第6話 第三章 2人の名前は胸の通り(2/4)【中規模修正有】

【巨乳と貧乳のビキニ少女2人と鷹大たかひろは、火山弾や溶岩から逃げていたが、岩壁に逃げ道を塞がれてしまう。ビキニ2人は岩壁に沿って同じ方向へ走るので、鷹大はその後についていくことにした。他にいた大勢の水着たちと合流するのかと思ったら、2人の目的は宝探しであり、その宝を手に入れないと死ぬと言う。宝とは、いったい、どんな物だろうか?】

【中規模修正を入れております。そのまま読んでいただいて全く支障はございません。修正前の文章が気になる方は、作品冒頭の紹介文にある【修正箇所】の欄をご覧ください】



「探している宝って、何? どういうモノなの?」

 鷹大は率直に聞いた。


「知らん!」

 キッパリと巨乳の子!


「知らないの?」


「どんなものか知らないだけですわ」

 貧乳の子も同じようだ。


「知らないのに探し出せるの?」

 もっともな疑問である。


「匂いで分かるのですわ。いい匂いをたどれば宝に行き着くのですわ」

 『匂い』とか、『いい匂いをたどる』とか言っている。


 鷹大は、宝とは金目の物とは限らないと理解はしている。しかし、『匂う宝』というイメージが湧かないために、不安を感じていた。

 自分の鼻でクンクンと、確かめるように辺りの匂いを嗅いでみる。


「匂いなんて俺には分んないな。俺が今感じるニオイは硫黄臭(硫化水素臭)かな? 火山のニオイしか分からないよ。2人は今も、いい匂いを感じてるの?」


「感じてますわ! だからこっちに進んでいるのですわ!」

 貧乳の子は自信満々である。


「宝って食べ物なの?」

 鷹大はいい匂いから美味しい物を連想しいた。


「だから、知りませんわ! 食べ物かどうかも分かりませんし、どんな物かなんて、考えてもみませんわ。いい匂いに向かって進む! 匂いの行き着く場所に宝がある。ただ、それだけですわ!」


 鷹大は自分の不安が、何であるのかが分かった。

「どうして、いい匂いが宝だって、信じて進めるの?」

 頭から信用している不安である。

 どんな物かも知らない宝なのに、匂いをたどれば見つけられる……、言い換えれば『いい匂い=宝』であると、信じ切っている不安である。


「オリは知っている。いい匂いへ進めば宝があるのだ! 信じる理屈なんて、ある訳がない!」

 巨乳の子は『いい匂い=宝』を、丸呑みしているようだ。

「いい匂いがする方向へ、行きたくて行きたくてたまらないのですわ。しいて言えば、本能ですわね」

 貧乳の子からは本能という言葉が出てきた。


 巨乳の子も便乗する。

「そうだ、その本能だ! オリは本能から匂いの強い方へ進むのだ!」


 この2人が持っている本能なんて、鷹大に理解できるハズがない。

 『いい匂い=宝』という認識は、そんな本能的な価値観から始まっているようだ。本能と言うのなら、2人と同じように呑み込むしかないと、鷹大は思った。2人の価値観を信用することにしたのである。


 鷹大は信用ついでに便乗する。

「俺もその宝を見つければ、生き延びられるかな?」

「存じませんわ!」

「知らん!」

 2人同時に、これもキッパリと答えた。


「そ、そんな、……簡単に」

 鷹大は希望を断たれた思いだ。


「お前は違う人間のようだ。オリなんぞに分かる道理がない!」

 意地悪ではなく、本当に知らないようだ。鷹大は大きさから同じ人間ではないようなので、仕方なく納得することにした。


「そうか。でも今は、溶岩からは逃げたいよ。一緒に連れて行ってよ」

 宝は仕方ないにしても、当面は溶岩である。すがる思いで頼んだ。


「私は宝がある目的地へ向かうだけですわ! あなたのような大男の面倒なんて見ませんわ! 男が好きなデカ乳について行くとよろしいですわ」

 そう言うと、貧乳の子は走りながら、巨乳の子の肩を小突いた。


 巨乳の子が、ちょっとよろける。

「オリも大男の面倒なんて見ないぞ!」

 と、巨乳の子が小突き返した!


 喧嘩になりそうだ。鷹大は走りながら2人の間に割って入る。


「2人は俺の面倒なんて見なくていいからさ、一緒について行っていいだろう?」

「勝手に後ろからくっついて来るのはいい、だが、邪魔はするな!」

 巨乳の子は走りながら、鷹大を睨む。


「邪魔なんてしないよ……」

「宝を見つけたらオリのものだからな! お前などにはやらんぞ!」

 さらに、目に力が入ってる!


 鷹大は、宝が死に関わるのなら、独り占めして欲しくないと思った。

「宝は分けられないの?」


「知らん! どんなものかも知らんのだ。分けられるかどうかも知らんし、幾つあるかも知らん! それに、他人と宝を分けるなんて、あるわけが無い!」

 巨乳の子は、プイッと前を向いた。


 鷹大には、知らない人でも死んで欲しくない思いがある。

「他人か。でも、宝はたくさんあるといいね。そうすれば大勢が助かるよ」


 貧乳の子が呆れた声を出す。

「おめでたいですわね。そんなことを考えていると死にますわよ! 甘い考えは身を滅ぼしますわ! ここには同郷の人たちもいますけど、宝を分けることなんて、絶対にありませんわ! 私以外の全員は蹴落とすライバルなのですわ! ここは地獄のような所ですのよ! この大男!」

 地獄、鷹大が考える以上に厳しいようだ。


 地獄なのは仕方ないにしても、鷹大は大男と呼んで欲しくない。

「あのー、3人で逃げるなら、名前くらい教えてよ。俺は弥陀ヶ原みだがはら鷹大、鷹大と呼んでよ。君たちの名前は?」


 巨乳の子は不快そう。

「3人で逃げるなんて言ってないぞ! 鷹大が勝手に言っているだけだ!」


「ありがとう」

 鷹大は嬉しかった。


「ありがとうだと? 何を言っている!」

 巨乳の子がキョトンとした顔を見せる。


「俺を鷹大と呼んでくれたでしょ」

「鷹大がそう言えと言ったからだ」

「素直に聞いてくれて、嬉しかったんだ」

「何を言っている! そんなの当たり前のことだ。……て、照れるぞ」

 巨乳の子は顔を赤らめ、表情を和らげた。プルンプルンと走りながら揺れる胸の割には幼く見えた。


 空気が和らいだ。


 鷹大はチャンスとばかり、改めてお願いする。

「ねー、君たちの名前も教えてよ」


(注:ビキニの2人は『鷹大』の漢字を知りませんが、ここでの表記は漢字に統一します。ご了承願います)



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