第3話 放課後暇なのはカッコ悪い

長く感じた授業も全て終わり、生徒の9割以上がおそらくどうでもいいと思っているであろうホームルームも早々に終わり、いつも通り俺は担任の名取恭子先生が立っている教卓の前に祐介と向かう。


「先生、今日も鍵貸してください」


「は~いどうぞ~」


「ありがとうございます」


「6時には鍵返してね。私はOKしているけど、他の先生というか学校全体が公式的にOKしているわけじゃないのは理解してね」


「はい、分かりました」


「よろしくね」


俺はいつも通り先生から鍵を借りた。何の鍵かと言うと情報処理室1という教室の鍵だ。うちの高校内には数百台のパソコンがあり、あらゆる教室のパソコンが設置されているわけだが情報処理室だけで1,2,3と3つもの教室があるちなみに2は情報処理部、3はワープロ部が使っている。全学年1棟校舎にクラスの教室があり、情報処理室1は2棟の4階にあるので人もあまり来ることがない。表向きは情報処理検定1級を取るための自習のためにこの情報処理室1を使わせてもらっているのだが、実際は冷暖房完備の部屋でさらにパソコンがあるという最高の環境で動画を見たり、ネットでどうでもいいことを調べたりしているだけだ。家でもパソコンはできるが、くだらない話を祐介としながら2時間ほどダラダラと過ごし、6時前に施錠して帰ろうとする頃にはバレー部の練習もちょうど終わり綾乃と合流し3人で帰るのが気づけば1年の冬からの日課となっているのだ。さすがに何かあった時に全く自習をしていないと言い訳が出来ないので情報処理の授業で配られた問題集を解いたりもしている……たまにだけれども。





靴を履き替え、体育館の前を通るとちょうど綾乃が俺達を見つけて手を振りながらこちらへ近づいてくる。


「お疲れ~2人とも本当に仲良いよね。またいつもの場所で時間潰してたの?」


「悪いかよ」


俺は不満そうに返事をした。


「秀は部活に入るとかなんか趣味を見つけなさい!お母さんホントに秀の将来が心配で夜も眠れないわっ!!!」


「だからさぁ……いつから俺の母親になったんだよ!?」


「小1の4月からだよ」


「あーはいはい。とりあえず帰ろうぜ」


俺は綾乃のいつものノリが面倒になったので諦めて流すことにした。


「ひどいわっ!!!シクシク…」


綾乃は相変わらずのノリだったが相手にしない事にして駐輪場まで歩き始めた。


「お二人さんさぁ……俺の事忘れてない?」


「あ、祐介いたんだ。全然気づかなかった~ごめんね~」


全く反省してない感じで言い放った。そこで俺も便乗して


「あぁ、祐介いつからそこにいたんだ?俺も気づかなかったわ……」


「いやいやいやいや!秀一とは放課後ずっと一緒だったし、綾乃とだってついさっき会話したよな!?」


「んじゃ、綾乃さっさと帰るか」


「そうだね」


「聞けよっ!!!」


3人の中で一番のいじられ役である祐介は勢いの良いツッコミを入れるが見事にスルーされてしまが、今日も俺達の日常は平和でこんなやり取りを何年もやっているとこんな毎日も悪くないなってふと思う事もある。すると綾乃がいきなり「あ!!!」と声を上げた。


「久しぶりに小池公園に寄ってみない?なんか懐かしい気分に浸りながら3人で話したいし!!!」



小池公園とは名前の通り池がある公園でカメとかブラックバスなんかが生息していて池1周だいたい1キロくらいだからまあまあでかいのになぜか公園の名前は小池だ。夕方になると老人がウォーキングをしていたり、ベンチで中高生が溜まっていたり、遊具があるほうには小学生や保育園児が遊んでいるような公園だ。もちろん俺達が小学生の時も祐介や綾乃、自分も含め4人でよく遊んだり話したりしたなんてことを思い出す。





そう、4人で――

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