第7話(案内AI)

アールは頭を抱える。思い出せない、過去の出来事を。


「俺は、何者だ?」

「記憶喪失?…………かもね。ゆっくり思い出そ」

「バグの影響?」

「そうかも。思い出せる範囲で最古の記憶は?」

「ルクソール・オンラインにログインする前の記憶がない」

「過去のゲームの戦績があるじゃない。やっぱりバグね」

「とんだクソゲーだぜ、全く」


ピコン。


『10レベル到達のご褒美、SNS案内AIの〝スマートモンキー〟をプレゼント』


アールの前に日本猿をアニメチックにデフォルメしたキャラクターが現れた。


「アールの旦那、宜しくでさあ」


アールは少し考えて、ギルドメンバーの方に向く。


「皆。ルクソール・オンラインの差し金が来たよ」


ギルドメンバーはスマートモンキーを取り囲む。


「用意は良いか、皆」

「おおぅ!」


ギルドメンバーは阿吽の呼吸だ。


「木の棒がちょうどいいかな」


パコン! バキッ! ドス! ガコン! ギルドメンバーはスマートモンキーを木の棒でタコ殴りにする。


「やめるでさあ、やめるでさあ」

「どうやったら、ログアウト出来るんだよ!」


ギルドメンバーは手を緩めず、スマートモンキーはボコボコにする。


「やめるでさあ、やめるでさあ。ドーグは卑怯でさあ」

「何が、SNS案内AIだよ!」

「ウキー! やめろ! 底辺プレーヤーども!」


ギルドメンバーは一通り殴り、一時の気は済んだ。アールはスマートモンキーに質問をする。


「で、お前は何だ?」

「その名の通り、このルクソール・オンラインを案内する、アーティフィシャル・インテリジェンスでさあ」

「ゲームでダイになったら、リアルの肉体も死ぬのか?」

「インフォメーションはマジでさあ。ダイになったプレーヤーが再度ログインしてないでさあからね」

「つまらないから、ログインしないだけだろ?」

「信じないなら、それでもいいでさあ。生きてリアルに帰りたければ、着いて来るでさあね。あっ!1つ言い忘れていたでさあ。〝対戦形式のゲームで100人キルすればリアルに戻れる〟でさあ。プレーヤーキルでもフレンドリーファイアでも」

「キルされたプレーヤーはどうなる?」

「死、でさあ」

「こんな人質のようにVRゲーム内に閉じ込める目的は何だ?」

「それは、追々話すでさあ」

「皆、木の棒を出せ」

「待つでさあ! 待つでさあ!」


また、スマートモンキーを殴ろうとした時、ギルドメンバーの視界にページが開かれた。誰かのプロフィールだ。


「ギルドの皆さん。このライガーというプレーヤーはルクソール・オンラインの運営の一人でさあ。ソイツに接触すれば、生きてログアウトする方法が解るかもしれねえでさあ」

「ライガー…………どこかで…………」

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