小話

春夏冬真人の原点

 春夏冬真人は両親に愛されなかった子どもだ。

父親は、平等な世界を創るためにUGNを裏切りFHエージェントとなった。

母親は、一族から没落した家のために父と結婚し子どもを産んだ。


 真人は母の期待を背負って生まれてきた。

春夏冬家に“秋”の名を取り戻すため、強いサラマンダー能力を求められて。

奇しくも、真人は望み通りサラマンダー能力を持っていた。

……しかし、真人はウロボロスだった。

生み出す炎は黒く染まり、周りのレネゲイドを取り込むことを得意とした。

――期待した“秋”には相応しくない。

母は、真人の養育を半ば放棄した。


 父は平等な世界を求めるFHエージェントだ。彼は真人を愛してはくれた。

――父の掲げる、平等な愛を。

助けを求める見ず知らずの人間か、真人か。……そんな時に父は真人を選んではくれなかった。


********


 ふと、目を覚ます。

周りを見渡すと、いつもと変わらぬ自分の部屋。

……父も母も帰ってくることはない、自分ひとりの家。


「……懐かしい夢を、見ていた気がする」


 自身の原点。

――『愛されたい』『愛してほしい』


 でも、この夢が叶うことが難しいのは知っている。

……痛いほど、理解してしまっている。


 だから――、


「そんな世界を、僕が創らなきゃ」

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