第7話 第三章 2人の名前は胸の通り(3/4)

【火山弾や溶岩から逃げる途中、鷹大たかひろが巨乳と貧乳のビキニ少女2人の名前を聞いてみる】


 空気が和らいだ。


 鷹大はチャンスとばかり、改めてお願いする。

「ねー、君たちの名前も教えてよ」


「オリはパイだ! パイと呼べ!」

「私はナイですわ。ナイと呼んでよろしくてよ」


 走りながらであるが、2人は案外、あっさりと名前を教えてくれた。


 巨乳の子がパイ、貧乳の子がナイ、……胸の大きさ、そのまんまだった。鷹大はナイを不憫ふびんに思う。


「パイちゃんはいいとしても、ナイちゃんはその名前でもいいの?」


 ナイは思ったより凛としている。

「私に『ちゃん』は不要ですわ。ナイは私の誇りある名前ですわ。おっぱいが『ない』ということでは『ない』ですわ。関係『ない』ですわ」


 聞いてたパイがあざ笑う。

「へー、貧乳だからナイだろう。ピッタリな名前だ!」

 弱点を見つけた顔だ。


「さっき関係『ない』と言ったばかりですわ! このバカ!」

「バカではない! パイだ!」


「パとバは近いですわね! バカパイ! バカパイ! デカ乳バカパイ! バカデカパイ! ハハハ、そのまんまですわ!」

 ナイもやり返した!


 パイが歯をギリギリと言わせる、と。

「うるさいっ! この野郎っ!」


 バタバタッ!

 とうとう、取っ組み合いの喧嘩が始まった。


 パイがナイのツインテールを左右に引っ張る。ナイは片目をつぶって痛みに耐えながら、パイの口に親指を2本入れて左右に広げる。

 引っ張られた上下の唇が、軟体動物のようにレロレロと動いている。


 まるで、子供の喧嘩だ。


 止めなきゃ!

「2人とも、やめろって! 熱い溶岩が来るよ!」


 鷹大は2人の間に入って引き離したが、一瞬、手に柔らかくて心地いいものが触れた。


「オリの胸に触るな! 大事な所なんだぞ!」

 パイが胸をかばっている。触れたのは巨乳な胸だった。


「何が大事な所よ! そんなの、無用な肉の塊ですわ!」

 ナイが憎まれ口を叩く。


「このやろう! オリの胸には宝を見つけるセンサーが入ってんだよ! 鼻より宝をより正確に見つけられる! と思っているんだよ!」

 つかみかかる勢いだ。


 握られたパイの拳を、包み込むように鷹大の手が優しく握る。パイの力が弱まった。

「パイちゃんは、その宝を探しているんでしょ!」

「そ、そうだな。もうここには誰もいない。他の連中は先へ行ってるはずだ。急がねばならんな。

 あと、オリも『ちゃん』は付けなくていい。耳障りだ!」


 再び3人で岩壁に沿って歩きだす。


「ごめん、パイ、手が当って」

「き、気を付けろよ!」

 そう言う割にはパイの印象が違う。名前で呼ばれて角が取れたみたいだ。


「何、カッコつけているんですの! バカパイのくせに!」

 ナイはなんだか、面白くない。1人、ついて行けてない気分だった。


「バカパイじゃない、パイと呼べ!」

「ナイもパイって、呼んであげてよ」


「ふん、気が向いたら、そう呼びますわ!」

 そっぽを向く! すねた子供だ。


「けっ! オリはナイと呼ぶだけで、ナイをバカにしているみたいで、嬉しいよ!」

「名前をバカにしないで!」

 泣きそうな顔になっていた。


 鷹大は仲良くなってもらいたい。

「もう! パイもナイもいい名前だよ。かわいいよ。とっても、似合ってるよ」

 鷹大の思いが歯の浮く台詞を呼んだ。


「ナイはかわいいですの?」

 ナイが、きらきらした目で鷹大を見つめてきた。


 どう答えたらいいのだろう?


 鷹大は弓音と付き合っていたと言っても、日が浅かった。甘えたそぶりの女の子に慣れてない。


「ああ、……かわいいよ」

 よく分からないので、そのまま返した。


 でも効いた。ナイは両手をほっぺたに当てて、顔をほころばす。


「私はかわいいんですわ! パイよりも!」

 嬉しそうな仕草がかわいいが、パイと比較しているようだ。


 聞いていたパイは、少々不安を感じていた。

「オリはどうだ? パイもかわいいか?」

 パイが鷹大の顔を見上げながら近寄ってきた。


 答えは同じがいい。喧嘩になる。


「うん、パイだって、かわいいよ」

「ナイよりもか?」

 鷹大に比べろと言うのか? 比較なんてできない。できっこない。


「2人とも同じくらいだよ」


「くそーっ! 同じくらいとは悔しいぞ!」

 特にナイには突っかからなかったので、鷹大はホッとする。


 でも、同じくらいと言う言葉に、ナイが黙っていなかった。

「悔しいのはこっちですわ! 大きい胸はかわいくありませんわ! 垂れた胸なんて全然かわいくありませんわ!」


「オリの胸は垂れてないぞ!」

 プルンッ!

 胸をナイへ向ける。


 ナイはチラッとパイの胸を見る。

「そのビキニのトップで吊って、ささえているのですわ!」


「違う! オリの胸は張りがあるんだ! 重力にも負けてないぞ!」

「強がりですわ!」

「そんなことない! よく見ろ!」


 シュッ! シュッ! ハラリッ!


 パイが首と背中の紐を解き、……


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