第3話始まりの物語3

 「お待ちください。陛下」


 おそるおそる隣を見て見ると眼鏡をかけた細身の体型で20歳半ばの女秘書が待ち伏せていたかのようにいた。


 「何だ?私は今、急いでいる。用件は出来るだけ短く頼む」


 と、早口ながらもそう言って来た陛下に対し女秘書は


 「今からどこに行かれようとしているのですか?」


 鋭い眼差しで見られて思わず怯んでしまったがそれを誤魔化すように目を泳がせながら、


 「い、今から私が設立した学校を見に、出かけるのだが」


 「なりません!まだ終わっていない書類の山と今まで延期にして来た各地の訪問に行かれるのでしょう!?そもそも天皇陛下が外出したという事が人に見られたら大騒ぎしますよ!」


 (そうだった……。今日は何かと色々用事を詰め込み過ぎていたのを忘れてた……。しかもこの秘書にはあまり逆らえないからな……。)


 そう、本来なら天皇陛下の仕事である書類の半分以上やら各地の訪問への謝罪等たくさんの面倒をかけてしまった秘書には頭が上がらないのであった。


 「変装をするから、30分だけでいいから学校に行かせてくれないか!」


 「その言い方だとどうしても学校に行きたい子どもみたいですね……」


 ボソッと小声で言ったがどうやら陛下には聞こえていなかった。


 「分かりました。その代わり私も付いていきます。」


 秘書はもうこの言い合いが時間の無駄かと思ったのかあっさり引いてくれた。

 

 「何でだ?」


 「無いとは思いますがそのまま逃げられたりしたら敵いませんからね」


 秘書は笑い話のように言ったが、目が……笑っていなかった……。

 「わ、分かった。今すぐ車を手配してくれ」


 「もしもし、私です。車の運転をお願いします。」


 (もし、その少女の能力が記憶を消す、ではなく記憶を改ざんする能力だったら……)


 そこまで考えていた時秘書から声をかけられた。


 「陛下、車の準備ができました。」


 軽く頷くと外に向かって歩いた。


 「ところで陛下、学校に行って何をするんですか?」


 車で移動中の時秘書から疑問に思ったのか、そんなことを聞いてきた。


 (どう説明するか……。仕方ないこの場合は!)


 「つ、着いてからのお楽しみということで」


 「そうですか」


 秘書は真顔でそう言った。


 (おい、真顔で言うなよ……なんか恥ずかしいだろ!)


 だが、丁度このタイミングで目的地である学校に到着した。


 目の前には4階建の校舎、その奥には大きなグラウンド、体育館がありグラウンドの左右には男子寮と女子寮がある大きな学校があった。


 天皇陛下はすぐさま車から降り、迷いの足取りで校舎の正面玄関に向かって走り靴を脱ぎスリッパに履き替える。


 そして左右に分かれてある廊下を右に曲がり一番奥の部屋の前に立つと10秒ほど深呼吸をし息を整えるとノックを2回する。すると、中から


 「どうぞ」


 と言う声が聞こえ中に入る。奥には顔に皺があり明らかに私より歳をとっているだろうおじさんと向かい合わせに椅子に座っている茶髪の女の子がいた。

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