石動久弥と子どもたち

 ――石動久弥は変わり者だ。


 FHから、そう称されていることは知っている。しかし、久弥はそんな自分を改めるつもりはなかった。そんな自分のことを案外気に入っているし、なにより。


「(こいつらには、居場所が必要だ)」


 視線を落とした先には、久弥の膝を枕に眠る子どもたちの姿があった。

……彼らは、UGNでは保護することのできないオーヴァードだ。

覚醒の際に多くの人間に危害を与え、危険視された者。

常に侵蝕率が高い状態で安定してしまっており、ジャームと認定された者。

他にも、様々な理由で保護を受けることが難しい人間が、ここにはたくさんいる。

子どもだけではなく、社会人として働いているような青年から、寝たきりの状態で動けない老人まで。……本当に、たくさんの人間が。


 久弥がいるのは、彼が協力者を通して経営している施設だ。ここにいる人間のほとんどが、久弥が外から拾ってきた――もとい、保護してきた人間である。


 久弥は彼らにレネゲイドの訓練を施し、独り立ちを願う者は送り出し、そのまま保護を求める者は面倒を見るといったことを行っている。中にはFHでエージェントとして働く者もいるが、保護してきた人間のほとんどは、久弥の保護のもと安寧の日々を送ることを望んだ。眠る子どもたちもその中に入る。


「(やっぱり、ガキが自由に生きられないっていうのは違うもんな)」


 子どもたちの頭を撫でながら、思う。子どもは、守られるべきだ。

守られなかった子どもたちを、実際にこの目で見たことがあるからこそ、そう思う。

――自分や、妹がそうであったように。

救いは、もたらされるべきだと。


********


「……んぅ」

「ひさやー、おはよう」


 子どもたちが目を擦りながら起きだしてくる。もう昼寝の時間は終わりのようだ。

ポン、と頭を叩いてやり目覚めのあいさつをする。


「おう、おはよう。顔を洗ってこい」


 きゃー、と駆け出す子どもたちの背中を見送りながら。

石動久弥の何でもない日常は、過ぎていくのだった。

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