第7話

「それで……これはなんなのよ」

「愛咲さんが」

「逃げないように」

「「縛っちゃいました!」」

「なんでそうなるのよ!」


 数分後。

 謎の美少女、愛咲桜に飛びかかった正野と遥の二人は、どこからか持ってきた縄で愛咲を縛ると、


「改めて見ると、美少女が縛られてるのってウケるな……」

「ホントだ、ウケるー!」

「ちっともウケないわよ! 笑ってないで縄を解きなさい!」

「「アヒャヒャヒャ、ウケるー!」」

「この人間はっ!」


 指を指しながらゲラゲラと笑い転げていた。

 ……本当にこの二人と友達になってよかったのか?


「なんなのこの人間たち! 別にあなた達に用は無いの!」


 捧腹絶倒している二人を他所に、彼女は俺を見ると、


「あなた、確か赤原洸斗って言ったわね。あなたに用があるのよ」

「えっ、俺か?」


 驚きながら自身を指差す俺に、愛咲はこくりと頷いた。

 そして、


「あなた、先祖が神様でしょ?」

「え……? あ、ああ。そうだ」


 他愛ない会話をするかのように、いきなり先祖が神様だったことについて話す愛咲。

 俺は驚きながら彼女を見つめる。

 

 というのも……今日この日になるまで、自分の正体──先祖の件──については一度も他人に話したことがなかったのだ。もちろん、正野や遥にも。

 

 だから、俺が話してしまうことが無い限り、言い当てるなら予想や憶測になるのだが……それで言ったとしても、突拍子が無さすぎる。

 なんで知ってるんだ?

 俺が混乱している間にも、愛咲は続ける。

 

「それと、私を見る度に変な違和感を感じなかったかしら」

「た、確かに感じたけど──ちょっと待ってくれ! 何でそんなこと知ってるんだ!?」


 俺の驚きを隠せない質問に、愛咲は冷静沈着に、そしてさも当たり前かの様に、


「私はね、半神半人のあなたを人間に戻すのか神に昇格させるのかについての判断を任せられた…………天界から遣わされた、神様よ」


 名乗りを上げた。

 すごく神々しい雰囲気を醸し出しているが……彼女が縛られてるせいで威厳もへったくれも無いことは黙っておく。

 そのまま愛咲は、驚いて固まったままの俺たちを見て意気揚々と続ける。


「驚いたかしら? あなたたち人間とは格が違──」


「確か神様って願ったら願いを叶えてくれるんだよな? 二礼二拍手一礼! はい、じゃあ美少女ちょうだい!」

「はい、私も願ったからこの杖ちょうだい!」


「…………あなたは半神半人の人間じゃないって天界に伝えておくわね」

「待ってくれ! 無かったことにしたい気持ちは充分じゅうぶん分かるが待ってくれ!」


 その場からモゾモゾと少しづつ去ろうとする愛咲を、俺は声をかけながら止めるのだった。

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