第14話(ウォーゲーム・6)

アールは自分のプロフィールを確認する。ギルドメンバーの数が合わない。最初に20人いて、コーシが自決で死んで、ひなあられと八木が殺られた。17人になるはずが、18人になってる。


アールはバイオレットに聞く。


「俺がプレー中に誰かをギルドに加えた? それとも、スマートモンキーを頭数に入れてるの?」

「それはね。ハワードにギルドメンバーを1人除いて全員殺された可哀想なプレーヤーがいたの。だから、キノズに編入させたの」

「そうか。ハワードはやっぱ、やベー奴だな。ところで、キノズって、俺達のギルド名か?」

「そうよ、キノコさんがリーダーだから。アール君はリーダーに向いてないからね」

「凹む~」

「アール君は斬り込み隊長が似合ってるわ」

「凸る~」

「意味がが解らないわ」

「凹む~」


「アールさん! キノズに編入させていただきました〝杉山〟といいます。宜しくお願いします!」


この男が生き残りの1人だ。ハワードを恨んでいる。


「宜しくね」

「はい!」


アールはなんとなく、白い壁に手を当てる。冷たい。


「アールさん、僕を鍛えてください。敵討ちしたいんです」

「また今度な」


アールはそういうのが嫌で、壁の方へ移動した。しかし、杉山は食い下がる。


「僕もプレーヤーキルで100人斬りを達成するんです。アールさんがやらないなら、僕にレールガンを下さいよ」


この一言でアールは一気に杉山が嫌いになった。


「1000万円、課金しろ」

「嫌ですよ。タダで手に入れたい」

「はぁ!? 自力で何とかしろ」

「お前は、チートだろ! 冷てえ連中だな!」

「大声を出すな。スーパーガンユニコーンでもやってろ」

「ああ! やりますよ! 1人でやりますよ! 冷てえ連中だな」


杉山はスーパーガンユニコーンのプレー再開をした。誰か追いかけてくれることを願って。しかし、キノズの皆は無視する。


アールはスマートモンキーを待つ間、地べたに座り込む。


「おお! アール様が居たぞー!」


7番フィールドでも、アール争奪戦が始まる。


「うちのギルドに入ってください!」

「いやいや、うちに。美女を取り揃えております」


アールは嫌気が差すと同時に、ちやほやされる事に既視感を覚える。


「なんだ、この感覚は…………」


「あんたが、アールか。妹が世話になってる。キノズとうちのギルドを統合しないか?」

「他を当たってくれ」


すると、バイオレットが来た。


「兄ちゃん、無事なのね? 良かった~」

「バイオレットも無事で何よりだ」

「ちょっと待て。二人は兄弟?」


アールは少し驚く。


「アール君、こちら私の兄の〝カーマイン〟だよ」

「宜しくね。アールは案内AIを持ってるそうだな」

「宜しく。俺の案内AIなんて、日本猿だよ。しかも、使えない奴」

「俺の案内AIだ。来い! スマートタイガー」


虎だ。リアルな虎が、のっそのっそと歩いてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る