第153話【生まれた理由と存在意義その4】
そんな二人の口喧嘩を見ているドーマに、突如としてある異変が起こった――――
部屋中を駆け回るように響く〝謎〟の爆音が、無防備な三人の耳に入る。
1番早く反応したニッシャは、辺りを見回しながら興奮気味に言った。
『何だ、何だ!?今、スッゲー音が鳴らなかったか?〝グギュルギュル~〟みたいな!!』
ニッシャのテンションの上がりように、真剣な面持ちでセリエは的確かくな判断をした。
『ニッシャ、冷静にしろ。恐らくだが、危険度levelが高い生物の咆哮だろう?』
『訓練通りに臨戦態勢へ入れ。俺のサポートは任せた』
直ぐ様〝情報分析〟と〝風の魔力を纏う〟セリエ。
対してニッシャは、獲物を狩る虎の様に床へ伏す構えをしながら吠える。
『わかってるよ!!丁度、退屈していたところだ。あと、セリエがあたしのサポートだからな!?』
相性最悪で仲が非常に悪い――――
しかし、二人はいつ如何なる場所であろうとも、単独で十分に戦える〝資質〟と〝能力〟を持っている。
危険度level-Ⅱ相手の戦闘訓練等、それこそ死ぬほどやってきた。
ニッシャは魔力を一切持たない分、〝自然治癒能力〟と〝五感〟が異常なまでに優れており、〝あわよくば精霊の力を……〟と期待はされている。
セリエは、常人の限界を遥かに越える〝魔力量〟を有しており、いつでも精霊の使役を出来るように器が出来ている。
そんな対称的な二人が『『先にぶっ殺すのは
常人離れした二人が全力疾走した事により、ドーマお気に入りの
掛け上がった天井に穴を数個と家具の破壊が多数出来た。
(同じ歳位の娘も、この子達みたいに元気なら安心なんだが……。)
多忙なドーマは家族と別で暮らしており、シレーネ1の優良物件であったが、見るも無惨に事故物件へと成り果てていく……。
真相を知る者ドーマは、嵐の様な光景を笑って見ているしかなかった。
生物の生理現象の1つであるその正体は……まるで野性味溢れる獣の声を彷彿とさせるドーマの腹の音だった。
〝言うか、言わまいか〟を悩んでいる内に壊れ行く日用品達。
〝生後間もないアイナの写真〟〝まだ反抗期ではない時の手紙〟〝礼品で献上された山積みの煙草と名酒の数々〟etc――――
『あぁっ……、
暫く見ていたが、収まる事を知らない腹の虫と子ども達。
あまりの凄惨さに思考が一瞬だけ停止した――――再び動き出した頃には、口へと運ばれた一本の煙草。
ドーマは虎の子の一本に火を着け『取り敢えず一服を……フゥッ――――さぁて、言おうかな?!』と、他人事の様に眼を見開いた。
ようやく決意を固め『悪りぃ。ニッシャとセリエ……俺、腹へったわ。飯でも食うか?』と、明るい苦笑いを浮かべながら言った。
その一言で反力を使い急停止したセリエは、後続の気配を察して右へと避ける。
目の前で華麗に避けるセリエと、〝慣性の法則〟に従って、内部が特殊鉄鋼の壁に顔から激突するニッシャ。
強化された骨格のお陰で、顔型の穴を空けながららも最悪の事態は免れた――――が、それでも痛覚があるニッシャは『痛いなぁぁあっ!!ぶっ殺してやるから出てきやがれっ!?』と叫ぶ。
感情任せに吠えたり、怒鳴るニッシャに『それも大人への第一歩だぞっ!!』と、キメ顔かつ壮大に腹を鳴らしながら語るドーマ。
〝食べる〟この言葉は常人ならば、只、腹を膨らまして食欲を満たす行為。
しかし、
研究所にて過酷な実験を繰り返されてきた二人にとっての〝食事〟とは――――それすなわち〝道具〟としての価値を高めるだけで本来なら満たされる物がない行為なのである。
『飯、食おうぜっ?』と気軽に言ったドーマだが、当の本人達は先程とは打って代わって暗い顔になった。
二人は、ため息混じりに『『
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