第22話 第七章 怖い動物たち(5/8)
【地獄(?)に落ちた
パイは当ての外れた顔をする。
「おかしいのだ! 鷹大がハズ目にならないのだ!」
「狼に襲われたばかりで、すぐにそんな気持ちになんて、ならないよ」
「それなら、こうするだ!」
パイは鷹大の手首をつかむと、ナイの真似をして自分の胸に押し当てた。
ムニュ~~~~!
鷹大の手にも余る大きな胸!
パイとナイを始めとするここの人たちは、子供というよりも、縮尺を縮めたように小さく、鷹大の胸くらいの身長だった。そんな小さいサイズの体なのに、パイの胸は鷹大手に余るのだ。
押し当てた指の隙間から、はみ出た肉が、元気に盛り上がっている。
鷹大の顔が緩む。
「ずっと奥まで柔らかい! まるで底無し沼だ! ナイのような下地は全くないよ。
トクッ トクッ
「違った! かすかな鼓動が伝わってくる。胸が大きいから伝わりにくいんだ! 大きいっていいよなぁ~~」
何もかもが巨乳の引き立て役になっていた。
「おっ、ハズ目だ!」
パイはピョンと鷹大から離れる。
ナイも
「やっぱりその目を見ると、何もかも、ご
パイのハズ目作戦は成功した。
ハズ目によって2人が離れるのは初めてではない。ハズ目が利用されているのも、鷹大は承知していたので、ハズ目には触れず、ナイのケガを心配する。
「ナイ! 本トに腕はいいの?」
鷹大のハズ目も治っていた。
「もう痛くないですわ。肩の時と同じですわ。心配には及びませんわ」
見せるナイの腕に痛そうな感じはない。
「そうなんだ」
2人は違う人間なのだと、改めて実感する鷹大だった。
珍しくパイが問題を提起する。
「ナイばかり動物にやられているのだ。鷹大はともかく、オリは睨まれるだけで噛まれなかったのだ。反対にナイは睨まれることなく噛まれていたのだ。何かありそうに思えるぞ」
ナイは不満顔。
「そうですわね。私ばっかり不公平ですわ!」
そっちかよ!
「動物に公平を求めるやつはバカだぞ!」
どんどんずれていく!
鷹大が2人の会話に割り込んだ。
「動物が不公平って話題じゃないだろう?」
「それでも、不公平と言いたくなるのですわ!」
ナイは不機嫌な顔で腕を組んだ。
鷹大はパイが言い出した話を続けたい。
「不公平は一旦置いておいて、パイはいつも睨まれて終わるよね。
鷲の時は、いきなりナイが襲われたけど、ホワイトタイガーの時、あっ、虎の時は俺が2人を抱えていたためか、睨まれるだけだった」
パイが勇んで前に出る。
「オリが虎に『食っても無駄だ』と言い聞かせたのだ! 虎は理解していたぞ!」
プルルンッ!
誇らしげに胸を張ると、巨乳が揺れて応えた。
「それは違うと思うけど、3人一緒だったから襲わなかったのかな? でも、ライオンの時は、ナイと俺を飛び越してパイの所に行ったけど、パイは睨まれるだけで終わったな」
鷹大の考えは、うまくまとまらない。
「ライオンって何だ?」
パイは知らないようだ。
「虎の次に遭遇した虎に似た動物だよ」
「あれがライオンという動物なのか」
パイは1つ学んだ。
「そうだよ。そして、さっきの白狼は、パイを睨んだけど、ナイを睨まずにすぐに飛びかかった。ライオンも白狼もパイが危なかったけど何ともなかったよね」
「オリは一度も襲われていないぞ! 人徳かな?」
パイは、自分の新しい一面に気付いた風な顔をする。
「動物に、そんなのは分かりませんわ! それにパイに人徳なんてありませんわ!」
「あるぞ! 巨乳の人徳だ!」
自信満々に胸を突き出して見せる。
ナイは巨乳から目を
「巨乳と人徳は無関係ですわ! パイはバカですわ! バカ巨乳ですわ!」
横を向いたまま口を
「また、バカバカ言いやがって! ふくよかさは、人徳につながるんだよ!」
パイは、ふくよか芸術のポーズをとって見せる。
<ふくよか芸術って、どんな芸術? 想像してみましょう。ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』辺りかな?(作者)>
ナイは芸術なんて受け入れない。
「そんなの見せても、体格と人徳は無関係ですわ!」
これでは話が進まない。鷹大が2人の間に入った。
「すぐに喧嘩になるんだから、
とにかく、ナイは鷲の時以外は、俺に触っている時には襲われていないよね。1人の時に襲われているんだよね」
ナイはその問いには答えず、ほんのわずか考えたと思ったら、頭に後光が差した。
「気が付きましたわ!
鳥以外の時には鷹大は、鳥の羽を持っていましたわ! パイが睨まれた時もパイは、鳥の羽を持っていましたわ!
きっと、仲間の羽を感じて、動物が襲わなかったんですわ!」
ナイは大物を釣り上げた気分である。
鷹大も、ナイの
「そうだね! そうだよ! 俺もそう思う! 動物がパイを睨むだけなんて不自然だよ!
遠くに見えた他の人たちは、睨まれることなく襲われているんだ。睨むという行為は特別なんだよ。すると、睨んでいる時に、動物が鷲の羽を感じている、と考えるとしっくりとくるよ」
「鳥の羽が原因ですわ! パイが襲われないのは、鳥の羽を持っているからですわ!」
ナイはビシッとパイを指差した。
パイの目に刺さるほどの勢いだった。
「そうかも知れんが、指が近い!」
パイはナイの指を握りつけて下に向けた。
ナイは握ったパイの手をはらう。
「そう言うことですから、私も羽を持てば、動物に襲われないと言うことになりますわ。パイ、1本ちょーだい、ですわ」
掌を重ねてパイへ向かって差し出した。
「仕方ないのだ。きれいな羽だから人にあげたくないが、仲間のためだ。それに、もともとナイのために拾った羽だしな」
パイは水着の中から白い羽を1本取り出した。
輝くような白、鷹大の
パイは、親指と人差し指の2本の指で、羽の真ん中辺りを
「きゃーーーーっ!」
ダダダッ!
羽を見るやいなや、ナイは悲鳴を上げると、走って逃げだした。
ええーーーーーーーーーーっ!
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