第6話(記憶)

激戦のスーパーサッカーは呆気なく終わった。プレーヤー皆で感想戦をする。MVPはアールだ。


「20人で何とか勝ち得たな。ありがとう、アールさん」

「キノコさんもナイスな采配だった。疑ってわりぃ」

「気にしないでいいよ。それよりさ、このチームでギルドを組まない?」

「良いねえ。俺は賛成。ゲームをクリアしてもログアウト出来なかったら、プレーヤーの協力が必須になってくるだろう」


スーパーサッカーで出会ったプレーヤー、20人は皆、同じ意見だ。全員はギルド登録する。


「じゃ、フィールドに戻って、ログアウト出来るか試してみようぜ」


アール達はフィールドに帰る。そして、目を10秒間閉じる。ーーーー誰もログアウトは出来なかった。


「ダメかー。アールさんは?」

「えっ? 俺? 俺もログアウト出来ないよ。他のゲームもクリアしてみよう」

「ハットトリックを決めてるから、イケると思ったが。ゲームは慎重に選ぼう」


ピコン。


『インフォメーションです。スーパーサッカーをクリアしたプレーヤーの皆様のレベルが3になりました。1得点を決めたバイオレット様はレベル5になりました。ハットトリックを達成したアール様はレベル10になりました』


「取り敢えず、他のプレーヤーの状況を見てみよう」


キノコがリーダーシップをとる。皆はなんとなく、それを認めていた。


「僕、ずっと考えてたんだけどさ」


ボランチをやっていたギルドメンバーに何やら策があるようだ。


「良い提案があれば聞こう」

「根本的な事だ。ダイになれば、ログアウト出来るんじゃねって」

「リスキーだな」

「シューティングゲームでちょっと死んでくる」


アールをはじめ、ギルドメンバーは誰もとめない。皆、どこかで活路を見出だしたい。実験してくれるなら、なお有難い。


提案したギルドメンバーの〝コーシ〟はウォーシューティングのゲーム、〝スーパーガンユニコーン〟にエントリーした。


アール達は、様子を見る。それが正解か解らないが。アールはファースト・パーソン・ビューで観戦する。廃墟の空港ターミナルが舞台だ。


「皆~、見てるか~? 今からダイになってみるから。よく見とけよ?」


ハンドガンを持つ、コーシの手が震える。ゲームとはいえ、痛い思いはするからだ。それでも、意を決して、頭の横に銃口を付ける。


「うわー! 行くぞ!」


バーン! コーシの頭が吹き飛ぶ。それと同時に、〝ジ・エンド〟と文字が出た。死体となったコーシはフリーズして動かない。


「おい。やっぱり、とめるべきじゃなかったか?」

「今更、何を言ってんだ。ビビり」


ギルドメンバー同士が揉める。屈強なアバターの男とリザーブに下げられた男。堪らず、キノコが制止する。


「皆、コーシさんが戻って来るまで待機していよう。揉め事を起こさず」


アールは今後に備え、ガシャをする。初回11連だ。OKをタップしていると、ガシャが始まった。ピラミッドのエフェクトがカットインする。『この暖かさは…………』ピコン、ピコン、ピコン。アールの視界にアイテムの絵柄が表示されていく。


木の棒が7個。懐中電灯、海兵隊の迷彩服、エネルギー回復チャージ、レベル横取りリボルバー式ハンドガンが1個ずつ出た。アールは装備して要らない物(木の棒)をソートする。


バイオレットが、アールの隣に来た。


「ガシャを回したのね。何が出た?」

「所詮、クソゲーだ。2万円も遣って、木の棒が7本」

「それでもいいじゃない。11連ガシャだよね? 他の4つは良いのでしょ。私なんて、木の棒が50本。懐中電灯が出るだけでも奇跡よ?」

「取り敢えず、めぼしいのは、この迷彩服とレベル横取りリボルバー式ハンドガンってヤツ」

「凄い引きね。…………ところでクソゲーって何処から聞いたの? ルクソール・オンラインは最高のVRSNSゲームだって評判だったのよ。閉じ込められたのはバグだろうけど」

「あっ、あれ? どこで聞いたんだろ? 分からない」

「アール君、年齢はいくつ?」

「ね、年齢? えーっと…………。分からない。俺はいったい…………」

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