第115話【歩む時と止まる時編その6】

 時は刻一刻と過ぎて行き、辺りには暫くの静寂が彼等を包み込んでいた。


 初めに重苦しい空気の中、沈黙を破った人物がいた。


 ここ魔法協会に勤めて20年間、生まれ持って恵まれた体格を活かし、あらゆる武術を会得かつ多方面に渡る知識を得た。


 重役の専属護衛として働いている〝ペコリーノ〟だった。


『シバ協会長、私が言うのもおこがましいのですが、ここ最近の異常事態と何か?』


 シバは切れ長で眠っている様な眼をさらに細め、天井を見上げると高笑いをしながら冷静に、そして淡々と話し出した。


『フォッフォッフォッ――――その可能性は視野に入れておるよ……あ奴、ニッシャが戻る数日前より、各地で高魔力反応を持つ危険種が複数現れ、その被害により命を落とした者の数は知れん』


 上司であるシバに対し、言葉を選びながらも必死に食い下がる護衛〝ペコリーノ〟は、物事を冷静に整理する様に述べた。


『ですが、ノーメン、セリエ隊長や並びに他の部隊そして今回は、急遽連れ戻したが居たお陰で、被害は最小限に抑えられましたが、もし……次何かあれば、今の戦力では到底太刀打ちできないかと――――』


 シバはしわだらけの口元を緩ますと軽い調子で、上層部にのみ周知され、他の者には秘密にしてきた重大な案件を話してしまった。


『それに関しては心配は要らんよ?協会屈指の実力を持つがおる。襲撃後に急遽だが、遠方へ伝書を飛ばしておいた。奴らは長期に渡り、じゃったが、もう直来るじゃろう……』


 発言したシバだけが微動だにしなかったが、それを聞いた護衛含む三人は開いた口が塞がらず、眼を見開いた状態で驚きつつも、こう聞き返した。


『と言いますと……まさか五年前、ニッシャが師と仰いだ〝酒煙しゅえんほのお〟事、ドーマ隊長が以前指揮していた――――ですか!?』


 怒鳴り声の様なペコリーノの質問に対し、歳のせいか耳が急に遠くなったシバ。


 リメイシャンによる嘔吐物おとしもので転倒しそうになりながらも、腰をいたわりつつ自室へと歩いていった。


(まぁ、何れにしても今回のニッシャ蘇生任務といい、先日の協会襲撃といい、セリエとノーメンの報告にある〝時の使役者〟と言うのも何か気になる――――何故今頃か分からぬが、





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