コズモスピクシス~ゲームをしてたら異世界に転生してた件~/コズモスピクシス2nd~ティタノマキア~

珍獣みゃー

一章~ダソス(森)~

どうなっとるんじゃ………?

「はぁ~………これは難しいぞい。」


この儂、山辺富雄(やまべとみお)は思わず頭を抱えた。

今儂は孫に教えられてネットで見た儂よりも年上の方がボケ防止と趣味を兼ねてやり込んだと言われているゲームとやらに年甲斐も無く挑んでいた。


「えっと………あの柱の影に骨の奴が立っとるんじゃったな。」


ゲームを慎重に進めながら、ふと思う。

元々遊び自体は好きで、近所の友人と軍人さんごっこをして幼少期を過ごし、大人になった時、喫茶店に色んなゲームが置かれた時は仕事をサボって入り浸っていた事もある。

そんな儂が見合いとはいえ家庭を持てた事は奇跡としか思えない。

そして子供は育ち孫ができた後、妻に先立たれはしたものの孫が、やはり血筋かゲーマーになりよく儂の家に遊びに来ては一緒に遊んでくれる………息子達が教育熱心だからだろうが。


まぁ、つくづく幸せな事よ。


そんなある日、孫がどうせ暇なんだったらと自分が止めた(投げた)ゲームを貸してくれたのだが、暇潰しにやってみると………これがまた難しい。


歩いていると足を滑らせ落下死(操作ミス)。


ジャンプしたら目測を誤り落下死。


警戒している反対側から斬られて崖に落とされ落下死。


奥の方にある宝箱を取ろうとして竜の炎の息で焼死。


それを避けようと回避したら回避しすぎて谷底へ落下死。



・・・落下死ばっかりじゃな。



とまぁ、難しいが注意していれば何とかなるので少しずつ進めて行っとる訳だ。

そして新しいステージを迎え、注意力を最大限に上げ、ゆっくりと進めて行く。


「此処は足場が狭いのう………」


細い足場で左右には奈落が広がり、底はまったく持って見えない。


つまり避けれない。


注意力と警戒心を最大限にし、ゆっくり確かめながら進めて行く。

だが、人間いざとなるとミスをするもの。


「!しもた!」


押さなくて良い回避ボタンを緊張しすぎて押してしまい、儂のキャラがゴロンと転がる。

幸い転がった先は奈落ではなかったが突如ドカンッと横の壁から爆発が起こる。


「ぐっ!」


緊張しすぎていたのだろう、大きな音に儂の心臓が跳ね上がり動きを止めた。


「あ…………が……………」


ゴドンとコントローラーを落とし、床に崩れる様に倒れる。

苦しさに耐えながら何とかしようと藻掻くも元々心臓病等は持っていなかった為、薬などは手元には無く、画面の向こうで奈落に落ちる自キャラと共に儂の意識も闇へと落ちていった。


――――――――――――――――――――


ふと気が付くとワシは見知らぬ森に立っていた。

周囲を見回して見ると樹海の様に薄暗く、陽の光も殆ど無い。


「ここは何処なん………なっ!誰だ!………て、あ。ワシの声か。」


……言って分かった自分の声。

何じゃ、このイケボは。


「どうなっとるんじゃ………?」


明らかに違う自身の声。

そして………


「………手が………張りがある?胸板もあるし………足もしっかりしとる……………」


もしや若返っとるのか?

頭は混乱しとるがそれでも自分の体を確認して冷静さを取り戻したのか、ふと、近くに水の流れる音が聴こえてくる。


「この音………川か。」


音のする方に森を抜けると川原が姿を表す。

陽の光をキラキラと水が反射する様はとても美しく、覗き込むと小さな魚、メダカの様な魚や深い方には鮎みたいな魚が泳いでいるのが見えた。

つまりその川の水が綺麗な証拠なのだが、一番驚いたのは流れがあるから見にくいが、そこに映った自分の顔。

まさかと思い手作業で地面に直径30cm程の穴を掘り石を敷き詰め川の水をそこに移す。

波が治まるのを待ちそこに映った自分の顔は少し幼さを感じる16~18歳ぐらいと言った所かの。


「………やはり。この顔は若い頃のワシじゃな……………ほんに、何が起こったと言うんじゃ………?」


疑問は尽きぬが、立ち尽くしていてもしょうがないのでその水で顔を洗い、ついでに軽く口に含む。


「………ふぃ~。結構旨いのう。山の湧水でもない限り日本では飲めんからな。良い水じゃ。」


どうやら大丈夫らしいのでそのまま飲み喉を潤すとワシは再び森に入り、適当な長さの枝を探す。


「あまり落ちとらんのう……まぁ、何とでもなるわい。」


思いだすわい。

戦時中、疎開先でこうして枝や枯れ葉を集めて秘密基地を作ったのを………と言ってもその時、儂は5歳ぐらいじゃったが。


「こんなもんかの。さて、次は火起こしじゃ。」


枝と枯葉で簡易の雨避けを作ると板状の木片と比較的固そうな太めの真っ直ぐな枝を用意する。


「繊維状の物が………無いの。枯葉を砕くとするかの。」


砕いた葉を木片に乗せ、枝をひたすら擦り合わせる。



火は着きはしたが小一時間かかった。



「………そろそろ確認作業といくかの。」


火起こしの後に手掴みで捕まえた魚(これも時間がかかった上に火も消えかけた)を枝に刺して焼きつつ、恐らく有るのでは?と思っていた言葉を呟く。


「………ステータスオープン……おぉ!やはり有ったか!」


Lv1トミオ・ヤマベ 年齢:18

職業:未定 種族:アポストロス

HP 11/11

MP 11/11

SP 6/11

筋 5

体 5

知 5

精 5

器 5

敏 5

運 5

スキル:未修得

加護:女神ディニティコスの加護


正しく「てんぷれ」と言う奴じゃな。

ワシがこの「ステータス」の事が分かったのは単に孫が持ってきた「らのべ」とか言う本のお陰じゃ。

その中でも「異世界転生」とか「異世界転移」とかが増えてきて流行っとるのは知っとるし、孫に薦められて観たアニメも結構好きじゃ。

じゃから自分の置かれた状況を落ち着いて考えてみるとこの状況は「異世界転生」で本の内容を思いだし「もしかしたら」あるのでは?と考えてみたからじゃ。


さてさて、ステータス自体は平均じゃの。

と言うか種族:アポストロスとは何じゃ?人間じゃないのかの?

HPとMPはどう算出しとるのかの………多分じゃが筋と体にLvを足した感じかの。MPは知と精かの?微妙にSPが減っとるのは何じゃろうか?ん?少しずつ回復しとるの。


あ、魚焼けた。


あっつ、はふ、はふっ………旨いが塩が欲しいのう……お?SPが一気に回復したの。

これはつまりスタミナじゃな。魚を食って休んだから回復したみたいじゃな。

スキルは多分職業を選べば増えると思うから先ずは職業じゃな。

ワシが押せるか?と思って職業を指で押そうと思ったら、職業の欄が開く。


「思うだけで良いとは便利じゃな……もう一匹焼いとく?」


恐らく明確に意識すればそこを選択出来るのだろうの。

種族:アポストロスを明確に意識してみる。



アポストロス

使徒。女神ディニティコスの恩恵を潜在的に宿す。他者を女神に代わりテラペウテース(信徒)へと変異させる事が出来る。



女神ディニティコス………加護が有るのはともかく、この女神さんが死んだワシをこの世界に転生させてくれたのかのう?

うーん、分からん。

それに使徒って役職名みたいなもんじゃとワシは思うんじゃがこれはどうなんじゃ?

しかも他者を変異って………つまり元の種族云々関わらず信徒と言う種族にしてしまうのか。

そしてワシは使徒アポストロスと言う種族なんじゃな。


よく分からんが。


種族は後でじっくり調べるとして、さっきから開きっぱなしの職業を確認するかの?

えーと、今なれる職業は………


剣士

騎士

戦士

斥候

盗賊

魔法使い

侍者

ブラックスミス

アルケミスト

放浪者


割りと数が有るようじゃな。

にしてもこれは迷うのう………

生き残る事を優先にすれば良いのか、戦う事を優先にすれば良いのか………


「後で変更とか………出来るのかいの?」


上級職は有りそうなんじゃがな。

焼けた2本目を食べながらあらゆるを考えていき1つの結論を導きだした。

そしてその職を選択すると頭の中で抑揚の無い女性の声が響いた。


〔職業:放浪者を選択しました〕


〔補正によるステータス修正を行います〕


〔職業スキルを獲得しました〕


えらくシステム的じゃな。

いや、システムボイスなのか?

ますますゲーム的じゃな。


さて、職業も選んだ事だし、ステータスを確認してみるかの!


Lv1トミオ・ヤマベ 年齢:18

職業:放浪者 種族:アポストロス

HP 15/15

MP 13/13

SP 14/14

筋 7 5+2

体 7 5+2

知 6 5+1

精 6 5+1

器 8 5+3

敏 8 5+3

運 7 5+2

スキル:サバイバル1

    直感力1

    未修得

加護:女神ディニティコスの加護


職業:放浪者

ステータス修正:筋+2体+2知+1精+1器+3

        敏+3運+2

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