第17話 第六章 バタフライ(3/3)
【地獄(?)に落ちた
ピタリ
ナイが鷹大の掌を自らの胸に当てた。もちろん、ビキニの上からである。
「ちょ、ちょっと、ナイ、こんな時に……」
トクン トクン
ナイの鼓動が、鷹大の手に伝わってくる。
まだ息が切れているからか、鼓動は速い。でも、その1つ1つに力強さを感じた。
鷹大の安心感を後押しする。
「鼓動は速いけど、元気で、しっかりとした心音だね。よかった!」
顔を赤らめたナイが怒ってる。
「そうではございませんわ! 中身ではなく、外側ですわ!」
貧乳のため、まず胸の中身を感じてしまったのだ。
「そ、外側って! ……」
鷹大の指がクニクニと動く。
指先には骨を感じるが、
「こらーっ! ナイ! 何やっているのだ! 無駄なあがきをするなーっ!」
パイはナイに大声を浴びせるが、ナイは気にしていない様子。
「真ん中と端と比べて欲しいんですの」
「指には肋骨を感じるけど、掌にはその骨と皮膚の間に柔らかい層を感じるよ。その層の面積が狭いのは、ナイの体が小さいからかな。それは仕方ないにしても、女の子らしい弾力だよ。狭くて厚くないからこそ、この弾力に価値があるんだね。これはこれで結構いいかも、……」
鷹大から助平な言葉が飛び出す。地獄と思っているから素が出ていた。
「私の勝ちですわ!」
ナイは鷹大の手首をつかんだまま、掌を胸から離して、パイを見た!
もうちょい! と言うかのように、鷹大の指がクイクイと空を切っている。
パイだって黙っていない!
「オリは負けてない! 貧乳のくせに、おっぱいを語るなーっ! 鷹大も気持ちいい顔をするなーっ! 胸はオリの方が、もっともっと柔らかくて、もっともっと、気持ちいいのだぞーっ!」
パイが鷹大の背中に抱きついて来た。
ムニュッと柔らかい部分を押し付け、グニュグニュと圧力をかけてくる。
その勢いで鷹大の手が再びナイの胸に当たった。今度は指に柔らかい層が触れる。
ペタンコであるが、薄く心地よい弾力が鷹大の指に伝わってくる。
「鷹大! もっとオリを感じるのだ! 柔らかくて気持ちいいだろう?」
グニュッ ムニュッ ムニュニュッ!
パイは自らの胸を押し潰さんが如く、背中に体重をかける。
「鷹大が自分から私の胸に指を載せましたわ! 鷹大が私の胸を気に入ったのですわ!」
ナイも鷹大の再接触に喜んでいる。
「ナイは思ったより、ずっと女性らしい体だね」
「嬉しいですわ!」
もっと、顔を赤くする。
「オリは? オリは?」
ムニュ ムニュニュ~~!
パイは圧力を上下左右にずらしながら、体を鷹大の背中に押し付ける!
「パ、パイだって、柔らかくて気持ちいい胸だよ。女らしいよ」
「やった! オリは女らしいのだ!」
パイは喜びのあまり立ち上がって跳ねだした。その辺りは子供っぽい。
ピョンピョン! ヴォンヴォン!
言うまでもなく巨乳が暴れる!
鷹大の目は喜んで、緩みに緩む。
視覚と触覚を一致させたい思いが、鷹大に湧き起こり、指先に力が入ってしまう!
ググ グイッ!
脂肪の層を押し潰し、指が肋骨の隙間に食い込んだ!
「痛いですわ!」
ナイに平常心が戻った。
ナイの前には鷹大の目、緩みきった鷹大の目があった!
いやらしくメタモルフォーゼした2つの目が、ナイの鼻先で助平ダンスを踊ってるようだ。
ナイはブルッと震えた!
「もう、放すのですわ! その目を見ると気持ちが本能的に拒絶しますわ! 始めの頃より、ずっと嫌な目に成長なさってますわ! いやらしさが増していますわ!」
ナイは立ち上がり、フラフラしながら1歩下がった。
ピョンピョンと跳んでいたパイも我に返り、回り込んで鷹大の顔を覗き込む。
「うぇっ! こんな目を見ると、女は逃げるぞ! より強力になったぞ! 消毒液を吹き掛けたいくらいだ!
生ゴミに気付いた顔をする。
ナイもまだ言いたい。
「その目は仲間の恥ですわ! 見ている方も恥ずかしい目ですわ!」
「やーい、恥! 恥! 恥の目! 恥の目!」
パイはナイの言葉を受けて騒ぎ立てる。
一気に変わった状況に鷹大は戸惑った。
「そんなー! さっきまでのいい雰囲気はどうしたんだよ! このままもう少しHなことになっても、おかしくないシチュエーションだったのに……」
ナイがキッと鷹大を見る。
「その目が悪いのですわ! 恥ずかしい目! 『ハズ
ナイが鷹大のいやらしい目に名前を付けた。
「ハズ目って、……」
鷹大の目には『女の子の気持ちを冷めさせる』という強力な能力が備わった。
それは、決して男が望まない能力だ。
「恥ずい目だ! ハズ目だ! ハズ目だ! ハズ目の鷹大だ!」
ピシッ! ピシッ!
パイは、両手で指を差しながら、はやし立てた。
「鷹大のハズ目は見たくありませんわ! 生理的に受け付けませんわ!」
さげすむ目が鷹大には痛い。
「分かったよ! もう、いじめないでよ。俺はそんなに嫌な目をしているの?」
「ハズ目ですわ!」
「女が逃げ出す目だ!」
2人は汚物を見る態度。
「もういいよ! 言わないで! 助平な気持ちは押さえるようにするよ」
「そうして、くださいませ!」
鷹大の目つきはハズ目から普通に、いや、それ以上にしょんぼりとしてくる。
パイは気分が落ち着いてきた。
「まあ、ハズ目も治まったことだし、鷹大はナイを負ぶって歩くんだな!」
「いやらしいことは禁止ですわ!」
「わ、分かったよ」
ナイが鷹大に負ぶさったが、背中には腕を当てて、ナイの胸が直接触らないようにした。
「俺って、警戒される存在になったの?」
「ハズ目にならないためですわ! さあ、行くのですわ!」
鷹大は立ち上がった。
「パイは歩けるかい?」
パイの疲労も気になっていた。川での疲労は回復したのだろうか?
「平気だ!」
そう答えながら、パイが近寄ってくる。
「どうしたの?」
「何でもないのだ! 行くぞ!」
パイは目を合わせない。
鷹大にはよく分からなかったが、パイが登ってきた川を背にして歩き出したので続いた。
「パイ、こっちの方向でいいんだね」
「そうだ! この方向だぞ!」
ナイは疲れのためか、すぐに眠ってしまった。
鷹大は今後について聞く。
「ねー、パイ、他の人たちが作ってる列に合流しなくていいの?」
パイは迷いなく答える。
「あいつらはあいつらで、行きたい方向へ進んでいるのだ。オリも同じだ! 宝の匂いをたどって、行きたい方向へ行く! ただ、それだけだ!」
たぶん、目指す地は同じなのだと鷹大は思った。登った場所が違うから、離れてるだけなのだ。
パイが鷹大の腕に手をやった。ナイを負ぶっている腕をつかんだのだ。
「どうしたの?」
「何でもないぞ!」
顔を赤らめ、言い放つ。ちょっと恥ずかしそうなパイだ。
「より鷹大の近くにいた方が落ち着くのだ。ナイを負んぶしているから、オリも近くにいたいと言うか、……。歩きにくいか?」
あどけない瞳を向ける。もしかして、1人離れてると寂しいのかな? しおらしさを感じ、嬉しい鷹大だった。
「そ、そんなことないよ。他の人たちのこともあるから、急ぎ足の方がいいかな?」
嬉しい鷹大も、パイの態度が照れくさかった。
話題を急ぎ足に変えて、弾む心をはぐらかした。
また、パイがハズ目にとらわれていなかったので、安心したのだった。
「そうだな、先を越されてはまずいからな、できるだけ急ぐのだ」
ナイが寝ていることもあって、2人は黙って速めに歩いた。
パイは、鷹大の腕をずっとつかんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます