第198話 各々の戦場
「任せろと言ったが……この数はやべぇな」
マリスとやらの操り人形、数が多い上に一体が強い……個体差まであるおまけ付き、守護者……話しに聞いては居たが予想以上の化け物の様だった。
「マリスさん本体はあり得ないほどに強いっすよ」
「はは、いらねー情報をどうも」
ユーリの一言で絶望感が強まる、シャリエルは前線タイプ、サレシュは回復、ユリーシャは後方支援……そしてユーリと俺も前線タイプ、バランスは悪くない。
「そんじゃ……サレシュは怪我したら回復、ユリーシャは絶えず強化の支援魔法、シャリエルは二人の護衛……んで俺とユーリで本体を叩きに行くって作戦で良いか?」
「うーん、いい作戦だけど……何で私が居ないの?」
オーフェンの作戦にアルテナが不満そうな表情で突っ込みを入れる、彼女に命を預けるには少し信頼が足りない気がした。
だがそれを面と向かって言うほどデリカシーの無い男ではない。
「すまん、忘れてた!」
そう言いお惚けて笑う、少し場が和んだその時、ふと強力な殺気を感じた。
「オーフェン、久しぶりだね」
見覚えのある小さいピンクの髪色と聞き覚えのある声……オーフェン、俺の記憶を埋め込まれた少女レクラ……ことごとく因縁のあるやつだった。
「ったく……モテるのも辛いな」
ふざけては居るが状況はやばい、守護者一人に人形兵士の大群……レクラ一人に対して俺とユーリで相手しても勝てる見込みは恐らくない、改めて化け物を相手しようとして居る事を再確認した。
「ウルス様の為にもオーフェン、死んでもらうよ」
俺以外眼中に無い様子、此処から移動すれば引き離せる……援護は受けられないが俺でもアルラが戻って来るまでの時間は稼げる筈だった。
「ユーリ、そいつら頼んだぜ」
その言葉を残してオーフェンはレクラを連れて雨の降る街へと消えて行く、残された人形兵器……これだけなら何とかなりそうだった。
「さーて、どの武器で行くっすかね」
マリスの人形兵器は見たところ素手、だがあの人自体がビックリする程の隠し兵器をもって居た故に人形も手ぶらとは考えられない……ウェポンマスターは武器に困らない、だが逆に攻め手が多過ぎて悩んでしまうのが欠点だった。
一先ず射程に入らない程度にリーチのある武器……棘の付いた鉄球を空間魔法から引っ張り出すと鎖で繋ぎ振り回す、先ずは様子見でぶっ潰す。
「巻き込まれるんじゃ無いっすよ皆んな!!」
宿屋の壁ごと機械人形を吹き飛ばす、鉄球を受け止める程の力は無い……このまま鉄球でゴリ押しでも良いが鉄球を使った本当の理由はヘイトを私に向ける事、一先ずそれは成功だった。
宿屋から少し距離を取り広場へと人形達を誘導する、此処なら思う存分やれる。
「獣化の実験台になってもらうっすよ」
理性が飛ぶ獣化、物にすれば唯一無二の切り札となる……だがまだ今は20%が良いところ、実戦……守護者戦で使うにはまだ未熟、ここら辺で実験しておきたかった。
広場、例え理性が飛んでもシャリエル達に被害は及ばない……ある程度気楽に出来る。
「そんじゃ行くっ……」
獣化をしようとしたその時、懐かしい気配を感じた。
「久しぶりだねお姉ちゃん」
「シュリル……」
最後に会った任務の時から何も変わって居ない……あの時から何も。
「何で……隼人さんを裏切ったんすか」
「お姉ちゃん、何事も見極めが大事なんだよ?長老も言ってたでしょ?」
「薄情な妹っすね……」
数本の剣を召喚しシュリル目掛け投げ付ける、計算して出来た僅かな死角を走り距離を詰め懐に入り腹を蹴飛ばした。
今の状態のシュリルは隙だらけ……攻撃はいくらでも当てれる、だが此処からが本番だった。
「痛いじゃない……」
小刻みに震える……シュリルがキレた。
「相変わらず性格は変わって無いっすね……」
どうせ裏切ったなら人格まで変わって居て欲しかった……本物の家族で無くとも、シュリルと戦うのは苦しい。
「何で……裏切ったんすか」
キレて突っ込んでくるシュリルに向けて小さくユーリは呟いた。
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「さてと……ただでさえ人形に囲まれてるのにあの化け物は反則でしょ」
アルテナが苦笑いを浮かべる、2メートルはある巨大に大きな斧を背負った明らかに普通では無い男がユーリの開けた穴の前に立って居た。
「ユリーシャ、もう魔法は言いわよ」
「えぇ……まずいですねこの状況」
フェンディル……魔法に特化したサイクロプスの守護者、サイクロプス族特有の圧倒的なパワーを持ちながら多彩な呪文を使える厄介な相手……口頭で教えてもらった情報ではあまりにも心許なかった。
「一先ずシャリエルとアルテナが前衛、サレシュと私で後方支援と言う陣形で良いですか?」
ユリーシャの言葉に頷く、絶えず支援魔法を掛けて身体能力などを底上げしても対等には程遠い……私達の勝ち筋は一つ、フェンディルには無い連携で倒すしか無かった。
「相談は終わったか?」
フェンディルが口を開く、律儀に待ってくれて居たようだった。
「やれる所まで……やりましょう」
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