第122話 資金調達
薄暗い路地裏で男に囲まれた白いワンピースの少女、どれだけ叫ぼうとその声は大通りに届かなかった。
「叫んでも無駄無駄、ってかこうなること分かってここに来たんじゃ無いの?」
「ち、違います……私は
ただ……」
「まぁそうじゃなくてもお嬢ちゃん、アンタに拒否権はねーよ?」
そう言い男は手袋を外しとあるタトゥーを見せた。
髑髏に剣が突き刺さった不気味なタトゥー、それを見た瞬間、少女の表情はより一層絶望が増した。
「何で私が……」
瞳に涙を溜める少女、周りの男達はそれを見て笑って居た。
まぁ酷いものだった、平和と見せかけてもどの国も、裏は汚いもの、流石の私も善悪の区別は付く。
「それじゃ、俺たちと楽しもうぜ!」
「い、嫌!!」
男の手が少女へと伸びる、そろそろ頃合いだった。
「か弱い少女を虐めるなんて感心しないなー」
建物の影からひょっこりと姿を現わす、その声に男達は一瞬、焦り振り向くがミリィの姿を見てひと時の静寂に包まれた後、大爆笑が巻き起こった。
「なんだこのチビ助、英雄ごっこか!」
「誰がチビ助じゃボケ!」
男の言動に苛立つ、ガサツやらなんやら言われても良いが身長だけは触れてはいけないゾーンだった。
作られた人工物の私の身長は永遠にこのまま、成長しないのだから。
それが超絶可愛い私の唯一のコンプレックス、それに触れた男達を許す訳には行かなかった。
「あーあ、殺さないつもりだったけど……そこに触れたらお終いだわー」
空を見上げ呆れたように告げるミリィ、だが男達は子供が何か戯言を言っている様にしか思って居なかった。
「はいはい、お子様はお家に帰っておねんねしな、俺たちは生憎ロリコンじゃ無いんでな」
1人の男が無防備に近づきミリィの肩を触ろうとする、だが次の瞬間、男の右腕が宙を舞った。
「え?」
宙を舞う自分の腕に痛みと理解が追いついて居なかった。
腕は数秒後地面にドサっという音を立てて落ちる、その瞬間男はやっと理解し、痛みでその場に倒れこんだ。
「う、腕がぁぁ!!!」
「こ、こいつただのガキじゃねぇぞ!!」
仲間の腕を飛ばされた事でやっと気が付いた様だった、ずっと殺気は出して居たのだがそれに気が付かない程度、話しにもならなかった。
「今更気付いても遅いっての、お嬢さん、少し待っててね」
一瞬にして男達の間をすり抜け少女の元へ行くとミリィはウインクをして見る、だがお姉さん的な仕草は圧倒的に似合わなかった。
「お前ら!殺せ!!」
タトゥーを見せたリーダー格の男が周りに指示をする、力量も測れない、とことん救えない奴だった。
「ったく、お前らで私を殺せたら苦労しないっての」
「死ね!!!」
少女から少し離れ、気怠そうに刀を構えるミリィ目掛け男は剣を勢い良く振り下ろす、振り下ろされた剣はミリィの右腕を斬り落とした。
「ざ、ザマァねぇな!」
「何が?」
腕を斬り落とした、その筈なのにミリィの右腕はそこにあった。
男は咄嗟に落ちた筈の右腕を探す、だが血痕はあるものの、肝心の腕は無かった。
「お探しものはこれ?」
右腕を右腕で持ち男に見せるミリィ、だがその腕は少し違和感があった。
「男の腕……?」
明らかに少女の物ではなかった。
周りを見るが最初の1人以外腕が掛けた者はいない、その時、急に右腕が熱くなった。
ふと視線を落とす、すると其処にはあった筈の右腕が無かった。
「ごめんごめん、探してたのは私の腕か!」
笑いながら男の右腕を投げ捨てるミリィ、その表情は悪魔そのものだった。
「あ、悪魔だ……悪魔だ!!」
右腕を斬り落とされた男は敵わない……やっとその事を理解し逃げ出す、だが逃す訳無かった。
「逃がさねーよ」
もう十分楽しんだ、後は淡々と頭を切り離すだけだった。
1人、また1人と頭を切り離して行く、そしてタトゥーを見せた男を残して他の男達は生き絶えた。
「な、なんなんだよお前!!」
「私か?私はそうだな……超絶美少女とでも言っておこうかな」
「ふざけんな!俺の、俺のバックに誰が付いてるか知ってんのか?!」
命乞いのつもりなのか、ぎゃーてぎゃーて五月蝿い男、どうやらよっぽど生きたいらしかった。
「しゃーねーな、選ばしてやるよ」
「ほ、本当か!?」
男の表情に一瞬希望が見えた。
「あぁ……二択だ」
ミリィはそう言うと不敵な笑みを浮かべた。
『Dead or Dead?』
首元に冷んやりとした刀の感触を感じる、男の表情は絶望に染まって居た。
そして何を言わせる事もなく、ミリィは男の首を刎ねた。
「あー!気持ちぃーな!!」
久し振りに人を殺した、やはり人殺しの為に作られた私の生き甲斐は人を殺す事らしかった。
刀に付いた血を男の服で拭き取ると金を持って居ないか物色する、するとリーダー格の男が腰巾着いっぱいの金貨を持っていた。
「すっげ、これってかなりの大金じゃ……」
初めて見る大金に少し固まる、すると背後から少女が声を掛けてきた。
「あ、あの……助けて下さり、有難うございます」
少し声を掛けるのを躊躇いつつも礼を言う少女、不思議な事に彼女から恐怖は感じなかった。
「あんた私が怖く無いのか?」
「はい、貴女は私を助けてくれましたから」
そう言い笑顔を見せる少女、絶対詐欺に会うタイプ、人を信じやす過ぎだった。
だが悪い気はしない。
「面白い奴だな、まぁ助けた目的は金だし、目的も果たしたからじゃあな」
金を手に入れ此処に居る意味もない、ミリィは早急に立ち去ろうとするが少女のに手を引かれた。
「なんだよ」
「お礼をさせて下さい、命の恩人さんにこのままさよならする訳にも行かないです」
「別に礼なんて……」
怠いし断ろうとするが少女が少し怒った様な表情をする、面倒臭いが断れる雰囲気では無かった。
「はぁ、分かったよ……」
「有難うございます!私はルクセリアです」
「ミリィだ」
「よろしくお願いしますねミリィさん!」
そう言い無理やり握手してくるルクセリア、彼女から悪意は感じられないが……危ない目をして居る様な気がした。
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