僕と「おじさん」の話

僕はタイムマネジメントが苦手だ。


朝にも弱ければ、夜勤をしていたりするので昼夜も大逆転している。


故に、学生の分際でタクシーを度々利用する。

それも、恐ろしいまでに時間の余裕が無い時に、だ。


1分1秒を争うピンチに大焦りしている「僕」と、

そんな事とはつゆ知らず、目の前の業務を安全運転にて全うする「おじさん」。

(タクシーの運転手さんには、得てしておじさんが多いですよね。)


そんな局面を、僕は数えきれない程に経験してきた。

だからこそ感じる「おじさんいろいろ」がある。

(以下、タクシー運転手さんを総じて「おじさん」と書かせて頂きます。気分を害されたおじさんが居たら、ごめんなさい。リスペクトのもとですので悪しからず!)


十人十色とはよく言ったもので、学生である僕に対するおじさんの振る舞いも、実に多様だ。


そこで、僕が今まで出会ったおじさんをいくつかご紹介したい。


①サイレントおじさん

僕「すみません、○○駅までお願いします。」


おじさん「ぅぃ。(究極の小声)」


タクシー「ブーン。」


おじさん「700円ね。(極限の小声)」


僕「ちょうどありました。有難うございました。」


おじさん「、、、チャリン。(もはや声にあらず)」


タクシー「バタン。ブーン。」    以上だ。


以上なのだ。 もはや分析の余地もない。

怒っているようには見えない。 が、とにかく寡黙なのだ。

そしてサイレントおじさんはやはり一定数、いらっしゃる。

特段こちらに不満はないのだが、行先がちゃんとおじさんに伝わったのか、到着するまで一抹の不安に駆られたりする。

ダンディかつ運転の上手な方が多い傾向から見ると、

「サイレントおじさん」はある種、「天職おじさん」なのかも知れない。


②スーパー安全運転おじさん

僕は現在、雪の良く降る街の、とある坂を上った場所に住んでいる。

駅に向かうには、徒歩であれタクシーであれ、急な坂を下る必要がある。


スーパー安全運転おじさんはその坂を、「徒歩に負けない遅さ」で運転される。


前述の通り、僕は1分1秒を勝ち取るためにタクシーを利用することが多い。

すなわち、、である。


もちろん、そのおじさんを否定するつもりは毛頭ない。

スピードに限った話では無いが、安全運転は誰がなんと言おうとも、正義だ。


が、しかし、、その時ばかりは僕は素直にこう思う。


「終わった、、、」と。


③ハイパー気さくおじさんfeat.コミュ力

皆様も相対したことがおありでしょう。

そう、とにかくおしゃべりなあの方々である。


おじさん「兄ちゃん、○大生かい?」


僕「はい、そうなんです。」


おじさん「おー!あったま良いねえ! なに、出身もこっちなのかい? え?あの町から出てきた? あっはは、そりゃあ遠いねえ。 お母さん心配してるんじゃないの? そういえばあっちは雪少ないよねえ、びっくりだろうこんな吹雪! なあ!ええ? わっはっは!」


僕「あっはっは。(こ、このおじさんすごいしゃべるぞ!!)」


おじさん「何、兄弟とかいるのかい? え?姉ちゃんいるのか! おーそりゃあ良いねえ! え?この辺で良いのかい? あいよ分かったよ! うりゃ!」


タクシー「おいマジか!!  キキ―っ!! ふう。」


この類のおじさんは、とにかくよくしゃべる。

「人類皆友なり」といった価値観なのだろうか、僕の家族構成にすら言及して来られる。


いや、楽しいのだ。 僕は人と話す事が大好きだし、不快な気持ちも無ければ、地元の話なんかをするととても楽しいので有難い。

が、僕にうかうかLINEの返信すらも許さぬようなそのマシンガンっぷりは、正体不明のスゴみを感じざるを得ない。


以上。


ここまで、僕が良く出会うおじさんの特徴をまとめてみた。

僕の経験上に限っては、大体のおじさんはこの3つのうちのどれかに当てはまったりする。

もちろん、特筆すべき特徴のない、まごうことなき「シンプルおじさん」も多々いらっしゃる。


最後に、僕が先日出会ったおじさんをご紹介したい。


~???おじさん~


僕「○○あたりまでお願いします。」


おじさん「はいよ。」


タクシー「あいよっ。 ブーン。」


僕「(このおじさんしゃべらないな、、サイレントおじさんかな?)」


僕「あ、この辺りで大丈夫です、有難うございます。」


おじさん「はいよ!」


タクシー「ブーン、キキっ。 よし。」


おじさん「はい、760円だねえ~! どうも有難う!」


僕「800円でお願いします。 チャリン。」


おじさん「よしそしたら、お兄さんに40円あげちゃうわ!」


僕「わ、有難うございます、、、」

僕「!!??」

僕「(あげるって言われたから、おまけしてくれるのかと思ってとっさに有難うって言ったけど、、おつりやないかい!!)」


おじさん「はい40円あげる!」

おじさん「最後にねえ、忘れものだけ無いようにねえ、ちょおっと気を付けたりしてみても良いかもしれない!!!」


僕「は、はい。大丈夫そうです。 有難うございました。」

僕「(何でちょっと気を付けなくても良い可能性残したの??)」

僕「(気をつけなきゃダメ、絶対!!!)」


おじさん「ありがとうね、またねー!!!」


タクシー「ブーン!!!」


僕「またね、、、え、友達だったっけ?」


とてつもなく難しいのだ。判断が。

今まで数多のおじさんと出会ってきた僕ではあるが、まだまだ若輩なのだと痛感させられた瞬間だった。

あのおじさんに名前を付ける事は、今の僕の実力じゃあ、到底かなわなかった。


降車時に畳みかけるあのおじさん、いつか「また」出会えるのだろうか。


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