第123話【歩む時と止まる時編その14】


 連続攻撃にも似た怒涛の勢いに、ドン引きの表情を隠せないセリエに対して、更に追い討ちをかけるユリシャ。


『対峙した際に、我は狩人でありである――――とボヤいてたので、不可視な四肢をもいだ後に再起不能にして持ち帰って来ましたの!!』


 そう言いながら、ガッツポーズを目の前で可愛く決めている。


 その姿勢に愛嬌もなければ可憐ですらなく、むしろ殴られそうで怖いと思ったセリエだった。


『初めこそ苦戦しましたが、相手がこのユリシャでセリエ様への愛の力で打ち倒したんですよ!!』


 語尾に大量のハートマークが具現化しそうな程に、セリエに対するユリシャの想いは、天井を知らなかった。


 それを見ていた髭面と、マスク越しに遠い眼をするレミリシャルは、現実逃避をするように別の事を考えていた。


(恋に恋にした揺れ動く乙女の気持ちは、この天気の様に儂には先が読めんなぁ)


(ここにセリエさんが居ると言うことは、パートナーのも居るハズ……)


 各々が自由に思考する中、セリエは密かに魔法の詠唱を開始していた。


 決して見えぬ武器――――〝不可視の大鎌インビジブルサイズ

 を風魔法でセリエの本体であり、〝晦冥かいめい奈落ならく〟に向かっている〝NO.0〟に送り届ける。


 そして――――心ここに在らずの状態で聞いていたが、セリエはあることに気が付いた。


『ん?、123……所でお前等、出発した時は4じゃなかったか?』


 いくら数えても三人しか居らず、首を傾げるセリエに対して、少しだけ真面目なトーンで喋りだすユリシャ。


『その事ですが、実は――――セリエ様やノーメンさんが、〝晦冥かいめい奈落ならく〟へ向かったと聞いた途端、シレーネここへ来る途中ではぐれてしまい……』


 戦闘時には似つかわしくない、装いをする女性の話を、セリエは珍しく聞いていた――――


 訳ではなく、帰還者それぞれの魔力値ステータスを見ていた


な通常時の〝暗姫あんきユリシャ〟と、の〝壁将へきしょうテンザ〟で――――恐らく、というか、確実に言えるのは、は〝旦那の娘〟って所か……)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る