第8話 第三章 2人の名前は胸の通り(4/4)

【2人のビキニ少女は、それぞれ巨乳はパイ、貧乳はナイという名前であり、胸のサイズどおりだった。パイに名前をバカにされたナイは、巨乳は垂れていてかわいくないと言う。反論したいパイは首と背中の紐をほどいたのだった】



「そんなことない! よく見ろ!」


 シュッ! シュッ! ハラリッ!


 パイが首と背中の紐を解き、……ビキニトップを取ってしまった!


 タップン タップン


 パイの胸は歩調に合わせてリズミカルに、プリンかゼリーが浮き上がるかのように揺れて、余裕で重力に対抗している。先端もツンと少し上を向いていて、鷹大には誇らしげに見えた。


「見ちゃいけない! 男の前で裸にならないでよ! しかも歩きながら、……。ゆ、揺れ、揺れて、あ、危ないよ!」


 鷹大は揺れに合わせて目が上下するほどに見てしまったが、慌てて逆を向く。


「鷹大、裸ではないぞ! 下は脱いでないぞ!」

 あっけらかんと、パイが言い返してきた。


 でも、鷹大はパイを見れない。見ないままで答える。

「上は裸だよ。男は見ちゃいけないんだよ! 早く水着を着けてよ!」


 見たいが見れない! 鷹大は足を止め目をギュッとつぶって、我慢という刃物を自らの心に突き立てる。


 鷹大の態度を見たパイは気付いた。

「まあ、男なら誰でも見せていい、ってものではないな。でも、時々男に見てもらいたいと思う時があるのだ。今がその時と思ったのだ」

 女の子って、そんな風に思うこともあるのか……と、鷹大は知らない世界を覗いた気分だ。


 とても容認できないのは、ナイだった。


「下品ですわ! 男に胸を見てもらいたいだなんて! すっごく下品ですわ!」


 その慌てた口ぶりに、パイはナイがうろたえていると思った。

「ナイはみっともなくて、男には見せられないんだろう。ざまみろ!」


「キーーーーーー、悔しい! 女の魅力は胸ではございませんし、そのデカさは男寄せの道具に過ぎませんわ。ただの誘蛾灯ゆうがとうですわ!」


「悔しがってる、悔しがってる。見ろ! 見ろ! ほれ、見ろ!」


「そんなに揺らしながら、顔に近づけないでくださいませっ! き、気持ち悪いですわ! ブニョブニョなデカ乳なんてっ!」

「ほー、平常心を装っているな。ほ~ら、柔らかいだろう。もっと堪能させてやるぞ~」


 鷹大には声だけである。

 見たいが見れない。想像力が全開となり、理性が危ない!


「パイッ! 早く水着を着てよっ!!」


 パイは大人に怒鳴られたようで、思った以上にびびった。


「わ、分かった、着けてやるぞ。鷹大は男なのに変なやつだな。女の胸が好きじゃないのか?」

 不思議でたまらない。


「見たいけど、見ちゃダメなんだよ! 俺のいた世界では、男が見ると助平の烙印を押されるんだ。だから、俺は見ないんだよ!」

 鷹大は優等生ぶった。


 パイに嫌がらせを受けていたナイも、鷹大が不思議だった。

「変な鷹大ですわ。見せているのですから、見ればよろしいですのに。ここは鷹大の世界ではないですわ。もっと自由に考えれば、よろしいでは?」


 ナイの声に後光が差していた。

 鷹大には目からウロコである。


「そっかっ! ここは日本じゃないんだっ! それに、俺は死んでるから、見るくらいなら、弓音もきっと、許してくれるよ!

 パイ、やっぱ見せて!」


 鷹大は目どころか、顔全体を輝かせてパイを見た。


「もう、ビキニを着けたぞ! 鷹大がそうしろと言っただろう」

 プルルン祭りは終わっていた。ビキニの布が巨乳を覆っていた。


「えー、やっとその気になったのに、ちょっとだけでいいから、もう1回見せてよ」

 鷹大のHな気持ちが目から溢れて、変に輝いている!


「助平だな! その目を見ると見せたくなくなるぞ。近寄りたくない目だ! そんな目のやつには見せんのだ!」


「お願いだよ~! 1回でいいからさあ~」


 パンッ!

 すがろうとする鷹大の手を、パイが払いのける!

「そんな助平な目つきの男に、見せるわけないぞ!」


 ナイも呆れる。

「鷹大には無駄な理性が働いていたようですわね。鷹大ってバカですわ!」


「男は女よりバカなのだ! バーカ、バーカ!」

「そのようですわね! バーカ、バーカ!」

 幼稚な2人にバカにされた。


「悔しいけど、俺がバカだった。見れるチャンスだったのに、……」

 鷹大が唇をかみ締める。


「そうだ! 鷹大はバカで助平なのだ! よく分かったぞ!」

「返す言葉がない……」 

 鷹大はギュッと目をつぶる。


「ハハハだぜ!」

「フフフなのですわ!」

 目を開けると、ナイとパイは顔を合わせて笑っていた。


 仲良くなってる。バカにされたけど、それでよかったみたいだ。

 鷹大は安心した。


 でも、馴れ合ってると、すぐに2人は反目のポーズとなる。鷹大は仲良くしてもらいたい。

「喧嘩しないで仲良くしようよ。時間も無駄になるよ」


「そうだな。馴れ合わないが、遅れを取るのは嫌だな。他のやつに先を越されてしまう」

 パイはキッと進行方向を見て歩き始めた。

「そうですわね。他のライバルに追いついて、追い越すのですわ!」

 ナイも前向いて一緒に歩く。


「オリが1番に宝を手に入れてやる!」

「私が1番ですわ!」


 そんなパイとナイの後を鷹大が続く。


「2人とも宝に対する意気込みは、溢れちゃうほどにあるみたいだね」

「当たり前だぞ!」

「生き残るためですわ!」

 2人とも本来の目的に帰っていた。

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