第118話【歩む時と止まる時編その9】
周囲は朝食待ちで相変わらずざわついており、掻き消されそうな声だったが、芯の通った思いを胸に友人Aは続けざまにこうも言った。
『役立つって言うのは誰かが与えるとか、貢献度の大小の問題じゃないと思う―――
―それとな。ある日、リメイシャン師匠が言っていたんだ……』
次の言葉を出す前に、気持ちが高ぶり熱くなった友人A。
余程喉が渇いたのか隣に有るコップの水を再び一気に飲み干すと、手を強く握りながら真剣な表情で口を開いた。
『〝有終の美というのは、終わりを全うし、物事を綺麗に終わらすことなんだよ〟ってな。だから……時には
過去に救われた言葉に対し、内から溢れでる思いを押さえ込むが、感極まって涙声で続けた。
『歩み続けるのが何より大事であり、この世界に生を受け、限り有る命の者の特権って事を俺は
『だから――――今を目一杯生き抜いて、笑って皆で昔話の様に語るのが今の目標かな?……』
男は知っていた。
友人Aが努力をし、少しでも自身の憧れの的である、バルクスと肩を並べられる存在になりたいと――――
男は、激しく脈打つ剛腕で友人Aの肩を叩きながら言った
『バルクスにも言われたろ?〝
男と友人Aの会話を間近で聞いていた隣の弟子Bは、暑苦しくそれでいて温かい二人の友情を目の当たりにした。
その身は己の心で泣き、鼻水を食卓へ垂れ流すほどに……。
(いい話だなぁ……)
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