現実の恋愛は俺には難しい(新)

南河原 候

プロローグ;圭一と優花が両想いになるまで

「ん……… ふぁ~」


目覚ましの音を聞いて身体を起こして。口を大きく開けてあくびをする圭一けいいち


ベットの上で起きた圭一はチラッと部屋を見渡す。最初に目に入ったのはラノベや漫画ぎっしり詰まった本棚が二つ。

床には服が無造作に置かれてたり、あちこちに紙屑やコンビニ弁当、カップラーメンのゴミ、栄養ドリンクやらのビンが散乱していてお世辞にも綺麗とは言えない部屋だ。

圭一はそれを見て見ぬ振りをする様に顔を逸らして前を向く。


「はぁ、だりぃ………」


気だるそうにベットから降りて洗面所に向かう。

ここは1Kのアパートで居室とキッチン他にはトイレや風呂も付いていて少し豪勢なアパートだ。


圭一は洗面所で少し自分の顔を見て「ひでぇ顔」と声を漏らす。圭一の顔は徹夜で熊も出来ていて浮かばない顔をしている。


蛇口を捻り水を出したら顔に二回ぐらい掛けたら近くにあったタオルで顔を拭いてさっさと居室に戻って行った。


その時に通ったキッチンの流し台には使ってから洗ってない食器が無造作に置かれてあったが圭一はそれすら無視をして居室のドアを開いた。


その後は地面に散乱してる制服を片っ端から集めて少しはたいてから着た。


「よし。サボりてぇ………」


俺だってサボりたい。徹夜続きで部屋で寝てたいが単位がないと進学出来ないとかふざけてやがる。

まぁ、高校卒業しようがしないだろうが俺にはどっちでも良いけど、最初にやる、と決めた事は最後までやり通す所存だから辞める選択肢はない。


「くっ………眩しい」


ドアを開けると眩しい太陽の光が目を襲う。直ぐ頭を斜め下に向けて太陽の光をシャットアウトさせて足を前へと歩むさせる。


鞄からラノベを一冊出してその次いでにヘッドホンも取りだして頭に装着させる。ジャックをスマホに挿す。


ラノベを読みながらヘッドホンしてアニソンとかを聴く。これが俺の登校の仕方だ。


そのまま歩いて三十分ぐらい掛かる学校へと向かう。




学校付近に来たら同じ制服を着た奴が数人に居て、紺色のブレザーに二つ黒い線が入った青色のミニスカートを着た女子も数名居る。


この学校は男子が学ランかYシャツで女子はブレザー制服かチョッキのセーター着て登校している。そこに少しだけ男女差別(制服に対する)がないかと疑ってしまうが、俺にはどうでもいい話だ。


と言うか、俺的には学ランが一番だ。ブレザーとか変に凝った服より断然着やすい学ランが良い。いや、そう考えるとセーターが一番着やすいのか? まぁ、着やすければ何でも良いのが俺の考えだ。


校門を通って下駄箱に行き、靴を履き替える。そして、自分の教室へと行く──


引き戸を開けて教室に入るとガヤガヤうるさい喋り声がヘッドホンを貫通して聞こえる。


俺の席は廊下側の一番前の席だ。俺はそこに座りHR《ホームルーム》が始まるまでラノベを呼んで過ごす。

少しスマホの音量も上げて周りの声を耳に届かせない様にもした。


先生が来ると教室のガヤガヤした話声も静まり皆が席に座って黒板の前に立つ先生を見る。

かく言う圭一は、ラノベを読むのに集中して先生が来てるのすら気づいて居なかった。

だが、先生は一度圭一を見て、またか、みたいな呆れた顔をして無視をして話を進める。


幾度無く先生も圭一に注意をした。ヘッドホンやラノベだって没収した事だってある。その度に圭一が反論してくるため、先生もクラスメイトも何も言わない。それを快く思わない者も居るが圭一に口では勝てない為に陰口を言うだけ。


「おい、眉桷まゆずみ! これ解いてみろ!」


柄は悪い女教師、鶴岡つるおかが黒板に書かれた問題を解けと言って来るが聞こえてないふりをしておこう。

一応言っておく。別に問題が解けない訳じゃないがラノベの続きを読みたいんだ。


だが、それを許してくれないのが学校なんだが……


鶴岡は俺の持っていたラノベを取ってからヘッドホンを外してきた。


「ッ………」


俺は奪われたラノベを取ろうとする、だが、鶴岡はラノベを持ってる手を後ろにやり取らせ様とはしなかった。次はヘッドホンを取ろうとするが今度は上にやられて座ってる俺は届かなかった。

流石にイラッときた俺は立ち上がりまた同じ事を鶴岡と繰り返した。


「チッ………解いたら返せよ」


結局取り返せず問題を解きに行った。

問題は楽々と解けてパシッと鶴岡からラノベとヘッドホンを取ってから席に戻った。


(たっく、何しやがる。何時も通りにさせておけば良いのに、あの不良教師が)


「たっく………はぁ、すまん。授業の続きするぞ~」


鶴岡は平然とラノベを読みだした圭一に呆れて頭を抑えながら首を横に振った。



***



昼休みは教室でラノベを読むだけだ。昼飯は別に食べなくても大丈夫だ。それよりもそれでラノベが汚れたらどうするかの方が心配だ。


「おい、お前が眉桷だよな?」


机にバンッ、と強く大きな手が置かれ俺は前を見る。

そこには体長二メートルはあるのではないかと思う大男が居た。服の上からでも分かる腕や足の筋肉は見ていて感心してしまう。


この人は三年の水野みずの源二げんじ先輩だ。柔道の地区予選から全国大会まで一本背負いだけで勝ち進んだ化け物だ。


俺はヘッドホンを外してから先輩に返事を返した。


「そうですけど、何か?」

「今日、ここに来い」


そう言って先輩は帰って行き、俺の机の上には一つの封筒が置かれていた。

俺はそれを手に取り大きな溜め息をついた。


時折、思うんだ。『三次元は理不尽の連発だ』と──


俺は三次元よりも二次元を愛する所存だ。これはこの学校に居る人なら知ってる事だ。


で、なんだこの仕打ちは………何故、化け物からこんな手紙を俺は受け取らないといけない?


暫く考えた末、そっと見なかった事にして机にしまった。


***


「はぁ、無視したら、殺されるよな」


校門辺りでもう一度あの手紙を見る。


(果たし状……………いや、何か違う?)


ああいった人ならこんな普通の四方形の手紙では無く墨で書いた手紙を渡して来そうだし。まぁ、そこにはオタクの思考(アニメや漫画の見過ぎ)があるから見てみないと分からないけど。


「………」


手紙の中身を見た圭一は黙り込み顔を真っ青にして手紙に書かれていた『楠木公園』に歩いて向かった。



***



「お前か、これ書いたの」


所々青色の装飾がされた白色のセーラー服を着た清楚感ある女の子が居た。圭一は少し引き締めた顔で女の子に声を掛けた。


「あ、はい!」


俺が声を掛けると慌ててこちらを振り向く女の子。こちらを向くと身体を縮小させてモジモジ、と顔を赤くする女の子。


中身を見たら直ぐに分かった。だ。


「断る」

「え」

「断るって言ってるんだ。じゃあな」


俺は話が終わったからさっさと帰ろうとした。だが、後ろから服を掴まれ足を止める。


「わ、私は貴方が好きです。去年からずっと好きでした」


それは知ってる。が書かれていたら誰でも分かるし、恐怖もする。

初めまして、水野 優花ゆうかです。突然こんなお手紙ごめんなさい。でも、自分の気持ちを伝えたくて書きました。

貴方が好きです──

はぁ、貴方が好き、好き、好き、好き、私が一生養いたい。好き!好き!好き!  はぁ、好き──もう大好き。あんなカッコいい人好きにならない訳ない!!

そして、この後も好きだけで埋め尽くされていた。


これを見た時は身体が震えて逃げ出しそうになった。

逃げても良かった。でも、あの大男が兄なんだぞ? 逃げたらどうなるか考えるだけで嫌になる。


そして、圭一の服を掴んでいた優花は口を開いてこう言ってきた。


。余り言いたくもありませんが、この際言います。私は貴方をずっと見てましたからある程度の事なら何でも分かります」


お前かよ! 時々感じてた視線の正体は!


去年の秋ぐらいか? その時からずっと俺は片な視線を感じていた。一回目は気のせいかと思ったがそれが日に日に続くと流石に怖くなった。


「だ、だからなんだ。俺を知ってるからって何がある?」

「うっ………それはそうですけど、あの! もう一度考えてくれませんか?」

「はぁ………嫌だ。何度言われても断る」


優花と言う子は俯いて身体ふるふる震わせてしまった。多分断られたショックで泣いてるのかもしれない。

俺は最後に「諦めろ」と言ってその場を後にした。



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