第8話 急転直下

 話を聞き終えた俺は、改めて質問をうさぎに投げ掛けた。


『俺がどちらかの頭を吹き飛ばすことにした場合、おまえは逃げ出さないのか? あと、どちらかの頭を吹き飛ばしたとして、おまえは死なないのか?』


 うさぎは両方の口で答える。


「「僕たちは半分意志が混在しているんだよ。説明するのは難しいけど、両方の頭の同意がないことには、非常に体を動かし難いんだよねー。」」


シンクロする二つの口。


「「だから、どちらの頭も互いの頭を吹き飛ばして欲しいから君を探して会いにこれたってわけ。どちらを吹き飛ばしてくれるか決めてくれたら、その意思を読み取って、どちらかは留まろうとして、どちらかは逃げようとする。そうすると相反する意思で、逃げるって言う主体的な行動は制限されちゃって、その場に留まっちゃう。まあ実際はもう少し複雑なんだけど、だいたいそんな感じ。」」


「「あと、吹き飛ばしてくれたあとだね。もともと、どっちも不死に限りなく近い存在だから、軛から解放されて、どっちでも生き残れるよ! 知識も混濁しているから、どっちでも君の望む情報はあげられる。」」


 そこまでうさぎはペラペラとしゃべると、次に俺がする質問を読んで察したのか付け足してきた。


「「森の悪い魔法使いのこととか、僕らのさっき話したこと以上のことは、君の求めるこの世界の情報に含まれるから、これ以上はどちらかの頭を吹き飛ばしてからねー」」


 俺はそれを聞き、心のなかで、敢えてうさぎに聞こえるように舌打ちしつつ考えた。


『判断材料はあんまり増えなかったな。俺にとって、どちらを吹き飛ばすかでは、あまりメリットデメリットはない。どちらを吹き飛ばしても情報は手に入りそうだし。』


 俺はどのレベルまで思考が読まれているか把握できないもどかしさを感じつつ、思考を続ける。


『考えるべきは光を使うか否か、だな。こいつが裏切ったら、積む可能性がある。問題は連発できないこと。こういった今考えていることは全て筒抜けと覚悟した方がよい。だから決めた瞬間に動かないと…』


 次の瞬間、俺は終焉の光を発動した。


 光が膨れ上がる。


 うさぎはぴくりと動こうとするも、その時には、うさぎの頭を2つとも吹き飛ばされていた。


 俺は虚脱感を感じながらも細めていた目の隙間から、自身の行動の結果に満足していた。


『これでいい。逃げても追いつかれるのは必定。どちらかの頭を吹き飛ばしたとしても、このふらふらの状態で攻撃されたら勝てない。』


俺は少しふらふらしながら思考を続ける。


『情報は惜しいけど、必須ってほどじゃない。逆に、このうさぎは俺にとって危険すぎる。俺のことを知りすぎているし、うさぎの語ってたことがどちらかが本当でも、危険な能力を持っていたわけだし。』


自分に言い聞かせるように俺は無意識に頷く。


『なら、これまでのスタンス通り、殺して食らって寝るのがベスト。』


 俺はそこまで考え、残ったうさぎの体を食べようと近づこうとした。


 その瞬間、脳内に声が響く。


「条件を達成しました。称号:円環の破壊者を獲得しました。」

「称号の効果として呪い(円環)を受けました。」

「呪い(円環)が発動しました。」

「呪い(円環)の効果として、初期データに書き換えられます。」

「機械仕掛けの神の祝福の存在を確認」

「機械仕掛けの神の祝福の上書きが実行されます。」


 そうして、俺は意識を失った。

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