第10話 検証作業

 10数メートル進む度に足元の地面を掘り返して、進んで、という作業を繰り返している。


『星しかない、闇のなかだ。それに最初に狸に襲われたときにどちら向きに起き上がって歩いたかあやふやだしな。こうやって目印をつけながら徐々に範囲を広げた方がいいだろ。』


 また、足元の地面を掘り返す。


『これで5回目。目安で50から70メートルぐらい最初の位置からきた。初めて終焉の光を使って、ふらふらの状態で歩いていたから、どんなに進んでもこれぐらいのはずだ。』


 俺は辺りを見回す。


『ここを起点にぐるっと半径5メートルぐらいでまわってみるか』


 俺は適当にあたりをつけながら周辺を探索する。


『ここは外れか。戻るか。』


 そうやって何度目かのトライの時に、それっぽい木立を見つける。


『ここっぽいかな。』


 そこの木には根本を掘ればちょうど潜り込めそうなほどの隙間があった。


『問題はここからだ。確かここから光る熊のいるところまで体感で一時間ぐらいだったはず。森で足元の悪いなかゆっくり進んだから、距離にして1、2キロぐらい。』


『まあ、同じように探すしかない、な』


 俺は前肢で土を掘り返しながら、時たま掘り返した土の中から出てくる芋虫を無意識に食べ、飢えを癒しつつ探索を続けた。

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