他人鎖 心動きて ガラガラと

 私の右手を縛るもの

 それは言葉の鎖だろう

 右手を僅かに動かすと

 ジャラッと大きな音が鳴る

 「お前はホントに賢い子

 お前はとっても立派な子」

 ああこれはおっかさんの声だ

 ああこれはおっかさんの鎖だ


 私の左手縛るモノ

 それは言葉の鎖だろう

 左手僅かに動かすと

 ジャランと大きな音が鳴る

 「君はいつでもひょうきんもの

 君がいるだけで面白い」

 ああこれは友人の声だ

 ああこれは友人の鎖だ


 私の両足縛るモノ

 それは言葉の鎖だろう

 右足わずかに動かすと

 ガラガラ大きな音が鳴る

 「あなたはとっても優しいわ

 あなたは私の王子様」

 ああこれは恋人の声だ

 ああこれは恋人の鎖だ


 私の身体は縛られてる

 私の身体は囚われてる

 私の四肢に自由はない

 私の四肢に力はない

 身体を動かせば音がする

 鎖が鳴らす音がする

 うるさいうるさい音がする

 うるさくうるさく響いてる

 もう動くことをやめようか

 私はもう、耐えられない


 辺りはしんと沈んでる

 周りはしんと沈んでる

 暗闇だけがそこにある

 静寂だけがそこにある

 今どこにいるのか分からない

 今どこにいたいのか分からない

 ただしんと沈む中

 私は一つ、音を聞いた


 それは鎖の音ではない

 それは誰かの声ではない

 それは私に響く音

 それは私に満ちる音

 聞こえる聞こえるその声が

 聞こえる聞こえるその声が

 私はずっと知っていた

 私はちゃんと知っていた

 私に眠る祈りの声を

 私を醒ます命の声を


 ドクンドクンと脈を打つ

 ドクンドクンと脈を打つ

 凍えたからだが熱を持つ

 震える呼吸を熱を持つ

 ああ、今なら歩き出せる

 僕はきっと、歩き出せる


 私の心を決めるモノ

 それは言葉の鎖だろう

 身体を確かに動かすと

 トクトク大きな音が鳴る

 「私は誰より勇敢だ

 私は独りで道を行く

 もう誰にも従わない

 ここが私が歩む道だ」

 ああ、これが私の声だ

 ああ、これが私の言葉だ


 私は身体に力を込め

 私を縛る鎖を断つ

 私は身体に力を込めて

 私を縛る鎖を切る

 さあ、もう私は縛られない

 さあ、もう私は従わない

 歩き出そう、私の道を

 歩き出そう、私のセカイを


 私は一歩踏み出して

 

 身体を支えきれず

 無様に転んで死んだ

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