第21話 第七章 怖い動物たち(4/8)

【地獄(?)に落ちた鷹大たかひろは、巨乳のパイと貧乳のナイと一緒に、手に入れれば生き延びられるという宝を探すことになる。宝の匂いをたどって火山と川を経て平地にやってきた。白い大鷲に襲われたが、これを撃退し、ホワイトタイガーはパイが説得して追い払った? ホワイトライオンは声をかけたら行ってしまった。3人は何とか猛獣を回避していた】




「もう大分だいぶ離れたよ。少し休もう!」

 鷹大は走りに走り、猛獣たちの殺戮現場から逃げたのだった。疲れたので、一息入れたかった。


 鷹大は地面に座って、2人を放した。

「まだ気は抜けませんわ!」

 ナイは周りを見渡している。


「怖かったのだーーーー!」

 パイが抱きついてきた。胸がムニューとなる。や、柔らかい!


 パイは白っぽいライオンに睨まれたが、襲われずに済んでいた。それでも、怖い思いをしたのだ。


 ライオンが行ってしまった直後にも、パイが抱きついてきたが、ポヨンポヨンなパイの胸に、鷹大は気付かなかった。いや、気が回らなかった。


 でも、緊張が解けた今、やわい感触に、鷹大はヘロンとなりそうだった。

「柔いよ! いいよなー! パイの胸! 気持ちいいな~!」


 ナイが鷹大の助平な気持ちに気付いた。

「ハズ目ですわ! また鷹大がハズ目になっていますわ! パイ! 離れるのですわ!」

 鷹大は助平な気持ちになると、目にハズ目、恥ずかしい目として表れた。パイもナイも、そのハズ目が嫌いだった。


 なのに、パイはすぐには離れない。

「オリは怖かったのだ! 鷹大の目を見なければいいのだ! もうちょっとくっついていたいのだ!」

 安心感を得たいためにくっついていたかった。


 パイの胸を感じているものの、愛くるしいパイの態度に、鷹大の助平な気持ちが続かなかった。

 別の感情が芽生えて、ハズ目も治ってしまう。


「なんだか、保護者になったみたいだよ。パイ、怖かったね。いい子、いい子」


 鷹大はパイの頭を撫でた。

 ツルン

 一撫でが、一瞬で終わった。


 パイの髪は滑らかで、スベスベだった。手が油か石鹸で滑ったみたいだった。鷹大は男とは違う、女の子髪の毛を実感した。


「いい気持ちなのだ。もっとやってほしいのだ!」

 撫でられたパイも喜んでいる。


「うん、いいよ、いい子いい子」

 スベスベの手触りをさらに数回実感する。


 仲良くしているようで、ナイは我慢できない。

「パイ! もう離れなさい! 離れるのですわ!」

 ナイがパイの腕を引く。パイは離れようとしない。今度は、両手でパイの腕を引っ張る!


「ナイは妬いているのだ! オリが鷹大にムニュムニュしているから妬いているのだ!」


 図星!

「こらーーーー! パイ! もう怖いからではなく、くっつきたいからくっついていますわね! ズルイですわ! 離れるのですわ! 鷹大も、パイを放すか、ハズ目になるか、どっちかをやるのですわ!」

 ナイは、嫌いなハズ目を要求するくらいに焦っていた。


「そんなこと言っても……」

「なら、こうですわ!」


 ナイは鷹大の手を取ると自分の胸に押し当てた。指に柔らかい層が当たった。

「こっ、心地よい柔らかさ!」

「ハズ目ですわ! 鷹大のハズ目ですわ!」

 ナイはピョンと離れる。


「うえーっ!」

 パイも立ち上がってサッと鷹大から離れた。


「なんだよ! その反応! 傷つくなー!」

 鷹大のハズ目は強力だった。見てしまうと、2人は反射的に逃げるのだ!


「パイ! これが鷹大なのです! 独占してはならないのですわ!」

「うーん、いい子いい子してもらって気持ちよかったが、ハズ目を見ると全部吹っ飛ぶな! 見なければよかったぞ!」

 ひどい言われようだ。


 鷹大は休憩のつもりが、休憩になってない。


 ビチャッ

 足音! 近くに来るまで誰も気が付かなかった。


 狼だ!


 シベリアンハスキーという大型犬よりも、さらに立派な白狼が、パイの斜め前で睨んでた!


 あまりのことに、3人とも動けない。


 ダッ!

 白狼はパイを睨むのをやめて、ナイに飛びかかった!


 ナイは尻餅をつき、とっさに両手を前に突き出して白狼を拒絶しようとする! 

 白狼は睨むことなく、その腕に食いついた!


 ガブリッ!


「きゃーーーーーーー!」

 ナイの右腕に噛み付いた! ひじ辺りに牙が食い込んでいる!


 ブルンッ! ダンッ! ブルンッ! ダンッ!


 ナイの体を振り回し始めた!


 白狼は食いついたナイの腕を、食い千切らんばかりに振り回す。

 ナイの体は、右へ左へと布切れのように舞い、地面を何度も弾んだ!


 ナイが死んじゃう!


「やめろー!」

 鷹大が白狼に飛びついた!


 白狼の頭につかまって、動きを止めようとしたが、止まらない!


 ハーッ! フーッ!

 白狼の荒い息音!

 聞くだけでビビる! でも、そんなこと言ってられない。


 鷹大は白狼の口をこじ開けようと、口の中へ両手を差し込んだ。


 鋭い牙が指に食い込む、ヌルヌルした唾液が気持ち悪い。それでも、鷹大は口が開くように手に力を込めた。なのに、白狼のアゴはびくともしない。アゴの力に圧倒されるばかり!


 手の力では口は開かないぞ! どうすれば! ……?


 すると、白狼の方から口を開けてナイの腕を放した。


 今だ!


 鷹大はナイの体を覆う。白狼の視界からナイを除きたかった。


 それを見た白狼は、プイッと横を向き、行ってしまった。

 パイは地面に座り込んでいただけ、全くの無事だった。


「ナイ! 腕は?」

 肉が裂けていた。刺さった牙の数だけ裂け目が平行に並んでいた。しかし、出血はない。


 ナイが自分で腕の傷口をさすると、生肉の柔らかさと湿り気によって、肉の裂け目は物理的に閉じたが、肉の色をした噛み痕は残った。


「怖かったですわ! 腕が千切れるかと思いましたわ!」

 ナイが抱きついてきた。


「ナイ! 傷は? 肉が裂けてたじゃないか、手は動くの?」

「ええ、もう痛くはございませんですわ」

 そう言いながら、グイグイと鷹大に自らの体を押し付けてくる。


 ケガしたばかりとは思えない。

「あんなに肉が裂けていたのに、もう痛くないの?」


「なぜか、もう、痛くないのですわ! それより怖かったですわ!」

 ナイがまた体を押し付ける。


 今度はパイが嫉妬する。

「ナイ! 鷹大にくっつくな! ハズ目になるぞ!」

「ハズ目になるまで、こうしているのですわ!」


「鷹大! 早くハズ目になるのだ!」

 ナイもパイも、白狼がつけた傷なんて忘れたかのようだ。


 鷹大には分からない。

「狼に襲われたばかりなのに、ナイはケガしているのに、2人とも暢気のんき過ぎるよ!」


「だって、傷はもう痛くないですわ」

「痛くなくても大ケガだよ!」


「もう、傷は塞がっていますわ」

 ナイが傷を見せた。肉の色は薄まり、肌色に近くなっている。


「治り、早っ! 本トに大丈夫なの?」

 鷹大は信じられない。


「もう、普通っぽいですわ。それより、私も、いい子いい子して欲しいですわ!」

 ナイが鷹大を抱きしめてくる。

 それほど強くないが、腕の力を感じた。噛まれた腕は、本トに何ともないみたいだ。


 鷹大は2人がいいのなら、いいと思うことにした。

「分かったよ。いい子、いい子」

 ナイの頭を撫でてやる。


 ナイの髪もパイのように、スベスベで滑らかだ。撫でる方も心地いい。


 パイは当ての外れた顔をする。

「おかしいのだ! 鷹大がハズ目にならないのだ!」

「狼に襲われたばかりで、すぐにそんな気持ちになんて、ならないよ」


「それなら、こうするだ!」

 パイは鷹大の手首をつかむと、ナイの真似をして自分の胸に押し当てた。




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