第161話【VS〝クレス〟必然的に仕組まれた対峙その1】
『やっべぇ、2時間も遅刻遅刻~っ!!
生憎、魔法何て便利な物を使用出来ないニッシャ。
彼女が唯一出来る事、それは遅れた時間を取り戻すと言うより、取り敢えず現地に行く事。
『まぁ、〝主役〟が行けばそれで一件落着!!』――――と、思っている。
そんな街の〝超問題児〟のニッシャは、〝
窓から眺められる壮大な風景が自慢な、幾多の家――――の、屋根を猫の様に飛び、時には人の頭部さえ足場にする。
たとえ人混みを薙ぎ倒してでも、自力で協会に向かっていた。
縦横無尽に駆けるその姿はまさに、何者に も屈しない〝彼女なりの自由その物だった。
たとえ200M先でも映える朱色の髪を見たら〝ニッシャ〟と思え、そして全力で逃げろ……と、街の人間ならば言葉が話せない幼子でも知っている有名な話だ。
そして――――全速力で魔法協会へと向かっていたニッシャが、道中に運悪くぶつかったのは他でもない……
オリシンの
今や煉獄の主ではなくなり、主君に仕える家来の様に、命令に従っている最中の出来事。
運命に引き寄せられるように出会った二人は、互いに感じる〝同族嫌悪〟により、街中にも関わらず
★
対峙するニッシャとクレスを中心に、
部隊長のドーマを除けば、誰の言うことも聞かないニッシャ。
そんな彼女と互角に渡り合える人物を一目見るために、肉壁の隙間から熱視線を向けている。
人々が行き交う広場で、二人の朱色髪は非常に目立つ。
片や問題児であり、それに臆することなく立つ刀を携えた男。
二人の間は静寂その物だが――――周りの人間達は違う。
非常に好き勝手な〝言動〟を叫び、有る者は見せしめに、また有る者は命を
『こんな〝喧嘩〟滅多に拝める物じゃねぇぞ!おいお前ら、どっちが勝つか賭けようぜっ!!』
『いいぞっ刀の兄ちゃん!!ニッシャをぶった斬っちまえっ!!』
『あんな
沢山の人で溢れ返る広場には生物やそうでない物問わず、様々な音が混ざり合う。
大人数により感覚が麻痺した観衆は、己が信じる正義のためなら、言葉の暴力を物ともしない。
目の前の
普段ならばたとえ1km離れていようが、自慢の〝飛び蹴り〟を問答無用で繰り出していたニッシャ。
しかし、そんな〝余裕〟も〝隙〟も一瞬たりとも、目の前の人物には与えられない。
〝
(
『私が〝何者〟かより、そう言うあんたはどうなんだよ?』
今、ニッシャに出来る事は暴力での解決ではなく、相手の素性と目的を知る事が先決だ。
ここでまともに殺り合えば確実に、どちらかが絶命し――――街を巻き込んだ大多数が命を落としかねない。
それだけは避けなければいけないし、何より未知の相手ほど恐怖を体現出来る存在はいない。
そんなニッシャの思考とは裏腹に、クレスの癖毛のような頭髪は、風を捉えるように揺れ動いている。
いつでも臨戦態勢に入れるように
『フム……我の名は〝クレス〟。ある方の命令によりここへ降り立った。如何せん〝人間〟に使われるのは初めてでな』
それを聞いたニッシャは、彼女なりに茶目っ気たっぷりで返した。
『へぇ~、物騒な初めての
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