ロスト・メモリーズⅡ

第4話 いらない言葉

｢きゃあっ！！｣

ガキィン！！

｢何っ！？｣

｢日丸…？｣

咄嗟の勢いで前に出た日丸の目は怒りに満ちていた。

｢………！！｣

｢ただの少年ごときが…図に乗るんじゃありませんよ！！｣

｢………来い。｣

ガキィン！！キィン！！

阿修羅の数本の腕による攻撃もするりとかわし、本体であるセバスに狙いをつけた。

｢レイヴ！私達も！｣

｢はい！｣

シュン…

私達は日丸が本体に直進している間の阿修羅を任された。

ガコン…

ズドンッ！！

｢くっ…人形の癖に何てパワーなの…！？｣

『もう少し耐えて下さい！もう少しで日丸様がセバスの元にたどり着きます！｣

もう少しの辛抱だ…頼む…

｢必ずや殺す…今日、ここでッ！！｣

感情的になったセバスが阿修羅を操ってトドメを刺そうと振りかざしてくる……

｢あぁ…！｣

｢死ねぇいッ！！｣

チャキン。

｢………そこまでだ。｣

｢ひ、ヒィッ！？｣

何とか日丸が間一髪で止めに入ったから助かった…危ない危ない…後は私達が体術でやれば…！

｢日丸！ちょっとそこどいてー！｣

｢なっ…！？｣

ブンッ…ドスッ！！

｢フガッ…｣

首筋に二人で蹴りを食らわされ、セバスは泡を吹いて倒れた。

｢よし…何とか倒せましたね…｣

｢日丸があそこで止めてくれなかったら危なかったよー…ありがとう！｣

｢……あぁ……｣

いつものあまり言葉を交わせない感じで答えた。でも彼にとっては｢いらない言葉｣はいらないんだろうな…

｢もしや今回の異変はこの男だったのでは？｣

｢確かに…魔獣の気配も無いし、こういう事例は玉にあるってお父さん言ってたよね。｣

異変というのは魔獣だけではなく、人物なども存在するって確かにお父さんはそう言っていた…それってこういうことだったんだ…

ーマーセル邸ー

｢皆集まってくれてありがたい。まぁ話す内容は…分かるな？｣

｢シンの団のことか。俺もつい最近気になっててな。俺が行った旅先でもシンの団による被害が玉にあったんだ。｣

｢今、そのシンの団にセリド達が狙われてるんだ。このままではセリド達の身が危ない。お前達に協力してもらいたいんだ。｣

｢…！？セリドが！？｣

｢辛いが…その通りだ。｣

｢あの子とセリド様のためなら、私は迷いなく引き受けます。｣

｢断らない理由があるか。子供達は俺が全力で守る。｣

｢皆…ありがとう。奴らの動向が分かり次第、また連絡する。｣

｢日丸…また一人になるけど大丈夫？｣

異変を解決した私達は元の世界に戻るところだった。

｢…大丈夫…｣

｢いつかまたここへ来るね。じゃあっ！｣

ガチャン。

｢………菊…｣

日丸の中には一人の少女への想いがあった。そして彼はまた信頼出来る人間が出来たことを嬉しく思ったのであった。

｢おい…セバス、起きろ。｣

｢………｣

｢まったく…何がリーダーの為だとか何だの…子供二人にやられてんじゃねぇか。｣

シュオン…

｢こいつは久々の『死刑確定』だな。｣

ーマーセル邸ー

｢これもきっと運命なのか…お前に会わなかったら今も俺は間違った正義を信じていたんだろうな。｣

｢ドメイク…お前…｣

｢セリアの件…俺は奴の嘘を信じて間違った正義を実行していた。俺はバカだったよ…見ず知らずの他人を殺すところだったんだからな。｣

｢でもお前がいなかったらセリアは倒せなかった。正直なところ、カトラにも出会わなかったかもしれない…俺がこうして家族でいられるのはドメイク、お前のおかげなんだよ。｣

｢家族…か、俺もいつか家庭を持ってみたいもんだな。｣

ガチャ…

｢ただいまー！あ、ドメイクさん！お久しぶりです！｣

｢お、セリドか。また見ないうちにおっきくなったな。｣

何年ぶりかのドメイクさんがいたことに心が踊った！

｢お前、最後にセリド見たのいつよ？｣

｢多分セリドが15歳の時じゃないか？今16だから…｣

｢そらセリドも少し変わってるわ。｣

｢ドメイク様、お久しぶりです。｣

｢レイヴ、お前もおっきくなったな。｣

｢オメーは親戚のおじさんかっての！！｣

お父さんの鋭いツッコミがドメイクさんに入る。ドメイクさんは満更でもない様子だけど…

｢母さん！来ていたんですね！｣

｢マーセル邸の執務は大丈夫ですかレイヴ。｣

｢はい、常に良好です。｣

レイヴは家族として揃うことがあまり無いからな…お母さんであるクロウに会えて相当嬉しそうだ。

｢じゃあ、俺は一旦旅に戻る。子供達の姿も見れたからな。｣

｢おう、行ってらー｣

ドメイクさんは世界のドアに開いて、また旅へと戻った。

ーシンの団アジトー

｢誤算だったな。セバスを行かせたのが運のつきだ。｣

｢俺は新しい｢人物｣を記録したから別にセバスの奴がどうなろうと構わんが。｣

｢日丸の奴を記録したのか？｣

｢奴の剣術はスタイリッシュで尚且つ強力だからな。召喚しがいがあるってもんよ。｣

ジャラ…ジャラ…

｢やめろぉ…殺さないでくれ…！！私は…私はァ…！！｣

｢いいや、リーダーである俺の判断だ。お前を処刑する。出てこい、ガレウス。｣

｢ようやく俺の出番か！！レクス！！｣

ジャイン！

｢ガレウス、お前の爪でセバスを処刑してやれ。｣

｢嫌だぁ…嫌だぁ！！許してくれぇ！！｣

｢ギャーギャー喚くなクソジジイ。処刑する前に最後…言っておくぜ。｣

｢あぁ…あぁ…！｣

｢俺はな……クソジジイ、テメーが鼻から大嫌いだったんだよッ！！！｣

グシャリ！！

｢ヒュー…怖いなぁ。｣

｢これで良いんだろレクス？｣

｢ああ。良くやってくれた。｣

｢へっ、ざまぁみろクソジジイ。中年野郎が調子に乗ってんじゃねぇよ。でも、一番調子に乗ってんのは…アイツらの方かもなぁ…！！｣

続く。

次回のロスト・メモリーズⅡは

｢舞踏の世界だって！何かロマンティック～♪｣

｢ちょ、何で私ドレスじゃないの！？｣

｢セリド様には｢男の子｣になってもらいます。｣

｢そういえば、お前を殺したくてたまらない奴がいるそうなんだ。｣

｢何ですって…！？｣

次回｢舞踏の世界｣

｢わざわざ俺が魔獣を召喚して異変を起こしてやってんだ。感謝しろよ。｣