第5話 舞踏の世界
「次は…舞踏の世界だって!何だかロマンティック~♪」
「年がら年中城で舞踏会を開くという世界ですか…会うべき人物は?」
「えーと、マヤ・オルフェンっていうお嬢様みたい。」
次にいく舞踏の世界についてレイヴと話し合っていた。
「ではセリド様、お着替えの時間です。」
「あ、もう行くんだね…」
ー数分後ー
「ちょ、何で私ドレスじゃないの!?」
「今回、セリド様には「男の子」になってもらいます。」
「男の子!?何で男装する必要があるの!?」
てっきり綺麗なドレスを着て舞踏会にでも出るのかと思いきや、着せられたのはレイヴと同じような執事服…髪の毛も短く纏められたのは男の子に見せるためか…
「マヤ・オルフェン様は変わった執事が好みなそうなので、セリド様には男の子になってもらって一緒に踊ってもらいます。」
「それにしたって…男の子の格好なんて初めてだよぉ…」
「今のセリド様も美しいですよ。私は好きです。」
「またレイヴはそうやって……」
レイヴは幼い頃から私のことが好きみたいで度々告白を受けていた。私はレイヴのこと嫌いではないんだけど……レイヴは私に仕えてるし、どうなのかな…
「この姿をご両親に見せてはどうですか?」
「えっ!お父さん達に見せるの!?」
「きっと感心してくれますから。大丈夫ですよ。」
そこまで言うなら、見せても良いかな…
ーリビングー
「あら、16歳の時のラルスに似てるわ…!」
「俺こんなんだったか?」
「迎いに来てくれた時とか凄いこんな感じよ。」
私の格好を見ての感想これっ!?お父さんにそこまで似てるの!?そもそも性別違うんですけど!?
「とりあえず、異変解決しに行くよ。」
「行ってらっしゃい。」
「では、行って参ります。」
ガチャ…
バタン。
「やっぱり初めて会った時のラルスに似てるわ。あの子…」
「その話はもういいよ。」
ー舞踏の世界ー
「うわぁ…大きなお城…」
「ここが今回会うべき人物がいる城ですね。早速乗り込みましょう。」
ー中央ホールー
大きなホールにはドレスを着た女性達が男性達と自由に踊っていた。
「私達は執事達の元に並びましょう。」
きちんと整列している執事達の横に並び、誘いが来るのを待つ。
「マヤってお嬢様は確かにいるみたいだけど…」
ボブカットの髪の女の子…あの人がマヤに違いない…そんなことを思っていると…
「あなた、私と踊ってくださらない?」
「はい、喜んで。」
「あっ…レイヴ…」
女性からのダンスの誘いに乗ってレイヴは行ってしまった…何だろう、この感覚…レイヴが行っちゃった時に不思議と寂しいような感覚になってしまった…もしかして私は嫉妬しているの?いやまさかそんな…
「あのー…」
「は、はい!」
突然のことに私はびっくりしてしまった。
「マヤ・オルフェンと申します。私と踊ってくれます?」
来たぞ来たぞ…!レイヴの言う通り向こうから来てくれた!
「喜んで。」
「ふふ…ありがとう。」
「………」
「………」
ヤバイ…身を任せて踊ってるけど、私達のこと話さなくちゃ…
「ねぇ、あなた。」
「はい?」
「あなた…男じゃないよね。」
「!?」
「やっぱり…そんな驚き方するってことは女なのね。でも大丈夫、このことは誰にも言わないから。ただ…」
「ただ…?」
「何故男装までして乗り込んできた理由を教えてくれる?」
まさか、自分から話す機会を与えてくるとは…これは果たしてラッキーなのか?
「…分かりました。少し人目のつかないところでお話しましょう。」
ー控え室ー
「ここなら大丈夫よ。さぁ話して。」
「お嬢様…実は私達は外の世界から来たんです。」
「外の世界?」
「はい、もうじきこの世界にやって来る「異変」を止めるためには会うべき人物に出会わなければいけないんです。」
「なるほど…私に会うためにこの城を…」
「本当に申し訳ありません…このようなことを…」
男装してまで乗り込んだ意味はあったのだろうかと今に思ってしまう。どっちにしろ、今はマヤを説得しないと…
「さっきも言ったでしょ、このことは誰にも言わないからって。それに、外の世界の人って本当にいることが分かったんだから。」
「ありがとうございます…!」
許されないことをしたかもしれないのに…この人の懐はどれほど大きいんだ…!
「もう出ていいよ。その異変ってやつを止めに行ってね。」
「はい!行こう、レイヴ!」
「了解しました。」
ー城外ー
城の外へ出ると、見覚えのある黒服の男がそこに立っていた。
「よっ、久々だな。」
「ルプス…!」
「おいおい、そんなピシッとした格好で怖い顔すんなよ。」
「今回の異変はあなたが引き起こしてるの!?」
私が問いただすと、彼は軽くあしらうように鼻で笑って言った。
「わざわざ俺が魔獣を召喚して異変を起こしてやってんだ。感謝しろよ。」
「まだそんな減らず口を…!」
「異変を起こさなきゃお前らの仕事は無いのも同然だろ。目的がある方が幾分マシだ。」
人々を危険に追いやって…そんな顔していられるなんて…!!
「それと、今度お前を殺したくてたまらない奴がいるそうなんだ。」
「何ですって…!?」
「まぁいずれ分かるさ。んで、俺をどうする?」
「戦うに決まってるでしょ!レイヴ!」
シュン…
戦闘態勢に入ったところで気づいた。ルプスが持っていた、魔獣や人物を召喚するための「記憶の本」が無いことに。
「あなた…本はどうしたの…?」
「本はあいにくどっかに置いてきちまってな。別に今は本があろうが関係ないけど。」
スッ…カチャ。
ルプスは懐から拳銃とナイフを取り出して構える。
「今どき「本体が弱いからいける」なんて考えは古いぞ?」
「レイヴ…短刀モードで素早く行こう。」
『分かりました。』
シュン…
「それじゃ、やろうぜ。」
バッ!!
「せいっ!!」
ヒュッ…
「振りが甘いねー…」
ルプスは逆手に持ったナイフを突き出し、それを間一髪で避けた。が……
ピッ…
「ッ!?」
右の頬から微量の出血が起きた。避けたつもりが頬をかすってしまったらしい。
「そんぐらいの傷、気にしてる余裕は無いぜ?」
パァン!!
銃の発砲も掻い潜り、短刀をルプスのいる方向へ蹴り飛ばす。
サクッ。
「おい、どこ狙ってんだよ。狙うならしっかり狙えよ。」
「あなたこそ、どこ見てるの?」
「何…?」
後ろから奇襲するため、短刀はわざと外した。わざと外せば相手にも油断が生じる…そのまま、正面と後ろから蹴りを食らわせる。
「とりゃあ!!」
「はっ!!」
「ぐっ…!?」
流石に今のでトドメは刺せないか…
「ちっ、やるじゃん…撤退だ。」
「あら?逃げるの?」
「俺はリーダーからお前達と戦えなんて言われてないんでな。お前達を殺すのは「アイツ」に任せるぜ。」
シュオン…
妙な言葉だけを残してルプスは撤退した。
「アイツって…私達を殺したくてたまらないっていう奴?」
「恐らくそうでしょう。」
そう考えると身の毛がよだつ…殺される恐怖感からなのか、手足が凍りついたように冷たい。
「ひとまずマーセル邸へ戻りましょう。」
「う、うん…」
ーセリドの部屋ー
殺される…私がいつか…怖くて震えが止まらない…
ガチャ。
「セリド様。」
レイヴが私の様子を見に部屋に入ってきた。
「レイヴ…」
「大丈夫ですか…セリド様…」
「私ね…怖いの。ルプスが言ったように、私もいつか殺されるんじゃないかって…」
ここで自分の心をレイヴに話した。今はただ、安らぎが欲しい…
「私はずっとセリド様のお側にいますから。大丈夫ですよ。」
「レイヴ……んむっ!?」
柔らかい感触のレイヴの唇と私の唇がいつの間にか重なっていた…でも何故か嫌とは思わなかった…今はこのレイヴの行為が私の心を和らげてくれるのを感じたから…
続く。
次回のロスト・メモリーズⅡは
「賞金稼ぎの世界…お父さんが何回も訪れてる世界…!」
「センに会ったらよろしく伝えておいてくれよな!」
「パパとママはいない。コンテナに私と桜雨を置いてね。」
次回「賞金稼ぎの世界:RE」
「あなたのお父さんとお母さんが、あなたのことを思ってしたことか分かってるの!?」
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