第6話・怪人認定NO!HERO!

 俺がこの時代でエクスキューショーズとの初戦闘に勝利して暫く。世間は賑わっていた。




 皆暇と言う訳でも無いんだろうが、それにしたってヒーローショーが現実になったなんてにわかには信じられない。連日ワイドショーはこの話で持ち切り、テレビの取材も学校に来ていた。




 そしてやはりというか何と言うか、俺も取り上げられていた。




 ただエクスキューショナーズについては分かっていることが少ないからかあまり言及はされていない。というより大規模なテロを行う前に俺が倒してしまったので今の所は大げさな不審者扱いだ。




 問題は俺。




 空中から颯爽と現れて生徒が殺されるのを未然に防ぎ、指を伸ばして敵戦闘員の武器を破壊して脅威となる怪人を一方的に葬ったアイアムアヒーロー!




 と言う訳には行かなかった。




 体長2メートルを超える鎧の大男が高等学校のグラウンドに侵入、同じく侵入していた不審者と暴れて一方を恐らく殺害してその場を後にした。




 言い方。




 まぁね、事実を客観的に述べればまぁそういう事になるさ。何も間違った事は言ってないよ?でもおかしくない?流れおかしくない?マシンガンを持っていたのはあの場にいた誰もが確認してるし、恐らく警察も地面に埋まった弾丸くらい回収してる筈でしょ?




 最初にグラウンドに乱入して銃を乱射してたエクスキューショナーズとか言う奴等もやばいけど、それをボコって一方的に殺したアイツも相当やばくない?みたいな物言い。




 世間の評価では俺もエクスキューショナーズと同等かそれ以上のあぶない奴だ。




 でもまぁそれはいい。最終的に俺はエクスキューショナーズを殲滅できればいいんだから。世間の評価を気にしている場合ではないんだ。


 いや、評価なんてこの場合はむしろ邪魔!俺はチヤホヤされるためにエクスキューショナーズと戦う訳では無いんだから。でもちょっと悔しい。




「いってきまーす。」




 この数日エクスキューショナーズの襲撃は無い。怪人のストックが無いと言う訳じゃないんだろうが、多分強化してるか俺を警戒してるかどちらかだろう。


 何せ圧倒的な力を見せつけたんだ。少しはビビってくれないと困る。これでテロに対して少しは歯止めがかかったりすれば幸いなんだけどな。そう甘くは無いか。




「おーす。」




 学校は少し騒がしい。未だに先日の怪人対決が尾を引いている。何せ事件翌日には全校生徒の緊急集会があった。警察は市内全域で目を光らせる為パトロールを強化したと聞いた、生徒は気を付けて下さいと言われたが何に気を付けたらいいんだ?




 何も分かってないのが現状だから、これ位の注意喚起が関の山だろう。




「ん?」




 教室の入り口でキョロキョロと中を見回している女生徒がいる。このクラスの女子ではないけど、ネクタイの色が同じなのを見るに同学年。


 同中の生徒でも探しに来たんだろうか?




「あ。」




 俺と目が合うと声を上げた。向こうは俺を知ってる?でも俺は知らない。


 視線を外して無視するのも悪いし、手をひらひらと振ってみた。




「・・・」




 女子はプイと向こうを向いて行ってしまった。ちょっとかなC。




「まぁ、用があるならまた来るでしょう。」




 お次は体育、勉強頑張ります。






 放課後






 宿題を終わらせて家に帰る準備をする。なるべく長く街にいれば、もしエクスキューショナーズが来ても早く対応が出来る。




 もし県外とかに現れたら、その時はお手上げだ。




 19年ならリアルタイムで状況を知る事も出来る。でもこの時代じゃ無理なんだ。トウェッターもワインも無いこの時代では、家に帰ってニュースを見るくらいしか情報収集のしようがない。


 エクスキューショナーズが俺に焦点を絞ってくれればまたこの市に現れてくれるだろうが・・・




(転身してパトロールでもした方がいいんだろうか・・・)




 転身すれば空も飛べる。それも音速を超えてだ。そうすれば遠い所でエクスキューショナーズが暴れていても駆けつける事は出来る。




 暴れているって分かればだけど。




「帰ろう。あいつら何時になったら来るんだ。」




 初襲撃から数日、再襲撃の気配すらない。もしかしたら時期尚早と再び潜伏したんだろうか。それならそれでいいんだけど、もう来ませんって張り紙を何処かに貼っておくくらいしてほしい。




 筆記用具を鞄に入れて歩き出す。放課後に宿題を終わらせておくって案外良いアイデアだ。時間は潰せるし帰ってからの時間も出来る。


 父さんは帰ってくるのが遅くなったりするけど、母さんは家にいるから家事の手伝いなんかも出来るし。唯の勉強だって見てやれる。家族と有意義な時間を過ごせるのは良い事だ。




「あ、いた。」




 いるが?




 あの女子は午前「あ。」って言った女子だな。入学してまだ間もないと言うのに既にスカートの丈が短い。かなりいい度胸をしている。


 自称進学校は細かい所にうるさい。だから入学早々でこんなけしからんスカートの丈の女子はまだ少ないが・・・まぁいいか。




「昼俺と目が合った子だよね?何か用?」




 登校途中に携帯電話を拾ってあげた覚えも無いし、不良に絡まれてる所を助けた記憶も無い。




「ちょっと来てくれない?直ぐ済むから。」




 呼び出し?この学校に伝説の木は無かったはずだけど。一年生だし。

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