第15話 赫奕たる炎のさだめと
後にはアルの足跡の炎が残っているだけであった。
「天領寺……」
「ああ、分かっている」
陽向に促されて和也はアルの足跡の炎をコピーした。その瞬間だった、和也の体に強烈な熱を感じた。
「ぐあああああああああ!!!!!」
「天領寺!?」
余りの熱さに和也は叫び声を上げた。和也は足跡の炎をコピーしたのではなく切り取ってしまったのだ。
和也は新たにカット&ペーストを身につけていたのだ。
アルブレッサーラの根源たる炎を受け取った和也は悶え苦しんだ。
陽向はそれを見守ることしか出来なかった。
それでも、ゴブリンは和也に向かって襲いかかる。
「天領寺!」
「近……寄るな!」
慌てて駆け寄ろうとした陽向を和也は怒鳴って制した。襲いかかった数体のゴブリンは和也に斬りかかるも、瞬時に骨と化していった。
それを見た陽向はそれ以上近寄れなかった。
「うおおおおおおおお!!!!!」
和也は吠えた。アルブレッサーラの根源たる
「行こう、陽向」
「あ、ああ……」
和也の右手は青白く燃え上がっていた。陽向はその手が既に白骨化している事に気づいた。上位精霊の残滓とはいえ、力を余すことなく切り取った代償なのだろう。
その直後だった、地面から
慌てて陽向は回避するも、和也はその蔓に絡め取られようとして……蔓が一瞬の内に消し炭と化していた。
「あら、アルブレッサーラの力を受け継いだのね」
聞き覚えのある声が聞こえた。
海パン一丁で褐色肌でスキンヘッドの筋肉ムキムキマッチョマンの男――ラピスラズリだった。
隣には『黎明の十字団』の魔法使いもいる。
「ラピ、お願いだから近づかないでくれ」
「和也、自分がどんなものを得たのか分かってるのかしら?そのままだと右手だけではなく全身が白骨化してしまうわ」
もはや炎と一体化して痛覚が麻痺している和也は気づかなかったがじわじわとゆっくりだが腕の骨が見え始めている。
和也は
「分かってる……つもりだ……」
「なら、ここで燃え尽きるが良い」
魔法使いが嘲るように笑うと和也は左手を突き出した。
――カット&ペースト
「はっ……アタシとしたことが……洗脳されるなんて……」
魔法使いは愕然としていた。
「き、貴様、何をした!!」
「ただ、切り取って小石に貼り付けただけさ、小石でも操ってれば良い」
「カイドゥ、今すぐカリシュの街からみんなを撤退させて!!」
「わ、わかった!」
陽向が直ぐに義勇軍をまとめてカリシュの街から引き上げていく。
ラピは愕然としている魔術師もろとも、地面から生えている蔓を使ってカリシュの街にいるすべてのゴブリンを縛り上げた。
そして、次々と上空に持ち上げていく。
「和也……今よ、アルの炎を使ってゴブリンを焼き尽くすのよ!」
「でも、ラピは……!?」
「森は焼かれて、アタシに出来るこれが最後の力よ。和也、アタシの和也……後はお願いね」
ラピは悲しそうに笑った。
「ラピ……形見をもらっていいかい?」
「蔓の能力ね、いいわ、貰ってちょうだい」
和也はラピの蔦の能力をコピーして大事にしまうと空を見上げた。
「その日、すべてが正しい刻が来る。御身が力ですべてを浄化せよ!」
和也はその力を以て一振り右手を振るった。和也の右腕は一瞬で白骨化して消し飛んだ。
青白い炎が上空に広がり覆い尽くしていく。その炎に巻かれたゴブリン達は蔦ごと一瞬で灰になった。その大いなる炎の力の余波でラピも燃え始めていた。
「ラピ……助けられなくてすまない」
「いいのよ、アタシの和也に引導を渡してもらえたんだから、アタシは幸せよ、これも
「『アタシの和也』か……悪くない、ありがとう、そしてさようなら」
二人は最後にハグをした。散りゆく戦友への最後の手向けとして……。
そしてラピスラズリはサラサラと灰になって消えていった……。
陽向が義勇軍と帝国軍と共に戻ってきたときには、和也はラピから受け継いだ褐色の右手を握りしめながら涙を流していた。ラピの形見として腕ごとコピーしたのだ。
「ラピは逝ってしまったようだね」
陽向の言葉には何も応えない。
そして、陽向に振り向いた和也はこう言い放った。
「さあ、反撃開始だ。アルとラピの弔い合戦だ。俺たちは一直線にハイ・ライトとマユミュンテのところに向かう!」
「そうだね、行こうか。原始の神殿へ」
二人は帝国軍と義勇軍の先頭に立って、黎明の十字団の拠点に向かった
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