第10話 内なる本能
ーシンの団アジトー
「お母さん!!」
大聖堂のような大広間に出て、奥にお母さんがいるのを確認した。お母さんは横たわって眠っている…
「なんだ、結構早かったじゃないか。」
長くなびいた銀髪の男が横から出てくる。この男がレクス…!
「お願い…お母さんを返して!!」
「返せと言われて返す奴らに見えるか?」
「テメェら…カトラに手出してねぇだろうな…?」
「安心しろ。この女には手を出していない。少し眠ってもらってるだけだ。」
お父さんは今までに無いほどの怒りを堪えている…私も怒りが爆発しそうだけど、ここは落ち着いていかなくては…
「これが俺達の最後の賭けだ。この女を賭けて勝負といこう。」
「テメェを完封無きまでに叩き潰す!!クロウ!!」
「了解です!」
シュン…
ジャラッ…
レクスの武器は鎖の付いた錨…あんな巨大な錨を軽々と振り回すのか…!?
「レイヴ!!」
「はい!」
シュン…
「やれやれ、二人がかりでは少々骨が折れるな。」
ビュンッ!!ガシャアン!!
「のわっ!!」
巨大な錨をまるで軽い鞭を振るうかのように投げ飛ばす。
「接近は無理だよ!銃で行こう!」
シュン…
パァン!!パァン!!
「おっと危ない。」
ガコォン!!
「錨を盾代わりに!?」
なら…二人でかかれば…!!
「レイヴ!体術だよ!」
「分かりました!」
そのまま猛スピードで突撃する私達…だが…
「大人しくしとけ。」
パチィン!
「うあ……あぁ…」
「レイヴーーーー!!!」
そんな!?指を鳴らしただけでレイヴが眠らされた!?
「俺の能力は「睡眠」だ。この能力で相手は俺が自由に眠らせることが出来る。」
「カトラが今眠ってるのもお前の能力ってことか…!!」
「そうだ。そしてこの能力で眠らされた者は俺の意思でしか目覚めることは出来ない。」
意思でしか目覚めないって…それって永遠の眠りにつくというのと同じじゃない!
「そろそろ俺も時間が無いんでな。この女の「力」を吸収させてもらう。」
「力!?一体何のことだ!?」
レクスはお母さんに手のひらを向けて赤い謎のオーラを吸収していく…
「これだ…この力だ!!今こそ俺は人間を捨て、強靭な者へと進化する!!」
ズドォォォン!!!
「な、何!?」
すさまじい衝撃波が走り、レクスに目をやるとそこには今まで人間の姿であったレクスの右半身は異形の怪物へと変化していた。
「もしかしてその力は…カトラの…!!」
「そうだ。この力は「吸血鬼」の力。もはやこの女はただの脆い人間よ。」
「レクスッ!!!テメェだけは絶対に許さねぇ!!!」
「何を言う。お前の妻を人間にしただけではないか。どこか気に食わないところがあるのか?」
「あぁあるさ。たんまりな…!!カトラは吸血鬼を自分の誇りだと思っていた…父親から受け継いだ誇りだってな…だがテメェはそれを平気で奪ったんだ!!!」
お父さんがこんなに激昂したのは初めてだ…
「ならば…力付くで奪ってみせろ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガキィン!!
「お父さん!!」
長く特化した異形の右腕でいともたやすく跳ね返されてしまった…このままではお父さんが…!
ブゥン…
「終わりだ。」
「やめてっ!!!」
鋭い拳が降り下ろされる…ダメだ!!間に合わない!!
「ラルス様っ!!」
ドスッ!!
「クローーーーーウ!!!!」
まさか!?クロウが…!?
「あぁ…そんな…!!死ぬな!!頼む…頼むから…!!クロウ…!!」
いくら揺すってもクロウは目を覚まさない…殴られた時の衝撃で口からは血が出ている。本当に…クロウは……
「ああ…うっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ズドォォォン!!
もう私、化け物になっても良いや。レクスさえ殺せば…もう私は家族といられるなら化け物になっても……
それで…良い……
「セリド…?お前までレクスと同じように……」
もう何もかも捨てていいんだ。私は今まで無理をしてきたんだ。右半身が化け物でレクスと同じでもこれが本当の「私」なんだ。じゃあまずはコイツをグチャグチャにして…
命を、食ッテヤル。
続く。
次回のロスト・メモリーズⅡは
「グラァウ!!」
「俺とは違う…暴走している!?」
「こんなの…本当のセリド様じゃありません!!」
「この本にイチかバチか…賭ける!!」
次回「本当の自分」
「言っただろ、いつでも力を貸すってな!!」
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