第4話

 教室へ入ると、既に自身の席でゆったりしていた生徒達の視線が一気に集まった。

 どうやら正野と遥が美形なため、釘付けになっていたらしい。

 俺はその視線に少し緊張しつつも、自分の席へと向かった。

 自分は窓際の一番後ろの席で、その一つ前が正野、その右隣が遥だった。

 無事、学校に着けたことに安堵しつつゆったりしていると、ガラガラガラ、と教室の扉が開けられた。

 誰かと思い、扉に視線を向けると、見覚えのある姿が顔をのぞかせていた。

 その姿に、周りの生徒たち全員が、思わず息を呑んだ。

 端麗な顔立ちに、目を奪われそうになる綺麗な桜色の髪。

 そしてピッグテールで括った髪型からは、可愛らしさと幼さが見え隠れしており、それが美しさに拍車を掛けている。

 そう、先程の彼女、愛咲桜だ。

 そして……まただ。

 また、先程のような電流が流れ込んでくるような感覚がやってきた。

 咄嗟に前の二人を見るが、先程言っていた様に、彼女に見とれているだけだった。

 やっぱり、俺だけなのか。

 ……でも、もしかしたら、と、周りを見る。

 しかし、どっとざわめいた生徒達は「綺麗だね!」や「可愛いー!」など、彼女の容姿について話してばかりで、神々しいという言葉は、誰一人として言ってはいなかった。

 彼女は周りの反応を正野と遥の様に、まるで気にも留めず、席を探すために教室中を見渡した。

 そして見渡した後、俺と目が合うと、ハッとした表情をしてこちらをじっと見つめてきた。

 ……うん?

 すると、テクテクとこちらへ近づいてきて、すとん、と俺の隣の席へと座った。

 あ、隣の席だったのか。

 身長は俺より少し低い。遥くらいだろうか。

 そして、彼女は席に座るや否や、


「あなたは……さっき会った人間ね」


 妙な言い回しをしながら俺の方を向いた彼女は、そのまま俺を見つめ始めた。

 ……人間?

 彼女は、下から上へと見上げるように見つめた後、少し訝しげな表情をしながら、


「あなた……本当に人間?」

「えっ?」


 よく分からないことを聞かれた。

 いや、言った言葉や意味は分かるのだが、何故そんなことを聞くのかが分からなかった。

 当たり前のことを聞かれ、俺は呆然としたまま彼女を見つめていたが、彼女はもう一度下から上へと見つめた後、「いえ、何でもないわ」と首を振って、前へと向き直した。

 ……何だか、不思議な子だなぁ。

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