第102話【決意の修行編その3】


 指の隙間を縫うように朱色の瞳へと降り注いだ光。


 彼女の〝決意〟と〝覚悟〟を周囲に反映し、暗く湿った森全体を柔らかく照らす。


 同時に、焼け落ちたニッシャの四肢が徐々にを始める。


『腕と足が元通りになってきた事だし、暫くは――――禁煙だな。でもその前に一本だけ吸うか……』


 ニッシャはまだ定着していない手を使い、煙草を出すために胸元を触ると、指先に当たる僅かな感覚で、ある事に気が付いた。


 嗜好品しこうひんである煙草の感触では無い何か別の――――


 そう、ミフィレンと手を繋いだ時の様な優しい感触が、手を伝い心を穏やかにしてくれるこの感じは……。


『これは……〝一輪花のネックレス〟か――――あの子が私を勇気づけるために取ってきてくれた物だったな。』


 自分は他人と一生、関わらないと思って生きてきたニッシャはミフィレンと言う〝かけがえのない〟唯一無二の存在のお陰で救われた。


 こうしてまた〝外の世界〟へ旅立ち、またニッシャ自身の歩みを進めてくれた、そんなに、ニッシャは思いを述べた。


『今度こそあんたを一人にはしねぇからな。必ず生き返るから、一緒に旨い飯食って沢山笑い合おうな!!その間、は預けたぜ――――ミフィレン!!』


 ニッシャの眼前に揺れるネックレスは、陽の光に照らされた事により、極彩色に輝く〝花〟に向けそう叫ぶと、想いを込める様に握りしめ静かに胸元へと仕舞い込んだ。


 そんな決意を聞いた、声の主は大木にもたれつつもこれから起こる、険しい道のりについて危惧していた。


(どうやら覚悟は決まったようだな……今から始まる修行は恐らく、だと思うだろうがな。必ず乗り切れよ――――〝朱天の炎〟さんよぉ)




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