サラ
少女の名前はサラと言った。彼女はベッドに身体を預けて、窓の外を眺めていた。窓は少し汗をかいていて、少し泣いているようだった。この時期はとても寒く、窓の外は雪化粧を纏っていた。時折窓から見える大きなモミの木が揺れて積もった雪が落っこちた。木からは鳥が飛び立っていく様子が見えた。
鳥は空を飛べるから問題がなかったが、地面を歩く動物たちにとってはこの時期は少し厄介かもしれないと彼女は思った。冬のこの時期、この辺りは雪深くなるのだ。人もあまり来ない山間に在るこの場所は、雪かきも行われていないので動物たちにとってはとっても歩きにくいだろうなと彼女は想像を巡らせた。それでも彼らはとてもたくましいのできっと問題なく生きていけるだろう。
彼女はそんな彼らのことを少し羨ましいと思った。彼女は生まれてから今まで、満足に外で遊べたことはなかった。それは彼女が病を患っているからだった。両親が何度か医者を連れてきたことがあったけれど、医者の言うことはいつも同じだった。自分には治すことは出来ず、彼女は徐々に弱っていき死んでいくだろうということだった。その度に彼女は黒い烏のようなマスクをかぶった医者が死の使いのように見えて恐ろしくなったのだった。
彼女の身体はとても痩せ細っていた。長く身体を起こしておけるだけの筋肉と力も最近ではなくなってきてしまっていた。
そんな彼女の楽しみは両親が町で買ってきてくれる本を読むことだった。その本の中には魔法使いが出てくるものがあった。魔法使いは悪魔の使いで、最後には神様に遣わされた聖人様に倒されてしまうという物語だったけれど、彼女はその魔法使いが、魔法で不思議なことを次々に起こす様にとても憧れたのだった。もし、この魔法使いはいい人だったのなら、きっと困っている人を一杯助けてくれたのかもしれないのにと彼女は思った。その中には私もいて、わたしの病気だって不思議な力で直してくれるの。そう想像すると少しだけ世界が明るくなったように彼女は思うのだった。
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