第3章 クリミナティ調査編
第30話 久々の帰還
「アルセリス様!!」
王座に舞い戻るアルセリスの姿を見るや否やアルラは一瞬嬉しそうな表情を見せる、だが他の階層守護者の存在を思い出すと咳払いをしていつものアルラへと戻った。
「暫く開けて居て悪かったな」
「悪いなどと滅相もございません、この王国はアルセリス様の物、どうしようとアルセリス様の勝手でございますよ」
跪きながらアウデラスはそう言う、少し堅苦しい気もするが気にしない事にした。
「今日戻ったのは今後の事についてだ」
「と言いますと?」
アルセリスの言葉にアウデラスを含む守護者や補佐は首を傾げた。
「今俺は冒険者セリスとしてクリミナティを調査している、まずはそれについてランスロットとマリスの二人はセルナルド王国に、オーフェンとリカでフェリス帝国に滞在し調査してくれ」
その言葉に新しく一員となりオーフェンと仲良くなったリカ達は何も言わずに頷く、だが王国最大の問題児と言っても過言では無いマリスは頷かなかった。
「マリス!アルセリス様の指示を聞けないんですか!」
見かねたアルラが注意をするがマリスはそっぽを向いた。
「何か不満でもあるのかマリス?」
「めんどくさい」
めんどくさい……彼女との親密度はマックスなのだがどうもよく分からない性格をして居た。
「アルセリス様、マリス様は僕が説得しますので気にせず進めてください」
そう言ってダラダラしているマリスの手を引き王座の間の外へと連れて行くランスロット、何だかんだあの二人は相性が良い……ランスロットがどうにかしてくれるだろう。
「じゃあ続けるか、クリミナティの他にもう一つ、リカが居たとされるフィルディア大陸への調査も行いたい」
「フィルディア大陸……興味深いですね、アルセリス様、私が立候補しても宜しいでしょうか?」
研究好きのウルスが手を挙げる、彼が食いつくのは想定済みだった。
「ああ、それとフェンディルにマールも同行してくれ、内容としては調査及び大陸内に転移出来る拠点を作る事だ、作業用ゴブリンも好きなだけ持って行って良い」
「了解致しました」
フェンディルとマールはそう言い頭を下げる、ある程度伝える事は伝えた筈だった。
「それじゃあ早急に取り掛かっているくれ、俺も自室で少し作業がある」
そう伝えアルセリスは自室へと転移する、そしてベットに寝転がると大きなため息を吐いた。
この世界に来て一ヶ月は経つ……分からない事だらけや新しい発見で楽しい反面、自分自身の強さに疎外感を感じて居た。
ある程度の事は魔法で出来る、セリスと言う魔法を使わない冒険者としての自分も戦士系のジョブをカンストしている故にステータスが化け物……この世界に恐らくと言うか絶対自分に敵う敵など居なかった。
ゲーム時代にもそうそう居なかった……それ故に自分より強い存在と言う者を見て見たかった。
フィルディア大陸にそれは存在するのか……ゲーム時代には無かった存在故に少し楽しみだった。
「アルセリス様、少しよろしいですか」
突然アルラの声が聞こえアルセリスはベットから飛び起きる、そして机にそれっぽい書類を並べると声を整えた。
「良いぞ」
その言葉に扉は開く、するとアルラが悲しそうな表情で入って来た。
「ど、どうしたアルラ?」
女性の悲しげな表情に思わずアルセリスでは無く隼人の部分が出る、キリッとしてカッコいいアルラからは想像も出来無い表情だった。
「私は……要らない子何ですか」
「要らない……子?」
アルラの突然な言葉にアルセリスは首を傾げた。
「はい、アルセリス様は私に何も使命を与えてくださりません、守護者に指示を出す時もアウデラスを使います、一方私は自室でアルセリスの人形を眺めたりボーッと階層の見回りをするだけ……何故私なんかを最終守護者兼統括に?」
アルセリス人形が少し気になるがアルラがそんな事を思って居たとは思いもしなかった。
確かにアルラの性格を考えると使命が与えられないのは苦かも知れなかった。
少しルールに厳しいと言うか委員長タイプの一面も持っている故に……彼女達はもうゲームキャラでは無い事を再確認した。
「そうだったか……すまないな」
そう言ってアルラの頭を撫でる、彼女の役目……考えて見るが全く出て来なかった。
使命は先ほどのメンバーに与えた、それにこの王国を守って居てくれとも言えない、この王国にはリリィも残っていた。
アルセリスは考えに考えた末、一つの結論を出した。
「良し、それならば冒険者セリスの相棒として冒険者になれ、アルラにぴったりの仕事がある」
「私にぴったりの仕事……ですか?」
アルセリスの言葉に嬉しそうな表情をすると共に疑問符を浮かべるアルラ、その言葉にアルセリスは頷くと兜の下で不敵な笑み浮かべた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「マリス様、先程のアルセリス様に対する態度はあんまりじゃないですか?」
「うるさい」
廊下を歩かずにスライド移動するマリスの後ろを歩くランスロット、マリスは彼の言葉を全て聞き流し適当な返事を返して居た。
「アルセリス様に嫌われますよ?」
その言葉にマリスは立ち止まると後ろを振り返った。
「アルセリス様はそんなに器が小さいお方じゃ無い!」
珍しく語尾を荒げるマリス、内心アルセリス様の事を尊敬しているのはバレバレだった。
ランスロットはその様子に少し微笑むとマリスは頬を赤くする、恥ずかしげに背を向けると再び歩き出した。
「じゃあ調査、行ってくれます?」
「嫌」
そう告げるマリスの言葉にランスロットは思わず身体の力が抜けそうになった、何故そこまで拒否をするのか、尊敬するアルセリス様の指示と言えど聞かない姿勢は少し異常だった。
長らく彼女の補佐をしているランスロットも今回の事ばかりは少し頭を悩ませて居た。
「何が不満なんですか?」
その言葉にマリスは何の反応も示さず歩き続ける、その様子にランスロットは困った表情で髪を掻くとマリスは突然止まった。
「ど、どうしたんですか?」
「アルラ、あいつがアルセリス様の隣に立てる事が気に食わないの」
そう少し不機嫌そうな声色で言うマリス、その言葉にランスロットは少しだけ共感出来た。
マリスの隣に立つのが自分では無かったらと考えると嫉妬でどうにかなりそうだった。
「そうですか……でもアルセリス様の隣に立つ事が好かれている理由とは限らないですよ?」
「ん?」
「僕なら好きな人を嫉妬させる為に敢えて遠ざけ別の女性を隣に置いてみたりしますねー」
「敢えて遠ざける……」
マリスの表情は変わらないままだがアホ毛がぴょこぴょこと動いて居た。
これは嬉しい証拠だった。
「だから調査頑張りましょ、成功すればアルセリス様に一杯褒めて貰えますよ」
その言葉に頷くマリス、流石に恋敵がアルセリス様では敵わなかった。
嬉しそうに歩いて行くマリスの背中を見つめるランスロット、彼女が喜ぶのであればこの想いが届かなくとも……それで良かった。
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