第116話【歩む時と止まる時編その7】

 

 強力な魔力反応があり急遽、屋敷へと向かうアイナやバルクスの師リメイシャンは、二日酔いも感じさせぬ勢いで走っている。


 その老婆らしからぬ速度スピードで最初は走っていた。


 しかし、シバ達から見えぬ位置に来ると、高齢のため協会内の通路脇の柱にて、小柄な体型を活かし丸まる様にして休憩をしていた。


 協会内部でも一般人は入れないため人通りも少なく、幾本もの支柱が通路へと連なる中、リメイシャンは眠るように呟いた。


『ハァハァ……年甲斐もなく久方振りに張り切ったけど、やはり歳には勝てないもんじゃゃな。――――もし、求めていた者なら、成熟するまで大事に扱わないとね』


 すると老婆の頭の中で機械音にも似た、無機質な声が語りかけた。


『最近独り言が多いぞリメイシャン。お主の判断で、に支障を与えることは出来んからな?』


 その声に一瞬だけ眉をひそめると、バツが悪そうな顔をしながら口を開いた。


『はいはい、分かってるよ。6つの精霊が再び重なり合い混じり合うその時までってね――――さぁてと我が家に戻りますかね……』


 老婆リメイシャンは重い腰を上げると気だるそうに再び歩を進めた。


【屋敷内-調理場】


 小さな体は抗えない事実に〝絶望〟と無力さにより〝落胆〟していた。


 そう――――世界共通認識であり、奇跡と呼べる魔法の様な現象が起こるまでは……。


 少女は事実を〝諦め〟〝投げ捨て〟〝逃避〟しようとしたその時だった――――


 まるで思いが通じたかの様に、一瞬にしてミフィレンの手から青紫色の光が放たれた。


 辺りへと柔らかい温かさが漏れていき、手の平を中心に部屋全体が華々しい色彩で満たされる。


 初めて見る神秘的な光景は、そう長くは持たなかったが、時間の経過と共に光が徐々に弱くなる。


 小さな体で必死に状況を把握しようにも、突然の出来事で何が起こったのか自身でも分かっていない。


 藁にもすがる思いで包んでいた両手をゆっくりと開ける。


 そこには、先程までの事がまるで、気持ちよくぐっすりと眠っている猿と鳥の2匹の姿がそこには居た。


 ホッと胸を撫で下ろす様な、安堵と共に出た第一声は、〝不思議な光〟に触れる事や〝何事もなく動いた〟事でもなく、温かい一言だった。


『猿さん、鳥さんお帰りな……さい――――』


 と、言い終わる頃には視界が徐々に真っ暗になり意識が遠退いていた。





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