レッツ破壊活動!

「アハハハハ! やっぱり一個一個壊すよりも楽しいですよ、攻める方が絶対面白いです!」


 迫り来るマンボを、壁や天井ごと斬りながら走るリゼを俺は追っていく。

 一見デタラメに振り回しているようだが、それは確実に一体ずつ斬っており、一つの漏れもなく仕留めている。

 笑いながら走るだけなら、無邪気に公園で遊ぶ子どものように思えるのだが、手にある大きな鉈が一気にその姿を物騒なものにしている。


 まぁ実際に物騒なんだけどね。


 リゼの突き進む速度は徐々に上がっている。その分マンボよりも壁や天井の方がダメージを受けて来ている様な気がしないでもないが、恐らく気のせいだ。

 コレはマンボを数台だけ残して、ここを掃除して貰ってから壊した方が良いかもしれない。

 走る廊下の突き当たりが見えると、鉈を低く構え、すくい上げる様にしてマンボを吹き飛ばす。


「ジャストミートッッッ!」


 マンボは弧を描く事なく直線に、速度が落ちないままにガラス張りの壁を突き破り、そのまま外へと落下した。


「おい、もし下に人が居たらどうするつもりだ」

「まさか有り得ませよ、こんな場所に来る人など居ませんし。それよりも次は右ですか? それとも左?」

「右だ。だがそれより少しスピード落としてくれ、だんだん追い付かなくなって……」

「右ですね、了解しました!」


 魔法で強化した体でも追い付かなくなっているのは、元々の体力が無さすぎるのも理由の一つだが、単にリゼの走りが速い事もある。

 滅茶苦茶に斬りながら進んでいる癖になんでここまでのスピードを出せるのは謎だが、もし振り切られでもしたらマンボに襲われる可能性がある。

 必死の思いで食らいつきながら何とか電源室の近くまでたどり着く。


「さぁ、どんどん行きますよ!」

「いや待て、通り過ぎてるから戻ってこい」


 目の前に電源室とすぐ分かる重い扉の前を堂々と通り過ぎ、まだ斬り進もうとしているリゼを呼び止める。が、当然聞こえていないので無理あり首根っこを掴み止める。

 少し首が締まったかも知れないが仕方ない、このままだとホントに破壊活動をしている事になってしまう。

 咳き込むリゼを片目に電源室に入る。扉は最初から開け放たれており、いつでもマンボが出入りできる様になっていた。

 赤や緑に点滅して機械が何台も立ち並び、その下には充電中のマンボが数台並んでいる。


「間違いなくここで合ってるけど数が多いな。リゼにこれ壊して、って流石に感電するか」


 しかしホントによく分からん機械が多いな。近くにある一つを見てみるも、どこが電源でどのような構造なのかさっぱり分からない。それが他に数台もある。

 


 うん、なら、まぁ、なんか、あれだ。



 ここまで散々壊したのだから、変にこの電源室の機能を停止するのに丁寧さが必要かどうかなどは、もう考える必要はないだろう。

 俺は天井を見上げ確認を済ますと、すぐさま踵を返し部屋を出る。扉は完全には閉めずに手が少し通る程度の幅を開ける。

 片手で魔導書を、もう片方はその隙間から通す。あとはもう簡単だ。


「ここ最近で一番良い笑顔ですね。思う存分にやっちゃって下さい!」


 さっきまで咳き込んで倒れていた相方からの許可も出た。悪いな不動産のオッサン、これも俺達に頼んだアンタの運が無いだけだから潔く諦めてくれ。


火炎弾ファイアショット!」


 手から放たれた豪球は中の機械にぶつかると、それを溶かしながら中の配線へと燃え移る。

 はやり一発じゃ足りない。続けたもう何発か撃っていくと、機械は程よく燃えている。

 中が煙で溢れてくると、天井に備えつけられていた火災報知器が作動し始めた。

 喧しいサイレンと共に放水は始まり、燃え広がろとしていた炎を消していく。それと共に中のマンボも水浸しになっていく。

 もうこれで充電は出来なくなった。後はさっさとこのビルを出るだけだ。


「よしこれで依頼完了だ。さっさと依頼料を貰いに…………、なんか変な音聞こえない?」

「そうですね、何でしょうか? サイレンとは違う様ですけど、何か大きな物が移動しているのでしょうか?」


 大きい物が移動だと、嫌な予感しかしない。このまま居続けると何かよく無いことが絶対に起きる。


「直ぐにでもここを出るぞ。ダッシュで階段に、」

「柳田さん、何かスゴいの来てますよ! アレ、アレ!」


 興奮した様子で何かを指差している。振り返りたくない、絶対にダメなやつがある。そうと分かっているが振り返らないと直ぐに死ぬような気がした。

 嫌々振り返ると、廊下の向こうから巨大なロボットが掃除をしていた。

 散らばった瓦礫をそのまま吸い込み、ガリガリと有り得ない音を立てながら砕いている。

 六足で動くそれは、明らかにこちらへと迫っていた。


『超清掃モード始動。ここを汚した原因を排除します』


 男でも女でもない合成音声はそう宣言すると、シュレッダーを回転させながら真っ直ぐこちらへと動いてきていた。


 その時に言葉はいらない、俺とリゼはキレイに足並みを揃えてその場から逃げだしていた。

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