イシュマエル

 青年の名前はイシュマエルと言った。彼はある日夢を見た。それは旅の途中、雨をしのぐために立ち寄った洞窟で仮眠をとっていた時のことだった。

 彼は魔法使いで、世界の神秘を操るすべをよく知っていた。そして彼は自分の夢がとても重要なことであるということを理解していた。その夢は彼に、弟子を取るように伝えていた。魔法使いは滅多なことでは弟子を取らなかった。それは世界の大勢の人は世界の神秘を理解できないからだった。夢の中には一人の人物が現れていた。その人物は、男性なのか女性なのか、老人なのか若いのかも分からなかった。けれど空から降りそそる無数の矢と激しく燃え盛る炎がどこかの町並みを飲みつくそうとしているその中で、祈るように佇むその人物こそが、自分が弟子にするべき人物なのだと彼は悟ったのだった。

 魔法使いは滅多に弟子を取らなかったが、いずれは必ず取らなければならなかった。それは魔法使いの使命だった。魔法使いが世界の神秘やその知識を弟子に伝え、その弟子がまた後世に伝えていかなければ、世界の神秘やその知識を知るものがいなくなってしまうからだった。それはとても悲しいことだった。だから彼は、彼の師匠やそのまた師匠と同じように、自分も弟子を取ることに決めたのだった。

彼が目を覚ますと、雨は既に止んでいて、太陽の周りには光のリングが掛かっていた。いい前兆だった。

 その日を境に、彼の旅の目的は世界の美しさと広さを知るということから弟子を探す旅へと変わったのだった。

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