入れられますわ! その間、鷹大はじっとしているのですわ!」
「お、俺だって、その羽に触りたいよ」
「ダメーーーーーーっ! ダメですわっ! 絶対ダメですわっ! ハズ目がひどくなりますわっ!」
「そんなー!」
物欲しそうな鷹大を、ナイは睨みつける。
「ダメですわっ! 鷹大は枯れた立ち木のようにじっとしているのですわ! 絶対に動いてはなりませんわっ!」
食いつかんばかりだ!
「うう! わ、分ったよ!」
鷹大は恐れをなした。
「そうですわ、鷹大はじっと立っているのですわ! その間に、パイが持っている羽を鷹大の服に入れるのですわ!」
「ハズ目には近づきたくないぞ!」
強力なハズ目に、尻込みするパイである。
「私もできましたわ! きっとパイもできますわ! お願いですわ! 我慢するのですわ!」
言葉とは裏腹に揺るぎない迫力!
「し、仕方ないのだ! やってみるのだ」
パイは鷹大の顔を見ずに、短ズボンだけを見ながら恐る恐る近づいて、ポケットに羽を入れ、蓋を閉めてボタンをかけた。
走って離脱する。
「やった! オリもできたぞ!」
階級が上がったくらいに嬉しそうだ。
ググググッ!
鷹大の首が傾き、ハズ目の視線がポケットへと向く。
ナイには、助平魂がターゲットを捕捉したように見えた。
「ダメーーーーっ! ダメですわ! 鷹大は羽を見ても触ってもダメですわ!」
「どうして? この羽は俺の分だよ。よく見たいよ!」
「もっと、ハズ目になるからダメですわっ! もう忘れるのですっ! 鷹大は羽のことを忘れるのですわっ! ハズ目にならないためですわっ!」
ナイが鷹大を思いっっっっ切り睨みつける。
名のある研ぎ師が研いだばかりの名刀を、スッと鷹大の首元に突きつけたようだ。
ナイの目が怖いと、鷹大は初めて思った。ハズ目も治まる。
「わ、分かった! 分かったよ。触らないよ。見ないよ」
「約束するのですわ!」
もっと、もっと、睨みつける! その刀の鋭さが増している! もっと、鋭くなるかも知れない。鷹大は逆らえなかった。
「約束するよ。でも、思い出すくらいはいいだろう?」
僅かでも見返りが欲しい。
「ダメですわっ! ハズ目になりますわっ!」
「そうならない程度に思い出すからさ」
鷹大は、おこぼれでも欲しかった。
「そんなこと! 鷹大にはできませんわ!」
「できる! できるよ!」
ナイはとても信じられないと思ったが、このままでは拉致が開かない。
「仕方ないですわ。思い出すくらいは許しますわ。その代わり、羽のためにハズ目にならないこと! よろしいですの?」
「分かった! 分かったよ」
そう言いながらも、パイの水着に入っていた羽を、手に入れた鷹大である。
笑みを必死に隠すのであった。
「これでオリたちは動物に襲われないぞ!」
パイはふんぞり返る。
「まだ決まったわけではございませんわ。私たちが考えた通りとは、限りませんわ!」
あれだけ騒いだ割には、ナイは慎重だ。
「きっと、大丈夫なのだ! 動物よ! 出て来い! 襲えるもんなら、襲ってみろ!」
パイが両手を腰に当て、胸を張って叫んだ。
プルンッ!
その胸は、得意げに1つ跳ね、気持ちよく上を向いた!
パイの声に鷹大は心配になる。
「声が大きいって! そんなこと言ってると、本トに来るよ! 動物に会わないに越したことは、ないんだからね」
ナイも心配だ。
「鷹大の言う通りですわ。ほら! 知らないうちに、あそこに白熊が来ていますわ!」
まだ遠い。
白熊は横を向いてゆっくりと歩いている。薄茶色でなく、真っ白な白熊だ。こっちには気付いていなかった。
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