第2話

「おっすコート! 今日から中学生だな! やっぱり入学シーズンといえば、美少女との出会いとか美少女との出会いとか美少女との出会いとか、そういうものを求めるもんだよな!」

 パサパサになっている赤みがかった黒髪を風になびかせながら、ニマニマしつつ俺を見下ろしているのは、仲村なかむら 正野しょうの


「もうっ! 正くんはまーた女の子のことばっかり考える! こういう時は、何か楽しいことを想像するものだと思うんだけどなぁ……ね、洸くん?」

 そして、俺と正野に背伸びをし、茶色いポニーテールの髪を揺らしながら元気いっぱいに笑顔を浮かべている彼女は、谷口たにぐち はるか

 二人とは生まれた頃から仲が良く、家も、俺を挟んで隣同士に住んでいる幼馴染だ。

「新たな出会いを求めるのも楽しいことの1つだ!」

「早く行こっ! 私もう待ちきれないよ!」

「無視!? ……そうだな、早く行こう。美少女との新たな出会いがあるかもしれないしな!」


 中学校生活一日目。

 今日の空模様は、まるで俺達を祝福してくれているかのような、雲ひとつない晴天だった。


◆◆◆


 これから入学するその中学校は、家から徒歩五分程度で着く場所にあり、遅刻しそうになってもなんとかなる距離だ。

「「「わ……!」」」

 俺達三人は、校門へ入るや否や、感嘆の声を洩らした。

 様々な部活動の道具を持っている人や、自転車通学をしている人など、小学校では見ることの出来なかった光景に、いつの間にか、目を輝かせていた。

「美少女どーこだ! ……ここにはいないな。よーし、つぎはクラス表見に行こうぜ! かわい子ちゃんと同じクラスになれるかなぁ!」

「どうだろねー。私は正くんと洸くんとクラスが一緒だったらそれで良──うわっ!?」

「うおっ、ちょっと!?」

 俺と遥が周りの様子を眺めているにも関わらず、正野は間髪入れずに俺と遥の手を繋いで勢いよく走り出した。

「もう、正くんには先が思いやられるよ」

「ほんとにな……」


◆◆◆


「俺達は……一年一組だな」

 クラス表を見た正野は、ポケットに手を入れながら口角を上げていた。

「やったっ! 今年も二人と一緒だね!」

 遥も、嬉しそうに俺達を覗き込む。

 俺も笑顔で、二人に相槌を打ったあと、改めてクラス表を見つめる。

 ……よくよく考えると、ここまで一回もクラスで別々になったことが無いのは本当に奇跡的だと思う。

 俺の名前、正野の名前、遥の名前。

 今年も見事、同じクラスになれて良かったな、と思っていると。

「良かった。あったわ、私の名前」

 隣から、とても可愛らしい、それでいて綺麗な声が聞こえてきた。

 思わず、そちらを向いてみると──

 ピッグテールの少女が、一年一組の『愛咲あいざき さくら』を指していた。



 その少女は、ピンク色の髪という何とも奇抜な風貌をしており。

 そして、妙に神々しく、美しかった。

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