第7話 自身がすべきこと

「待ってぇぇぇぇ!!!」

ドガァンッ!!

金属の鈍い音が周囲に響き渡り、上を見上げるとそこには信頼している男性の姿があった。

「セリド、大丈夫か。」

「ドメイクさん!!」

ドメイクさんがコンテナを大剣で吹っ飛ばしてくれた。あんなものぶつけられたら確実に死んでたな…

「何!?あなたも邪魔をするの!?」

「俺は邪魔をしに来た訳じゃない。落ち着いてくれ。君はセンの娘…スズカだな?」

「何で…私の名前を知ってるの…?」

「俺は彼女の姿をよく覚えてる。赤ん坊だった頃の君を知っているからだ。」

ドメイクさんがスズカを知っている…!?

「でもママもパパも私を捨てた!!」

「それは違う!!」

「!?」

「センはな、決して人を捨てたりするような人間じゃない!!今でもお前をここに置いたことを悔やんでいるんだ!!」



ー15年前ー



ガチャ…

「失礼する。」

「来てくれてありがとうドメイク、これ…見て。」

「産まれたのか、ついに…」

センの腕の中では小さな命が父と母に見守られながらすやすやと眠っている。

「俺もひやひやしたよ。一日中センに付きっきりでね。」

「良い夫婦だな、お前達は。」

「でもね…私は悲しい…」

「どうしてだ…?」

センは手で顔を覆い、泣き出してしまった。

「この子とずっと過ごすことは出来ない…いつかはここに置いていかなければいけないのだから……」

「セン…」

「今のゼネルは抗争が激しくなっている…家族で過ごしていてもいずれは見つかって、皆殺されてしまうかもしれない…だから、いつかは安全なここに置いていかなければいけないの…」

センの中には、産まれたばかりの小さな命を手放したくないという思いだけが感じとれた…

「ごめんなさい…スズカ…こんな運命を辿らせてしまって…大きくなったら、いつかまた…会おうね…」




「彼女は君に何度も「ごめんなさい」と言っていた。そして手厚く保護するかのようにまだ小さかった君を抱いていたんだ。」

「そんな…!」

「これで、信じてくれるか…?」

カチャン…

愛刀である桜雨を手放して、スズカはその場に膝を落としてしまった。

「私は…私はママとパパに何てことを…!!やっぱり…嘘なんかじゃ無かったんだ!!」

「ようやく気付いてくれたみたいだな。」

「ごめんなさい…あなたの言うことが正しかった…本当に…」

スズカは我にかえって私に謝罪をしてきた。これもまた、ドメイクさんのお陰…なんだよなぁ。



「あぁー何か感動のシーンっぽいけどぶっ壊して良いか?」



「誰っ!?」

乱れたような黒いスーツを着た男…シンの団の人間…!!

「よぉ~!殺しに来てやったぜ!」

その言葉を聞いた瞬間、私の全身が凍りついた…この男と戦ってはいけない。この男と戦ったら皆殺しにされる。と私の体がそう警告しているみたいだ……

「お前…何者だ。」

「俺はシンの団の戦闘員、強欲<グリード>のガレウスだ!!今日はそこにいる調子に乗ったガキ共をぶっ殺しに来たぜ!!へへ…」

「子供達に手出しはさせん!!」

「お?やるねぇ~オッサン。だが最初に言っておくぜぇ?俺、ムチャクチャ強いからよ!!」

シャキン!!

鋭い爪を装着したガレウスは今にも突っ込んでいきそうな勢いだ…!

「私も戦う!」

「ありがたいが、無理はするなよ。」

「セリド様、私達も一緒に戦いましょう!」

「……………」

「大丈夫ですか、セリド様!?」

レイヴの呼び掛けにも答えられない…唇が震えて言葉を発することが出来ない…

「こ…わい…」

ようやく言葉を発したが、出てきたのは恐怖に怯えた言葉だった…

「大丈夫です…怖いのはお互い様ですよ。セリド様だけに怖い思いはさせません。「私はいつでもお側にいます」と前に話しましたよね?」

レイヴに抱かれてこの前のことを思い出した。あの時と同じ、暖かい安らぎを感じる。まるで凍りついた全身を溶かしてくれるかのような…優しい暖かさを…

「ありがとう、レイヴ。行こう!」

「はいっ!」

シュン…

「ようやく本調子か?まぁ殺す奴は動き回ってるのがお似合いだけどな!!」

もうこんな言葉を聞いても怯えたりしない!今の私にはレイヴや他の皆が付いているから!

「んじゃあ、手始めにそこの賞金稼ぎちゃんからぶっ殺してやろうかな!?」

ガキィン!!

「あ?何だオッサン。邪魔すんじゃねーよ。」

「言ったはずだ。子供達に手出しはさせんとな。」

「オメー…調子に乗ってんな。んじゃ死んでくれよ!!」

「今だ!!セリド、スズカ!!」

ドメイクさんに言われ、交戦しているガレウスの背後をスズカと攻撃しようとする。

「はぁっ!!」

「せいやぁ!!」

スッ…ガチャン!!

「はい残念~!左の爪はまだ生きてるんですぅ~!」

「くっ……」

左に装着された爪がまだ生きていることに気づかず、反撃を食らってしまった。

「よそ見してるな?」

「何?ぐぼぉえっ!?」

やった!私達に気を取られてる間にドメイクさんの拳がガレウスの顔面に!

「ちっくしょお…今のは結構効いたぜ…」

「どうした?俺達を殺すんじゃなかったのか?」

「テメェら絶対許さねぇ…!!俺はな…こうやって調子に乗ってる奴が大っ嫌いなんだよォォォォォ!!!」

「バカね。」

ササッ…

「クソッ…!あのガキ、どこに消えやがった!?」

スズカが神速並みの脚力で走り回っていることにガレウスは気付いていない。私も思う…




こんな「バカ」に怯えさせられてたなんてね!!




ササササッ……

「見えたッ…そこだァ!!…」

ブゥン…

「何ッ!?」

奴はいくつもの残像を暴れながら攻撃している。何とも哀れな姿だ。

「ハッ!!」

バシュバシュバシュッ!!

「オイオイ、そんなもんで本当に斬ったつも……」

スッ…

「秘刀の舞、奥義……」





「『桜ノ雨』。」





カチン。

ザシュザシュザシュッ!!!

「………ッ……」

バタン!

鞘に刀を納めたと同時に発生した斬撃の雨あられを食らい、ガレウスは言葉を交わすことなく息絶えた。

「凄いよ!スズカ!今のどうやったの!?」

「ママからちょっとだけ教えてもらった技!」

ガレウスを倒し、歓喜に浸っている私達の横で、ドメイクさんは静かに微笑んでいた…




「ねぇ、あなた達はこれからどうするの?」

「ひとまず自分の世界に戻って、また新しい世界に行くかな。スズカはどうするの?」

「私は探してみる。家族を…ね。」

「そっか!見つけられると良いね!」

「今日は本当にありがとう。セリド達がいなかったらまだママとパパのこと恨んでいたかもしれない…真相のこと気づかせてくれてありがとう!」

「お礼は良いよ!私も、平手打ちなんかしちゃってごめんね!」

「また…会えると良いな。」

「いつかまた、きっと会えるよ。私達はいつでも行くから!」

ガチャ…

バタン。


ーシンの団アジトー


「何だと?ガレウスもついに殺られたのか?」

「あぁ、身体中に何千もの切り傷を付けられてな。」

「シンの団壊滅も近いということか…」

「おい、そう捉えるのはまだ早いぞレクス。まだ俺達が残ってる。それに、あの「計画」を実行すればお前は人間を捨てて超人的な力を得る…」

「やむを得ない…直ちに計画を実行するしかなさそうだな。」


ーセリドの部屋ー


ガチャ…

「セリド様。」

「どうしたの?レイヴ。」

戦いに勝ったというのに、レイヴの表情はどこか不安げだ。

「言おうかどうか迷いましたが…」

「何?」

「私はセリド様のこと愛しています。どうか私とお付き合いしていただけませんか…?」

こ、告白された……どうしよぉ…別にレイヴのこと嫌いじゃないんだけど…うーん…

「ほ、本当に私のこと好きなの?」

「はい。私の言葉に嘘はありません。」

レイヴは本気で私のこと愛してくれてるんだ…そう思うと、また心が安らかな気持ちになる。キスをされた時や抱かれた時の暖かさの正体がようやく分かった気がする。それは、私もレイヴのこと好きだからなのかもしれない…

「レイヴには何度も助けられてるし…私のこと本当に好きなら…その…恋人にしても良いよ…?」

言っちゃった…ついに言葉にしてしまった…

「ありがとうございます!では、これからは恋人として、そしてセリド様に仕える者として精一杯お務めします!」

こんな無邪気にはしゃぐレイヴを見たのは久々かも…やっぱり執務とか完璧でも根は年頃だし…何だか可愛いなぁ…

続く。



次回のロスト・メモリーズⅡは

「私達、付き合うことになったから。」

「ぶーーーーーッ!!!」


「陰陽師の世界……」

「ここでは最強と言われる陰陽師がいるそうですね。」


「お前がこの世界を乱そうとしている奴か?」

「私達はそんなことしないよ!!」

次回「陰陽師の世界」


「見せてやる…陰陽師の力をな!!」

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