第151話【生まれた理由と存在意義その2】


 248番と760番はそれぞれ識別色の髪と、同色の瞳を生まれながらに持っている。


 そのため、出生の事情を知る者や二人ののせいもあって、周囲には〝運命に〟と呼ばれていた。


 この時の年齢は女の子の248番が10歳で、男の子の760番は12歳だった。


 少し歳の離れた兄妹の様だが、


 そんな248番と760番号は、師である〝元〟炎の精霊使役者ドーマの下、次期継承者として育つことになった。


 760番は〝現〟荒の使役者が現れないため、一時的だがドーマの下で基礎を学ぶ事となる。


 魔力のない248番と比べ、760番は性格を除けば一流に勝るほどの魔力を与えられていた。

 

 初の顔合わせの時は印象的で『朱髪の女の子が、奇声を上げながら突然殴りかかってきた』――――と、生前のドーマは、笑顔で成長した本人に語っていた。


 その後、少女248は『あたしより、弱い奴の所は嫌だあぁぁぁっ!!』と、腕を捕まれながら絶叫していた。


 だが、何せ相手はとされる〝酒煙の炎〟ドーマ。

 そんな男に万に1つも勝てることはなく、弄ばれる248番。


 しかし、その場は少しばかりの修羅場があり、同行した監視員3人が怒声を発した。


『おい248番!!これ以上の失礼は止めろ!!しつけ


『拉致があかんな。だから不良品248は、


『ドーマ隊長すみませんねぇ。所詮コイツらは、


 監視員の睡眠魔法の効果で、糸の切れた傀儡の様に、重力へ従い力なくぶら下がる少女。


 その言葉に対して怒りはあれど、沸き立つ怒りを必死に堪えるドーマ。


 仮にもし、感情的に暴力を振るったとする――――。

 常人ならば間違いなくとなり、この世に髪の毛一本さえ確実に残らない。


 ドーマは少女を抱き抱えると、翡翠の瞳を持つ760番が前へ出てきた。


 248番とは相反して760番は、至って冷静な対応を見せる。

 きちんと両者に向いて、お辞儀をした後に『よろしくな。おじさん』とドーマに一言告げた。


 その挨拶の1動作1動作は丁寧であったが、の様な貼り付けられた笑みを見せていた。


 一通りの引き渡し作業がとどこおりなく終わり、監視員の内の1人は出る間際に言った。


『せいぜい頑張れよ?。役立たずの248番ちゃんと760番君さ……?』


 その言葉により三人揃って『『『ワッハッハッハ!!!』』』と腹を抱えて笑い始めた。


 室内は男達の下品な笑いに包まれながら、扉が閉まる……が、外へ出たにも関わらず声が聞こえる。


 だが、1人だけ笑わなかった男がいた。

 小さな事、により――――ドーマの怒りはピークに達する。


 受け渡しから数時間が経過した頃。

 ドーマの宿舎を後にし帰路へ行く三人は、横一列となりながら先程の話で盛り上がっていた。


『しかしドーマ隊長も大変だよなぁ?あんな!!』


『あんなの来た日には、俺だったら間違いなく死ぬね!!』


『俺達のが居なくなっのは正直残念だが、あいつらが原因だから疲れも吹っ飛ぶぞっ!!』


 と話していると、突如目の前に現れた炎の塊が、男達の道中に立ち塞がった。


『何だこれ?邪魔くせぇな!!』と誰かが言った。

 だが、何度も避けようとするが阻まれ、次第に炎は人型を形成する。


 男達はイライラが募り『おい、早くこんなの消して帰ろうぜ?』と、言いながら水魔法を放つ。


 三重魔法――――〝水流砲撃ハイドロカノン


 魔法は炎に到達するも蒸発を繰り返すのみ。

 それどころか


 次第に三人の魔力は底を尽き、息切れと共に『何なんだよ……全く消えねぇぞ!!』と、地面に倒れながら言う。


 そう言いたいのも無理はない。

 通常の炎魔法なら消火など容易い……だが、今回ばかりは


 ドーマが編み出した炎の精霊魔法 ――――〝火速炎迅かそくえんじん


『消火活動ご苦労さん。1人相手に全く。さぁ、今どんな気分だ……?』と嫌みを混ぜながら質問するドーマ。


 ドーマの声に眼を丸くした三人は、何故自分達がこうなったのか、


 魔法を解きながら指で煙草に火を着けるドーマは、腰を落として見下すような視線で説教をする。


『いいか?あの子達を番号で呼ぶんじゃねぇっ!!。』と言いながら顔面へ煙を吹き付けた。


 かなり当て付けの名前だが、番号よりはいいだろう……と考えたドーマは、子ども二人のを大声で発した。


『今日からあの子達は、248ニッシャ760セリエだ。!!?』


 あまりの圧力に男三人は小さく『人間崩れの化け物め……』と捨て台詞を吐いて逃げて行った。

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