第2話 学園祭

「っ!?」

はっと目を覚ますと、そこは夢で見たような白い部屋だった。

「目が覚めたかい?」

僕を覗き込んでいたのは、30代前半ぐらいの男だった。

ただ、この顔を僕は知っているような、気がした。

「神前君、今がどういう状況なのか分かる?」

「えっと…気が付いたら信号が赤で、…」

車に轢かれて、病院にいる、というところだろうか。

「まあ、状況は理解しているか。俺は新藤という。ここの医者だ」

どうやら僕を治療してくれたのはこの人らしい。

「まあ、幸いにも捻挫と打撲で済んでいるようだし、2,3日で退院できると思うよ」

新藤医師はそう言って病室を後にした。

「あの!」

ドアを閉めようとする医師に思い切って話しかける。一応、話しておこう…あのことを。

「僕の他に、もう一人女の子がいませんでしたか。僕と同い年くらいの」

「?救急隊の人からは聞いていないな…どんな女の子?」

「赤みがかった髪の女の子でした…顔はあまりよく覚えていません」

「分からないな…」

結局、あの少女の正体はなんだったんだろう。


数日後、怪我も大体は回復し僕は大学に戻った。

「お、晴輝!!お前事故に遭ったんだって?大丈夫か」

復帰早々に優に心配された。

「うん。もう平気」

「あんまりぼーっとするなよ」

「べつにぼーっとしてはいなかったって」

明日は学園祭だ。内心気が進まなかったが、このままでは無趣味一直線になってしまうので、優と連れ立って行くことにした。

授業も終わり、明日10時駅前集合な、と優に別れ際に言われた。

翌日。

優と駅前で集合し、大学に向かう。

坂を登ったその先には、いかにも実行委員会が手作りしたような看板と大きな門が建っていた。

『第〇回 つつじ祭』

大学に沢山植えられているつつじからとった名前が書いてある。

いわゆる大学のメインストリートと呼ばれる部分には、運動部が開いている屋台がずらりと並び、さながら夏祭りのようである。メインストリートから外れた一角では舞台の上で軽音楽部やアカペラ部が思い思いの音楽を披露していた。

屋台の売り子を避けつつ、僕等は一旦建物内へ入る。

「ふう…なんだこの人混みは…」

陽キャの優もさすがにこの熱気にあてられたらしい。

「建物内はいくらかマシそうだな」

教室では手芸部や文芸部などが出展しており、いくらか落ち着いた雰囲気だった。

「あー…俺ちょっと飲み物買ってくるわ」

そう言って、優は自動販売機を探しに行ってしまった。

仕方なく、僕はその辺の教室をぶらぶらと周ってみる。

建物の奥には、漫画研究会やアニメ研究会などが連なっており、コスプレをした学生が売り子をしていた。若干アンダーグラウンドな空気が漂う中、僕はあるものに目がとまってしまった。

『情報研究会』

その出展ブースで、僕はあの子を見つけた。

―あなたなら、世界を変えられる―

そう告げた、少女に。

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