第22話 第七章 怖い動物たち(5/8)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、手に入れれば生き延びられるという宝を探すことになる。火山、川を経て平地で歩いていると、白い大鷲に襲われた。撃退すると、ホワイトタイガー、ライオンが、次々と現れる。でも、襲われず、よく分からないうちに去っていった。しかし、その次に現れた白狼にナイが噛み付かてしまう。何とか追っ払い? ナイの傷を鷹大が見ると、痛々しくなく、本人も傷を気にしてない様子だった。その傷も見るたびに治っていった。介抱する鷹大とナイが仲良く見えたパイは嫉妬して、ハズ目によってナイを鷹大から引き離そうとするのだった】



 パイは当ての外れた顔をする。

「おかしいのだ! 鷹大がハズ目にならないのだ!」

「狼に襲われたばかりで、すぐにそんな気持ちになんて、ならないよ」


「それなら、こうするだ!」

 パイは鷹大の手首をつかむと、ナイの真似をして自分の胸に押し当てた。


 ムニュ~~~~!

 鷹大の手にも余る大きな胸!


 パイとナイを始めとするここの人たちは、子供というよりも、縮尺を縮めたように小さく、鷹大の胸くらいの身長だった。そんな小さいサイズの体なのに、パイの胸は鷹大手に余るのだ。


 押し当てた指の隙間から、はみ出た肉が、元気に盛り上がっている。


 鷹大の顔が緩む。

「ずっと奥まで柔らかい! まるで底無し沼だ! ナイのような下地は全くないよ。てのひらには柔らかさと体温しか感じない」


 トクッ トクッ

「違った! かすかな鼓動が伝わってくる。胸が大きいから伝わりにくいんだ! 大きいっていいよなぁ~~」


 何もかもが巨乳の引き立て役になっていた。


「おっ、ハズ目だ!」

 パイはピョンと鷹大から離れる。


 ナイも後退あとずさりり。

「やっぱりその目を見ると、何もかも、ご破算わさんですわ!」


 パイのハズ目作戦は成功した。


 ハズ目によって2人が離れるのは初めてではない。ハズ目が利用されているのも、鷹大は承知していたので、ハズ目には触れず、ナイのケガを心配する。


「ナイ! 本トに腕はいいの?」

 鷹大のハズ目も治っていた。


「もう痛くないですわ。肩の時と同じですわ。心配には及びませんわ」

 見せるナイの腕に痛そうな感じはない。


「そうなんだ」

 2人は違う人間なのだと、改めて実感する鷹大だった。


 珍しくパイが問題を提起する。

「ナイばかり動物にやられているのだ。鷹大はともかく、オリは睨まれるだけで噛まれなかったのだ。反対にナイは睨まれることなく噛まれていたのだ。何かありそうに思えるぞ」


 ナイは不満顔。

「そうですわね。私ばっかり不公平ですわ!」

 そっちかよ!


「動物に公平を求めるやつはバカだぞ!」

 どんどんずれていく!


 鷹大が2人の会話に割り込んだ。

「動物が不公平って話題じゃないだろう?」

「それでも、不公平と言いたくなるのですわ!」

 ナイは不機嫌な顔で腕を組んだ。


 鷹大はパイが言い出した話を続けたい。

「不公平は一旦置いておいて、パイはいつも睨まれて終わるよね。

 鷲の時は、いきなりナイが襲われたけど、ホワイトタイガーの時、あっ、虎の時は俺が2人を抱えていたためか、睨まれるだけだった」


 パイが勇んで前に出る。

「オリが虎に『食っても無駄だ』と言い聞かせたのだ! 虎は理解していたぞ!」


 プルルンッ!

 誇らしげに胸を張ると、巨乳が揺れて応えた。


「それは違うと思うけど、3人一緒だったから襲わなかったのかな? でも、ライオンの時は、ナイと俺を飛び越してパイの所に行ったけど、パイは睨まれるだけで終わったな」

 鷹大の考えは、うまくまとまらない。


「ライオンって何だ?」

 パイは知らないようだ。


「虎の次に遭遇した虎に似た動物だよ」

「あれがライオンという動物なのか」

 パイは1つ学んだ。


「そうだよ。そして、さっきの白狼は、パイを睨んだけど、ナイを睨まずにすぐに飛びかかった。ライオンも白狼もパイが危なかったけど何ともなかったよね」


「オリは一度も襲われていないぞ! 人徳かな?」

 パイは、自分の新しい一面に気付いた風な顔をする。


「動物に、そんなのは分かりませんわ! それにパイに人徳なんてありませんわ!」

「あるぞ! 巨乳の人徳だ!」

 自信満々に胸を突き出して見せる。


 ナイは巨乳から目をらす。

「巨乳と人徳は無関係ですわ! パイはバカですわ! バカ巨乳ですわ!」

 横を向いたまま口をとがらせた。


「また、バカバカ言いやがって! ふくよかさは、人徳につながるんだよ!」

 パイは、ふくよか芸術のポーズをとって見せる。


<ふくよか芸術って、どんな芸術? 想像してみましょう。ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』辺りかな?(作者)>


 ナイは芸術なんて受け入れない。

「そんなの見せても、体格と人徳は無関係ですわ!」


 これでは話が進まない。鷹大が2人の間に入った。

「すぐに喧嘩になるんだから、

 とにかく、ナイは鷲の時以外は、俺に触っている時には襲われていないよね。1人の時に襲われているんだよね」


 ナイはその問いには答えず、ほんのわずか考えたと思ったら、頭に後光が差した。


「気が付きましたわ!


 鳥以外の時には鷹大は、鳥の羽を持っていましたわ! パイが睨まれた時もパイは、鳥の羽を持っていましたわ!

 きっと、仲間の羽を感じて、動物が襲わなかったんですわ!」


 ナイは大物を釣り上げた気分である。


 鷹大も、ナイの釣果ちょうかに満足な思い。

「そうだね! そうだよ! 俺もそう思う! 動物がパイを睨むだけなんて不自然だよ!

 遠くに見えた他の人たちは、睨まれることなく襲われているんだ。睨むという行為は特別なんだよ。すると、睨んでいる時に、動物が鷲の羽を感じている、と考えるとしっくりとくるよ」


「鳥の羽が原因ですわ! パイが襲われないのは、鳥の羽を持っているからですわ!」

 ナイはビシッとパイを指差した。


 パイの目に刺さるほどの勢いだった。

「そうかも知れんが、指が近い!」

 パイはナイの指を握りつけて下に向けた。


 ナイは握ったパイの手をはらう。

「そう言うことですから、私も羽を持てば、動物に襲われないと言うことになりますわ。パイ、1本ちょーだい、ですわ」

 掌を重ねてパイへ向かって差し出した。頂戴ちょうだいのポーズ。


「仕方ないのだ。きれいな羽だから人にあげたくないが、仲間のためだ。それに、もともとナイのために拾った羽だしな」

 パイは水着の中から白い羽を1本取り出した。


 輝くような白、鷹大のてのひらよりも長い羽だ。

 パイは、親指と人差し指の2本の指で、羽の真ん中辺りをつまみ、ナイへ向けて差し出した。


「きゃーーーーっ!」

 ダダダッ!


 羽を見るやいなや、ナイは悲鳴を上げると、走って逃げだした。


 ええーーーーーーーーーーっ!



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