僕とちびっこの話~飛行機にて~
約1時間半のフライト。
飛行機の左列、通路側の席。
確かC25の席だっただろうか。
その恰好から、就活生であろう左のお兄さんとの間には、1席挟んでいて。
後ろには、ちびっこ2人(姉妹)と
お父さん、お母さん。
僕が一眠りする直前、少しグズっていたどちらか片方。
目を覚ますと、さながらこの世の終わりかの如く泣き叫んでいた。
いや大前提、とってもかわいらしかった。
僕には2歳半になる甥がいるので、根本に「泣き声耐性」が備わっているし、ちびっこは泣くのが仕事だ。
が。
周囲の雰囲気から察するに、それなりに長期戦のようだった。
大人しくしているのに疲れたのか。
飛行機の浮遊感がおっかなかったのか。
昨今の社会へに対する不満が、離陸をきっかけになぜか爆発したのだろうか。
想像しても、寝起きの僕には分かるはずもない。
そんな僕は何を思ったのか。
自分が「陽気なおもしろお兄ちゃん」として彼女たちの笑顔を引き出せたら、彼女たちの涙が止まれば、この飛行機は丸ごとハッピーじゃあないか!!!
大変都合の良いイメージが浮かんでしまった。
こうなってしまうと、もはや僕を止めることは僕にも出来ない。
いざ。
真後ろの、おそらくはお姉ちゃんであろうちびっこに、
この世のものとは思えぬ程の優しさ溢れる視線を全力投球!
なるほど目すら合わない。 妹さんもまた然り。 大失敗である。
その合わない目の周りには、数え切れない程の大粒の涙。
そしてその様は、涙が「溢れている」どころの騒ぎではなかった。
もはや涙が「飛び出している」なのだった。
その涙達一粒一粒に、ただならぬ意志のようなものを感じざるを得なかった。
「僕らは絶対に外の世界に出て行ってやるんだ!止めたって無理さ!」と。
妄想は置いておいて。
彼女達の世界における、僕が入り込める余地なんて、とうに涙で洗い流されていた。
周りの方々は、止まない泣き声に疲れたり、眠れずに少し腹が立ってしまっていたりするんじゃないだろうか。
幸い僕は、大好きな奥田民生さんのソロアルバムを聴きながら熟睡してスッキリしていたので、どうにか場をハッピーに変えたかったのだけれど。
日常の中で、そう簡単に僕はヒーローにはなれないのであった。
何だか歯がゆい気もするが、そんな僕を僕は嫌いじゃない。
どうせまた、同じ局面で僕は同じチャレンジをするはずだ。
またいつか来るその時まで、ドラえもんでも参考にして「温かい目」を練習しておこうか。
たかが僕の日々 もじえもん @--mojiemon--
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